対してブリヂストン(BS)タイヤ勢は、お家芸ともなっている無交換・2輪交換作戦によるピット時間短縮も視野に入れながら、戦ってくるものと思われる。

 もてぎでは予選から苦戦し、決勝ではSC前のピットインにもかかわらずラップダウンとなり上位進出を逃したLEON PYRAMID AMGの黒澤治樹監督は「自力優勝するしかない。今度は追う立場になったので、勝つべく戦いますよ」と語る。

「寒いコンディションはうちにとってあまりいい方向ではない」と黒澤監督は天候を気にするが、「持っているもののなかでベストを尽くさなきゃいけないし、BSさんもいいタイヤを用意してくれるはず。それでみんな一丸となって戦うしかないですね」と表情を引き締める。

 もてぎでも「コース上で抜けない」という特性が露わになったLEON PYRAMID AMG陣営としては、予選からの上位進出、またはピット戦略を絡めての上位浮上が、タイトルへの条件と言えそうだ。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟)

 ノーウエイトの開幕戦で勝利を挙げて以来、表彰台から遠ざかっている埼玉トヨペットGB GR Supra GTの近藤收功エンジニアは、その開幕戦をこう分析している。

「開幕戦はLEONさんがタイヤ交換をミスしていなければ、抜かれていました。また、ARTAさんがQ1でタイヤチョイスをミスっていなければ、彼らが優勝していたはずです。決勝のラップタイムをシミュレーションすると、ダントツで速いんですよ」

 ポテンシャルを比較しやすい同じBS陣営のライバル勢について、近藤エンジニアは警戒感を強める。

「最終戦は56号車(リアライズ 日産自動車大学校 GT-R)も速いはずですし……涼しいと吸気温が下がるからターボエンジンが速いというのもあるかもしれません。なかなか厳しいですが、少ない可能性を最後まで追いかけて頑張ります」

 同じノーウエイトとという条件ながら開幕戦の再来……とは簡単には行かなさそうな雰囲気だが、GT500と同じくGRスープラGTの『デビューイヤー・タイトル』を諦めてはいない。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)

■「夏だったらいいけど……」とリアライズ 日産自動車大学校 GT-R

 ランキングトップに立つリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rは、寒い時期の富士にそれほど好印象はないようだ。

「夏だったらいいんですけどね」と語るのは米林慎一エンジニア。10月の第5戦富士では優勝しているが、時期が異なることへの不安が大きい模様だ。

「第5戦のときは、テスト(6月末)のときと同じコンディションだったので、だいたいこのくらいのペースで走れる、というのは分かっていました」。最終戦に向け自信はありますか、と問うと米林エンジニアは「ないです」と首を振る。

 レースの実績があまりない寒い時期の富士におけるタイヤ選びについて、「これだというものはなく、手探りの状態」だという。

 第7戦もてぎでは4輪交換で勝利を飾ったが、「うちはドライバーがふたりとも速いので、飛ばして、気持ちよく走ってもらわないとうるさいので……(笑)」と、ランキング上位に残った唯一のヨコハマ勢は、富士でも無交換などに出てくる可能性は低そうだ。マシン重量が重いことも要因にあるだろう。

 各陣営のレースプランとしては、SCリスクを避けミニマムに近い周回数でのピットインを目指す戦いが繰り広げられることが予想されるが、燃費や後半に履くタイヤのライフからの制約を考慮する必要もあり、ドライバーミニマムが過ぎたら即ピットインかというと、そううまくはいかないはずだ。このあたりは決勝でのひとつの注目ポイントとなるだろう。

 加えて、今季はシンティアム・アップル・ロータス、ADVICS muta MC86、マッハ5G GTNET MC86 マッハ車検など、マザーシャシー(MC)/JAF-GT勢も富士では速さを見せており、タイトル圏外のマシンが大量ポイントをさらっていくことも充分に考えられる。

 それを考慮すると、とくにランキング2位以下の“追う立場”のチームにとっては、優勝が至上命題であるとも言えるだろう。

2020年スーパーGT第7戦もてぎ ARTA NSX GT3(大湯都史樹/松下信治)
2020年スーパーGT第7戦もてぎ ARTA NSX GT3(大湯都史樹/松下信治)

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