MaxRacing 2021スーパーGT第1戦岡山 レースレポート
MaxRacing
レース結果報告書
2021 SUPER GT Rd.1 岡山国際サーキット
日時 2021年4月10~11日
■車両名 たかのこの湯 GR supra GT
■場所 岡山国際サーキット
■ゼッケン 244
■監督 田中哲也
■ドライバー 三宅淳詞/堤優威
■チーム Max Racing
■リザルト予選5位/決勝5位
テーマは『雑草魂』。スーパーGT挑戦2年目のMaxRacingは進化します
2020年シーズンにスーパーGTにデビューしたMaxRacingは、2021年シーズンに向けて新たなチャレンジに取り組みます。マシンをGT300規定のGRスープラにスイッチ。ドライバーは昨年から継続の三宅敦詞に加えて、堤優威を迎えました。
スーパー耐久やフェラーリチャレンジで自らもステアリングを握るチームオーナーGo Max、GT500でのドライバー経験も豊富な田中哲也監督の元、車両メンテンナンスをつちやエンジニアリングが担当することは昨年同様です。堤起用の理由について哲也監督以下のように説明します。
「ボクもスーパー耐久にドライバーとして参加しているので、いろんなクラスの結果をチェックしているんです。堤のことを気になりだしたきっかけは、彼が近藤翼と組んで出ていて、けっこう速いコがいるなと感じたことです。86/BRZレースにもボクは出ているので、去年はコース上で彼の走りをみました。昨年35号車にスポットで乗った時も、こちらがタレてきたときに追いつかれるのではないかという場面もありました。86/BRZプロクラスにデビュー2戦目で勝って、その界隈では注目されていますが、それ以外では無名に近くて、今どきハコでステップアップしてきた珍しい存在です」
「ボク自身、ハタチでジムカーナを始めて22歳からレースに出て、お金もないのにガッツで泥臭く這い上がってフォーミュラ・ニッポンやGT500にも乗りました。エリートでなくても上にいけるそんな夢を応援したいと思っているんです」
「三宅にしても、メーカーの育成枠から外れてしまいましたが実力はある。先日もスーパーフォーミュラ・ライツで雨のなか優勝しました。これもルーニースポーツの植田正幸さんとGoMaxさん、もうひとりの支援者の方のサポートがあって実現したことです。今年のドライバーライナップは強力だと思っています。堤に刺激されて三宅も意欲的になっているし、ふたりが切磋琢磨しながら成長して、上にいけるような雰囲気を持つドライバーになって欲しいです」
「堤についてあと知らない面があるとしたら、本当に激しい戦いのなかでしぶとい戦い方ができるかどうか。J-P(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)はいいお手本です。タイヤが終わっているとかピンチの時でもなんとか耐えて順位を守って帰ってきてくれる。チームにとっては非常に心強い存在です。ああいう力強さを出せるドライバーにもなって欲しいです」
「今どきのイケメンでスマートなふたりですけど、コイツら走ったらヒトが変わるなと恐れられる存在になるくらいガッツを出していい。監督としては鍛え甲斐があります。今年のカラーリングの『みきゃん』(愛媛県の愛顔(えがお)PR特命副知事キャラクターで車両右側に描かれる)と『ダークみきゃん』(みきゃんのジャマをするキャラクターで車両左側に描かれる)みたいな二面性があっていいんじゃないですか(笑)」
新車のGRスープラの完成が遅れて3月27~28日に実施された富士公式テストでも暫定仕様のような状態で走り出しました。しかしながらセッション2において堤優威がGT300トップタイムをマーク。マシンのポテンシャルの高さをここで確認できました。
開幕戦岡山に向けては、岡山公式テストに参加できていないこともあり、同じつちやエンジニアリングがメンテナンスする25号車のチョイスを参考に持ち込みタイヤを決定して臨みました。
公式練習では、シフトのトラブルが少し出て走行時間を使ってしまい、想定していたメニューをすべてこなすことはできませんでした。しかしロングを想定した燃料を積んだ状態での走行のタイムはライバルに遜色なく、ここでもマシンのポテンシャルを確認することができました。ベストタイムは1’26.954で12番手。現実的な予選での目標は、グループ分けの予選Q1で勝ち残りQ2に進出することでした。
Q1を担当するのは堤です。Aグループで出走。1周ずつ確実にラップタイムを詰めて5周目にグループトップタイムとなる1’25″866をマークしました。ちなみにQ1での比較ではAグループ、Bグループ通じてこのタイムがトップでした。
Q1はぎりぎり通過できるかできないかのボーダーを想像していたチームにとって勇気づけられる結果となった反面、想像以上の好タイムにプレッシャーが掛かったのがQ2担当の三宅です。哲也監督はその三宅の緊張を解きほぐししつつも「思い切りいけ」と檄を飛ばします。Q2の三宅も堤のインフォメーションから計測5周目をターゲットにアタック。1’25″727のタイムでGT300クラス5番手のグリッドを確保しました。
堤は「Aグループに速いクルマが多かったのでトップ8になんとか入りたいと思っていました。岡山には自信がない状態で入ったので、チームにとっても自信が持てるタイムが出てよかったです」と語り、三宅は「(昨年のレクサス)RC-Fに比べるとフォーミュラっぽく極限を攻めることができるのですが、フォーミュラと違って重くてぎくしゃくする部分があります。そこがボクには難しく、もっとうまく乗れたらタイムが出たのではないかと思います。でも次元の高いスーパーフォーミュラ・ライツに乗せていただき、スピードに目が慣れていますし、富士のテストからいろいろ考える時間があって今日に臨めたことは非常に有意義でした」と語り、それぞれに手応えを得ているようでした。
昨シーズンは予選で速さをアピールしながらも、それを結果につなげることができませんでした。それだけに好位置からのスタートを活かしてポイント獲得さらには表彰台を目指したいところです。課題は岡山公式テストに不参加だったために、ロングランでのタイヤパフォーマンスの変化を確認できていないことです。
スタートを担当するのは三宅。トップを追いたいところですがレースで未知のタイヤもケアしながらの難しい状況で、4番手までのトップ集団に少しずつ引き離される展開です。セーフティカー導入があった場合にピットが混乱するので、それを回避するためにも非対称に前半スティントを短くする戦略をチームは用意していたところ、それがピタリと当たりました。ピットイン予定の1周前である29周目、ピットアウトしたGT300車両が1コーナーのイン側でストップ。車両回収が必要となりセーフティカー出動が予想される展開です。予定通りのタイミングで30周目にピットイン。状況をみてからの判断ではピットインできなかったかもしれません。
さらに早いタイミングでピットインした車両にひとつポジションを奪われたものの実質的な6番手をキープして交代した堤がリスタートを迎えます。三宅からの左側の両輪ともタイヤが後半厳しくなるとのインフォメーション得て、できるだけタイヤをいたわりつつ安定したペースを刻みます。
レースが動いたのは47周目。サイドbyサイドのバトルを展開するGT500の集団にヘアピンで巻き込まれました。「あれは危なかったです。なんとか避けたものの、GT500がサイドbyサイドのままヘアピンから続く左コーナーへ飛び込んでいったので、後ろに注意しながらブレーキをかけられるように身構えていました。そうしたら案の定、前でぶつかりました」と堤。不運にも巻き込まれたGT300前走車はダメージを負い戦列を離れました。レース後半もバトルを継続していたトップ4からは大きく後れる展開となってしまったものの、5位をキープしてゴール。チーム初となるポイントをもたらしました。
田中哲也監督
「クルマが代わって、本心で言えば開幕から優勝を狙いにいきたかったところですけど、現実的にはシェイクダウンが3月末の富士公式テスト。岡山ラウンドをぶっつけ本番で迎えてタイヤのチョイスやセットなどを含めて優勝を目指すにはちょっと準備不足でした」
「例えば、本当の満タンで走ったのも決勝の前のウォームアップが初めて。そんな状況であったことを考えると、みんなが一生懸命に開幕戦に間に合わせてやってくれたことには感謝しかありません。決勝ペースはトップ争いに加わるようなものにならなかったですけど、与えられた環境のなかで、みんな完璧な仕事をしてあの結果だったと思っています」
「三宅にしても堤にしてもロングをやっていないので、どれぐらい攻めていったらいいのか、ふたりともレースを台無しにするのはイヤだと思っているのがみえました。探り探りのなかでなおかつ一生懸命プッシュしてくれて、よくやってくれたと思います。それがチームとしての初ポイントにつながりました。ここで、走り切っていろんなデータを持ち帰ることができましたし、課題もみつけることができて、次からさらに上を狙っていけると思います」
「富士に向けて、細かいところではドライビングポジションの修正をしなければいけないとわかりました。単純にペダルの位置を合わせるとか、そんな話です。ここまではセッティングの方向性をみるのに精一杯で時間がなく、それだけロングもできていなかったので決勝で初めて判明しました。メカニック側からもこうしたらよかった部分はみつかったようです。次の富士に向けて時間はないですが仕上げていって、監督も含めてやれることをしっかりやって、もう一歩先を目指します」
「なおかつ、つちやエンジニアリング創業者、土屋春雄さんが亡くなって迎える最初のレースでもあり、レース屋として、すべてをかけて結果を追求する魂を受け継ぎ、恥ずかしくない戦いをしていきたいです」
三宅敦詞
「ボクたちは岡山のテストができておらず、持ち込みタイヤも正直わからないような状態だったので不安だったのですが、予選も決勝も5位でチームとして初のポイントですし、上出来だと思う反面、トップ4が速くてじりじりと離される展開だったので、トップ争いをするには全体にペースを上げるために、もっといろいろ詰めていかないといけないと感じました」
「次の富士はテストできていますし、今回より多少ラクになると見込める部分もありますが、セットアップだけでなく自分のドライビングでも課題に取り組んでいきたいです。決勝では、セカンドスティントが長くなることはわかっていたので、タイヤの情報をしっかり伝えるために落ち着いて走ることを心がけました。今できることは最大限できたと思います」
堤優威
「去年のことを考えるとポイントを獲れてうれしい反面、ボクらはこのクルマのパフォーマンスを知っているので、トップから離されてしまったのは正直悔しいです。決勝中は危ない場面もあって、タイヤ的に厳しく、いざというときに避けられないような状態でもありましたが無事完走して、結果を残せたことはチームにとっていいことでした」
「レース残り15周くらいからけっこうきつかったですけど、三宅選手のコメントのおかげで前半をセーブできたのでこれで助けられました。ここから優勝やチャンピオンを目指してスタートすると哲也監督も言っていたので、まだまだこれで満足せずに次戦以降も結果出せるようにがんばりたいと思います」