その車体構成から「前後で言うと、どうしてもフロントの剛性感が弱い」特性を受け、前は選択可能な範囲で最も硬い側から2種類程度のスプリングを選択。スタビライザーもほぼハード方向で固まり全体のロール剛性を確保しつつ、ライドハイトをミニマムとしてレイク角をつけ、富士以外のコースではBMWモータースポーツの推奨値でいう“ハイダウンフォース仕様”での運用となる。
その一方で、リヤは「ホモロゲーションしたときの狙いと、実際にレースで使い出したら狙ってたところのレンジと(設定していたスプリングの番手が)ズレていたのでしょうね」とのことで、タイヤドロップの大きさをカバーするべく選択可能範囲のうちで最も柔らかいレートのバネを使用する。ただし、これで万全の強さを発揮……とはならないのが悩みの種だ。
「このクルマの特徴というか。前後で同じタイヤサイズ、330/710の4輪履きなので、これがクセモノなのですよ……」と、そのお悩みポイントを解説する高根エンジニア。
「キャパがあるから良いと思われますが、逆に太くなると使い切れないというか、応答性が悪い。なので曲がりにくい傾向になるのです。さらに寒い時期はやっぱり暖まりが遅くて、大きい分だけちゃんとダウンフォースがあって、接地荷重が作れてサイズ分の入力がないと。その辺はGT3だとやっぱり限界はあるし、それで4輪履きだとあまり効率が良くないですね」
同じく4輪同サイズを履くGT-Rに対しては「多分、ホイールベースが100mm近く違うので、その辺もあるのかな、という気はしてます」という高根エンジニアだが、従来は曲がらない分だけ旋回性を求めていくと、リヤのスタビリティやトラクションが失われてしまう。逆にトラクション方向へ持っていくと、コーナーミッドでのアンダーが増えて「待たなきゃ曲がれない」。
そのシーソーゲームだったセットアップが、第4戦ツインリンクもてぎで投入されたヨコハマタイヤの新スペックで改善。シフターの熱害が出るまで、前半スティントでは荒聖治が毎ラップのようにポジションを上げるオーバーテイクショーを演じた。
「フロントタイヤは課題も課題で、2016年からずっと課題でした。でも、それがこの間はタイヤが進歩してくれたお陰でどっちも両立できた。実際は太かろう、良かろう、じゃないのです(笑)。もてぎなどではどうしてもトラクション寄りにせざるを得ないところで、ミッドのアンダーが増えてしまうという点が解消されなかったのが、フロントタイヤ自体がちょっと進歩してくれたお陰で、それがトータルで上手く回るようになってくれました」
続く第3戦の鈴鹿でも、荒が予選Q1B組で3番手を記録しQ2に進出。決勝前にはミスも出たが、一時はレースでも3番手に進出する“苦手克服ぶり”を披露した。続く第5戦SUGO、第6戦オートポリスは「現行のBoPでは初走行」となるだけに、長らく戦い続けてきたM6 GT3ラストイヤーの“大団円”としたいところだ。




