更新日: 2021.12.16 14:10
【GT300マシンフォーカス】10年の蓄積で果たした大願。2代目BRZ“チャンピオンカーへの進化”
こうした車体側の積み重ねを下地に「変更要素としてはもう、なにをおいても一番に大きい」という分野が、ベース車の変更によるボディワークの変化。つまりカウルの刷新によるエアロダイナミクスの伸びしろだった。
「ベースのクルマにエアロ形状を載せて行ったのはSTIさんの方で。基本的な解析をSTIさんのチームで進められて、それを見て我々からも『ここをもうちょっとこうしませんか、ああしませんか』というやり取りをしました。当然ダウンフォースを出せるように。かつ、ドラッグにあまりならないように、という。考えることはみなさん同じだと思いますけど、やはりフロントのダウンフォースは欲しがるので、フロント周りは細かいところまで注意して解析もやってもらいました」と澤田エンジニア。
そのSTI解析チームからは「スポーツプロトタイプを参考にした」フェンダー前端の切り立った峰のような処理により、確実にドラッグ低減とダウンフォース向上が「数値で示され」た上、フロントバンパーコーナーで2種類を用意しながら、2020年型では実戦投入までに紆余曲折を経た“カナード版”と“ボックス版”のエアロも「早い段階からそれありきで考えてたので、充分に入れ込む時間があった」という。
「ハンドリングへの影響は……ありますけどね。ありますけど、ダウンフォース量を取るのか、ドラッグを取るのか、その選択肢という。ただ『こっちの仕様だとデメリットがあって使えないんだよな』というのはなくなりました」
2020年仕様からグリップ向上を狙い、フロントのサスペンションジオメトリーを見直してキャンバーやキャスター角の許容範囲を広げ、より高い接地性を確保する変更を施していたが、2021年シーズンはそのレベルをより高い段階へと引き上げた上で、空力とのマッチングが図られた。
同じく、2020年シーズン序盤に「4種類ほど組み合わせを試した」というフロア面のストレーキも「前のモデルで一番良かった形状」でフィックス。積極的に負圧を発生させ、車体姿勢が変化した際にも安定感を高める狙いの“切り欠きリヤフェンダー”や“カナード付きリヤディフューザー”などは「JAF-GT300ではシーズン中の開発もできなくなったので、そこはもう登録で」1年を通じて使用。これにより前モデルより飛躍的なダウンフォース量アップを実現したのに加え、新造車ならではの恩恵も得た。
「根本的に細かいチリも含めて精度良く作らなきゃ、ということで製法も含めて変えています。クルマの建て付けなども良く見られる方は『仕上がり良くなったね、建て付け良いね』って言ってくれます。従来は補修の繰り返しで重量増に繋がった部分も一新できたので、その構成も見直して結果的に『軽く作ろう』が実現できた。なのでボディカウル関係は良いものができたと思っています」
こうして走り出した新生BRZは、シーズン序盤こそ剛性アップとダウンフォース増量により硬めのクルマに変化したことで、リヤタイヤのライフに課題を抱えた。しかし「古い引き出しを……タンスを開けてみたら『いいモノ、転がってたよ』ということがある」と、かつてのセットアップ論法の再確認に取り組んだことで、中盤以降は重さにも負けず、レースペースの衰えを抑え込むクルマ作りが進んでいった。
「おかげで、ブレーキ周りは2020年シーズンから不変ですが、もうマックスですよ。これもまた今思えば性能の9割くらいしか使えてなかったのが、今年は100%で使ってます。レース後の劣化がもう……。だから今は圧倒的にブレーキは使っていますし、ドライバーが詰められるようになってますね」
こうしてSTIによるEJ20の開発状況と同様に、ほぼ極限の領域まで到達したように見える車体側の開発だが、澤田エンジニアの目には“チャンピオンカー”となった現状の仕様にもまだ改善点が映り「来年に向けては、ちょこちょこできることやりましょう、という話をしています」と、その手を緩める気配はない。
「ざっくりと言っても、ただ単純に運動性能を上げる。派手に『まだありますよ』って言いたいですけど『見ててください、来年はここガーンと大きく変わりますよ』というのはないです(笑)。それでも時間がある時にしか手をつけられない部分というのはあるので、そういう細かいところで『コンマ1を10』集めて『1秒にしましょう』と」
「なかなか100点は取れないし、終わらない。永遠にテーマは尽きないし、年々補強して重くなって『次は軽量化をやらないといけない』とかね。速いクルマを作るには立ち止まっていられないな……と思いながら、それが楽しくて楽しくてしかたがないのですよ。僕らはそれがやりたいのでね」
![フロントフェンダー後端上部のえぐり](https://cdn-image.as-web.jp/2021/12/16132822/asimg_OGAR0444_1061bac06645d60-660x440.jpg)
![切り欠きリヤフェンダーも前モデルからの飛躍的なダウンフォース量アップ実現を支える](https://cdn-image.as-web.jp/2021/12/16132824/asimg_OGAR0511_2561bac0684cc94-660x440.jpg)
![積極的に負圧を発生させ、車体姿勢が変化した際にも安定感を高める狙いのカナード付きリヤディフューザー](https://cdn-image.as-web.jp/2021/12/15181824/asimg_OGAR0481_7861b9b2e025710-660x440.jpg)
![SUBARU BRZ R&D SPORTのフロントマスク](https://cdn-image.as-web.jp/2021/12/16132821/asimg_OGAR0532_6661bac0648e539-660x440.jpg)
![フロント足回り。前後ともにダブルウィッシュボーン式サスペンション。](https://cdn-image.as-web.jp/2021/12/15181811/asimg_OGAR0325_6d61b9b2d32a991-660x440.jpg)
![リヤ足回り。ブレーキは前後ともにAP RACING製。フロント6ポット、リヤ4ポット。](https://cdn-image.as-web.jp/2021/12/15181813/asimg_OGAR0341_a061b9b2d543864-660x440.jpg)
![タイヤサイズは前後ともに330/710 R18。ホイールベースは2696mmとなる。](https://cdn-image.as-web.jp/2021/12/15181810/asimg_OGAH3917_061b9b2d16c89f-660x440.jpg)