逆転戴冠も“失意と猛省”のGRスープラ開発陣。火山灰の影響は三社三様?【2021スーパーGT総集編】
振り返ってみれば、20年も反省だった。最終戦の最終コーナーを立ち上がったところでガス欠症状により失速し、これが原因で手中に収めかけていたタイトルを失った。そのため、燃費について反省し、改善に取り組んだ。
「昨年のもてぎは燃費で苦しみました。自分たちの分析ではホンダさんに対して5%負けていた。その分析から、今年は追い付こうとドラビリを悪くすることなく5%以上改善しました。(TRDの)みんなが頑張ってくれたおかげで、同等まで持っていくことができました。一方で馬力の見方をすると、昨年もそれほど性能差はないと思っていましたが、今年も横並びだったと思っています」
20年は佐々木氏に言わせれば「他愛もない部品」に足を引っ張られる格好で冷却水系統に不安を抱えていたため、性能アップを行なうにしても「ビクビク不安を抱えながら」臨んでいた。その点は解消され、自信を持って性能向上に取り組んだ。「もともと持っていた性能を発揮できるようになったにすぎない」と、佐々木氏はあくまで謙虚だ。
開発領域は各社共通している。燃焼のスピードを上げて燃料が持つエネルギーの変換効率を高め、燃焼圧を高めていくことだ。極論すると開発領域はその部分だけということになり、20年との対比でいえば「何の不安もなく性能を出し切ることができる」状態だ。
「熱効率の点で限界……とは言いませんが、いいところまで来てしまっている。じゃあ『フリクションを減らしますか』となっても、それで何パーセント減らせるの? と。そこに多額の開発資金を費やすのは違うでしょう。限られたリソースをどう効率良く使うかを考えていかなければいけません」
費用対効果を考えた場合、投じたリソースに対するゲインが最も大きい開発領域は、燃焼ということになる。その判断は各社で共通しており、TRDだけが例外ではない。
20年とは異なり、不安を抱えずに2基目で順当に性能を上げることができていた。巻き返しを図るべく臨んだSUGOでの出来事は、チームの出鼻をくじいてしまうことになった。エンジンが壊れた原因は性能向上のために手を入れたことが原因ではないのだが、周囲に「手を加えたからでは?」との疑念を生むことにつながった。
開幕戦の決勝では1位から4位を独占したものの、第2戦以降は鳴りを潜める格好となっていたので、なおさら2基目に対する期待は大きかった。その2基目が、理由はどうあれ1時間で3基も壊れてしまったのである。重く受け止め、猛省する理由はそこにある。22年に向けて明るい材料を探すとすれば、SUGOで経験したトラブルに関しては、第6戦ではすでに対策が済んでいることだ。
そのオートポリスに関して。ニスモは(開催直前に噴火した阿蘇山の)火山灰の影響で燃焼に影響が出たと話した。ホンダは「フィルターでトラップしきれないものがパイピングの中にあったので、調べたら火山灰系だった」(佐伯昌浩氏)と証言した。燃焼への悪影響はなかったという。TRDはといえば「火山灰があったという認識がありません。それよりSUGOの土のほうが手強いです」という反応だった。三者三様だ。
※この記事は『2021-2022スーパーGT公式ガイドブック総集編(auto sport臨時増刊)』(2021年12月24日発売)内の企画からの一部抜粋・転載です。
![『2021-2022スーパーGT公式ガイドブック総集編』では、ホンダ、ニッサンの開発エンジニアによるシーズンレビューも掲載](https://cdn-image.as-web.jp/2021/12/24095343/asimg_tech_6c61c51a1710315-660x440.jpg)
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