そしてこの勝利こそ、2年越しの目標のひとつを叶えた瞬間だった。近藤真彦監督は「ちょうどはエンジニアともいま話をしていたんですが、1年前に勝っていてもおかしくなかったんですよね。そういうチャンスはいくつもあった。ドライバーふたりも速いですしね」という。そして出てきたのは、喜びよりも安堵の声だった。
「本当に嬉しいんだけど、ちょっと遅かったね(笑)。いつ勝ってもおかしくない体制でしたし、嬉しいというよりもホッとしたという方が大きいです。販社の皆さんや日産自動車大学校の皆さんがバックアップしてくれましたから」
ちょうど今回のレースからは、新型コロナウイルスの影響で制限されていたチームスタッフの人数も緩和され、ディーラーメカニックや学生もチームに携わりはじめた。またゲストも多く訪れていたが、ピットレベルとピット棟2階のホスピタリティスペースは、PCR検査を受けた人とそうでない人で隔離されており、思うように会いにはいけない。
「リモートで挨拶するくらいしかできなかったんですが、皆さんの前で勝てたのは恩返しになりましたし、今季初めてお客さんが入ったレースで勝てて本当に嬉しいです。上で指をくわえてみているディーラーメカや生徒は、うらやましくて仕方ないんじゃないですか? 今回参加したメンバーがいい仕事をしましたから(笑)」
2012年から続いてきたチャレンジも、これでGT3マシンを使うレースの頂点にたどり着いた。「GT-Rとニッサンが元気になるだろうし、そういう意味では良かったと思います」と近藤監督は笑顔をみせた。そして、ピット棟の日産自動車大学校のゲストたちと藤波、オリベイラたちが笑顔で勝利を祝う光景は、このプロジェクトの大きな成果のひとつと言えるだろう。
