Kazushi Nakano / autosport web

 以上のように、接触の判定に主に関わるのは副競技長/DSOと、競技長/RDということになるが、RDとしての服部氏としてもうひとつ、大きな役割を担うのがレースの非競技化、すなわちフルコースイエロー(FCY)/セーフティカー(SC)/赤旗導入の決定だ。

 2クラスが混走するスーパーGTではSCが導入された際、クラス内での位置関係の公平性を保つためにホームストレート上での整列作業が必須となっている。このため、ひとたびSC導入となると最低15分はレースに『間』が入ることになり、安全性とエンターテインメントの両立という面で、シリーズは長年課題を抱えている状態だった。

 2021年からは、全車が一律80km/hで走行することを義務付けるFCYが本格導入されたことで、この課題は一部で解決に向かった。

「FCYかSCか、という基準は、安全性の面と、どれだけレースを止めることになりそうかという時間の面で、決めています」と服部氏。

「時間の面で言えば、5分以内ですべて処理ができるのであれば、FCYでいいと考えています。5分以内というのは、クルマが牽引できる状態。バリアの開口部に近いところにちゃんと止めてくれて、ギヤもスタックしていなくて、すぐにコースから出せるならFCY。サスペンションが曲がっているとなると、吊り上げが必要になってくるので、SCにする方向です」

 FCYの導入により、服部氏としては「選択肢がひとつ増えて、だいぶ楽になった。ただ、なんでもかんでもFCY、と乱用するつもりはありません」と言う。

 現在、FCYの導入に際しては、ボード提示と同時に追い越しが禁止となりカウントダウンが開始、ボード提示から約10秒後までに80km/hに落とすことが求められている。

 昨年、このカウントダウンとその前後の時間において、前車との間隔を詰めたり、追い越さないまでも横に並んだりといった“グレーゾーン”を突く行為が、一部で問題視されることがあった。

「基本的に、カウントダウンが『ゼロ』になった瞬間に80km/hになっていなければいけません。GPSの車速と、そのクルマが何秒でどれくらい落としたかというのがリアルタイムで、数字で分かるようになっているので、FCY導入時はDSOがそれを全部チェックして、まずはDSOが判定します。今年も、どう見てもアウトなものはどんどんペナルティになります」

 今季に関しては、FCYの運用規則がより細かく定められた。これらによって、“グレー”な状況が減ることを願いたい。
(第3回へつづく)

スーパーGTでレースディレクターを務める服部尚貴氏。ドライビング・スタンダード・オブザーバーも兼務する。
スーパーGTでレースディレクターを務める服部尚貴氏。ドライビング・スタンダード・オブザーバーも兼務する。

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