更新日: 2020.11.29 19:53
最終周チェッカー手前で衝撃の大逆転。RAYBRIGがKeePerとの死闘を制してチャンピオンに輝く【第8戦富士GT500決勝】
ともにタイヤに苦しむMOTUL AUTECH GT-R、ZENT GR Supraは、ともに16周目にさらにポジションを失い、KEIHINバゲットが4番手、13番手スタートだったWAKO’S 4CR GR Supraの大嶋和也がコントロールラインからの3ワイドバトルを制し、一気に7番手浮上に成功する。
その後もレースペースの衰えないRAYBRIG牧野は、2番手のauフェネストラズにロックオン。20周目のセクター3ではGT300クラスの車両も巧みに利用しながら、最終コーナーでイン側のラインを選択して前へ出る。しかしそこから富士名物1.5kmのホームストレートはGR Supraのテリトリーで、コントロールラインで悠々と並ばれここでのポジション入れ替えはならず。
しかし、21周目のダンロップで鋭くインを狙った牧野が正真正銘バトルを制し2番手を手にする。その牧野は直後の22周終了時点で1番乗りでピットへ。ミニマムの戦略を選んで後半の長いスティントをエース山本尚貴に託し、逆転タイトルへと望みを賭ける。
しかしこの同一周回でピットへと飛び込んだ集団の中で、勝負に打って出たのが14号車WAKO’S。タイヤ無交換作戦を採り、34.9秒の作業時間だったRAYBRIGを上回り、NSX-GTの前でコースへと復帰。コールドタイヤのRAYBRIG山本を引き離すばかりか、翌周に40.3秒で作業を終え、平川にスイッチしたKeePerをもコース上で抜き去り、なんと首位浮上を果たす。
しかし、自身2度目の戴冠を目指すKeePer平川もここを落ち着いて処理すると、タイヤへの熱入れを完了した27周目のヘアピン立ち上がりで逆襲し、再び定位置の先頭へと返り咲く。
ここから2番手WAKO’Sの坪井翔が無交換のタイヤでどこまで粘れるかが焦点……と思われたそのとき、30周目の最終セクターで三つ巴のバトルが勃発。3番手RAYBRIGがWAKO’Sに迫ると、2台の背後にいたau TOM’S関口雄飛も加わり、山本、坪井、関口のオーダーでホームストレートへと立ち上がる。
しかし後方GR Supraのストレート上での伸びは明らかで、RAYBRIG山本は2台に先行される形で1コーナーへ向かうと、ここで前の2台がブレーキング勝負の果てに交錯。
山本は労せずして2番手を手に入れ、WAKO’S坪井は接触でダメージを負って32周目に再びピットへと向かい、コース復帰を果たすも36周目にはスロー走行で3度(みたび)ピットへと戻り、ここでタイトルレースへの権利も失ってしまう。
首位を行くKeePer平川は2番手RAYBRIGに約15秒ものギャップを稼ぎ出し逃げを打ち、それを追いかけたい山本だったが、その背後からヒタヒタとau TOM’S関口が忍び寄り、40周を前に2台はテール・トゥ・ノーズの状態へ。TOM’Sのワン・ツー体制に持ち込む機会を伺う。
その同じ頃、立川からマシンを引き継いでいたZENT石浦宏明がペースを上げ、39周目にカルソニック、40周目にARTAをかわして5番手までカムバックする。しかし50周を過ぎ路面温度が10℃まで低下すると、その石浦のタイヤにも立川と同じようにピックアップ、またはドロップが訪れたか、再びARTA、そしてCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rにもパスされ、低気温状況での持ち込みタイヤ選択がいかに難しいかを感じさせる状況に。
残り10周を切ると首位のKeePer平川にも異変が起こり、タイヤか残り燃料の懸念か、はたまたトラブルからかわずかにペースダウン。1分32秒台のGR Supraに対し、2番手山本がラップごとに秒単位で差を詰め、残り5周の60周時点で3秒1まで迫り、10秒以上あったセーフティマージンが消し飛ぶ事態となる。
残り3周でギャップは2秒079。パッシングを繰り返しながらバックマーカーを処理し続けたRAYBRIG山本だったが、平川も意地で反応しファイナルラップ突入時にはわずかにマージンを取り戻す。この時点で勝負あり、シーズン途中で離脱したニック・キャシディの思いも背負って、2度目の戴冠……と思われた最後のコーナー。
ホームストレートへと入った37号車KeePer TOM’S GR Supraは、なんとそこから加速することができず。攻めに攻めていた燃料搭載量が、この重要な局面で運命の悪戯を引き起こし、勝負の結果のガス欠でストレート脇にマシンをストップ。マシンを降りた平川は右拳でガードレールを叩き、その場に崩れるようにしゃがみ込んで悔しさをみせた。
加速できなかったKeePer TOM’S GR Supraの横をすり抜けていった100号車RAYBRIG NSX-GT、山本尚貴がトップでフィニッシュラインをくぐり、2020年初優勝を飾ると同時に劇的な形で自身2度目のチャンピオンを獲得。そのRAYBRIGもウイニングランを走り切ることができず、こちらの燃料もギリギリを攻めた、まさにGT500クラスのコンペティションレベルの熾烈さを象徴する幕切れとなった。