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 全体を底上げするのは、車体側だけでなく空力面でも同じことが言える。自社に風洞設備を持つムーンクラフトだけに、その点はさらに力の入る領域だ。

「全体で上げていかなきゃいけないので『前が』とか『後ろが』じゃないんですよ。我々の感覚からするとCPと呼ばれる“センター・オブ・プレッシャー”の位置をどこに持ってくるか。後ろに寄せるか、前に寄せるか、なんです。基本的には空力で言えばトータルを増やして、CPの位置をどのへんにするかを探っていくわけです」

「フロントは確かにどんどんコーナリングのパフォーマンス、ゲインを上げていくんだけど、結局そのままだとリヤがついてこないので、リヤもどんどんジオメトリーならジオメトリーで前とバランスさせてあげる。俗に言うこうしたセットアップ、っていう作業が、ここまであまり多く時間が取れなかったので、今年はそれができているよ、と」

 この2020年型でもスワンネック型のリヤウイングステー採用や、エンジン吸気用サイドスクープに追加するフラップ、フロントインナーフェンダー底部の整流フィンなど細部の、しかし効果的なアップデートが続けられている。

 それらは2019年までも当然続けてきた開発作業の上に継続しているものではあるが、すべてのピースが揃うことで「単純にロジカルに物事が進められるようになってきた」と手応えを口にする。

「規定共通の(GTA)エンジンで、リストリクターも小さいからそのパフォーマンスでは絶対に勝てない。鈴鹿でも(最高速が)10km/hは遅いし、そんななかでなんとか穴埋めしようと思うとエアロダイナミクスだったり、ジオメトリーの新しい組み合わせやタイヤに合わせた最適化、ドライバーインフォメーションでの新しいセットアップで勝負している」と渡邊氏。

 かつてタイトル争いを繰り広げた紫電の時代と、そのアプローチは「何ら変わることはないですね」と水を向けると、冗談めかしながらも意外な言葉で締めくくってくれた。

「そうですね、でも僕も紫電というクルマはちょっとズルいと思ってました(笑)」

「当時でも圧倒的に有利なボディシェイプなんで、ただあの頃と比べるとラップタイムって5秒以上速いわけですよね。鈴鹿で2分2秒なんて、今ならレースペースより遅い」

「あんな幸せな、平和な時代の中でああいうボディを使って、意図的にルーズなエアロダイナミクス特性のクルマを作ったんですよね。だからすごい乗りやすいし、ピーキーな部分が一切ない」

「そういうところからすると、今の方がはるかにコンペティションのレベルが高いし、余裕レベルはまだ当時の方があった。今はバッファがないんで、それを埋めるべく全力で開発作業を続けています」

 その内容と詳細は、ビジュアルとともに『SUPER GT file Ver.8』の誌面で確認していただきたいが、この一言をしても、現在のGT300クラスが置かれた状況が如実に伝わってくるようだ。

構想から数年で実現となったリヤウイングのスワンネック型ステー。CFDや風洞の相関で性能向上の検証が重ねられた
CFDでは圧力分布や流速などを検証。その数値や風洞の結果、そして実走での効果をいかに関連づけるかが重要に

データ提供/画像協力:ムーンクラフト株式会社(www.mooncraft.jp

SUPER GT file Ver.8
10月9日金曜発売
定価:1222円(本体価格1111円)

『SUPER GT file Ver.8』の詳細と購入はこちらまで
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