Kazushi Nakano / autosport web

 レース中は常に多くの検証・判断に追われ、その作業はときにチェッカー後も続いている。「え、あのドライバーが勝ったの?」と気付くのは、レース後しばらく経ってからのこと。そしてレースから数日が経ち、「振り返ってみても、すべての判断に間違いはなかったな」と感じるとき、服部RDは「あぁ、仕事が終わったな」と思えるという。

 レースをコントロールする立場から、スーパーGT参戦ドライバーに望むことを訊ねると「もうちょっとフェアにやってほしいかな」と服部氏。

「GT500同士、GT300同士は結構フェアに頑張ってくれていると思う。すべてが、とは言えないけどね。それにプラスして、クラス違いについても、もうちょっとお互い気を遣えるようになってくれれば、と思います」

「もちろん、(GT500とGT300の)性能が近づいているというか、GT500からしてみれば抜きづらいGT300だし、(ABSが装着されている)GT300からしてみればブレーキでGT500が邪魔になるかもしれない。そこはある程度考慮して判定しないといけないとは思っていますけど、GT500が抜こうとしているのにすごいブロックをするGT300がいたりとか、逆に入れない距離なのに無理やり行こうとするGT500がいたりとか。『当たらなかったから良かったけど……』というシチュエーションは結構あるので、そこをもうちょっとフェアにやってほしいとは思います」

 また、FCY導入は昨今の大きなトピックだが、服部氏は運営側としてさらに発展・改善させていきたい部分もあるという。それは2019年、DTM最終戦にGT500の3台がゲスト参加した際に現場で目の当たりにした、コミュニケーションの部分だ。

「あのときはすごい雨が降っていたのですが、レースをスタートさせるかどうかを、RDからPPのクルマのドライバーに、直接無線で訊いていたんですよ。『コンディションどう? スタートできる?』って。ドライバーからも『うん、これならいけると思うよ』って返事が返って来て。そんな相互通話ができれば、ああいうコンディションのときは本当に助かると思う」

「もちろんそれはタイヤがワンメイクでみんな同じ条件だから、というのが前提にはあるんですけど、そういう情報が入ってくるシステムがあれば、お互いすごく楽になると思う。ドライバーも、ものすごい危険な状況のなかを走らなくてもよくなるので」

 現状、スーパーGTではRDから全チームのピットに向けた“RD無線”はあるが、コクピット内のドライバーとレースコントロールが直接結ばれるコミュニケーション・ツールはない。FCYのカウントダウンも、チームからの無線を介してドライバーには伝えられている状況だ。

「まぁ普段から(ドライバーに)どんどん喋られたら、こっちも困っちゃうんだけどね(笑)。『いま当たったんだけど!』っていうのばかりになってしまうから。こちらが聞いたことに対して、返ってくるスイッチがあれば嬉しい(苦笑)」

 高度化するレースに合わせ、それをコントロールする立場の難しさも増している。デジタルフラッグ、FCYなどの環境整備は進めど、結局それを運用するのは“人間”であるレースディレークターだ。ちなみに2021年F1最終戦の件についての感想を求めると、「タイトルが決まる局面で『SCでそのまま終わらすのはちょっと……』と考えてしまったのかな、とは思いますが、残り周回数に関係なく、決められたルールどおりにやるべきだったのではないかと思います。赤旗? 赤旗はああいう場面で出すためのものではありません」と服部氏。

 一環した基準とコミュニケーションを核に、この先もより良いレース運営がされていくことを望みたい。

スーパーGTでレースディレクターを務める服部尚貴氏。ドライビング・スタンダード・オブザーバーも兼務する。
スーパーGTでレースディレクターを務める服部尚貴氏。ドライビング・スタンダード・オブザーバーも兼務する。

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