更新日: 2022.04.02 11:56
GRスープラ、燃費で「2〜3パーセント改善」最高速を削る覚悟の空力開発【GT500開発担当に聞く/トヨタ編】
昨シーズンを振り返ると、レースではホンダ陣営がトヨタ陣営より1周早くピットインし、アンダーカットで順位を上げるシーンが大きなポイントとなった。トヨタ陣営からは「あの周回数ではピットインできない」と燃費の差を痛感する声が聞こえたが、今季のGRスープラはエンジン面での燃費向上も大きく達成しているようだ。
「今年は450kmレースが3回あります(昨年は500kmレースが1回で他は300km)。我々はどうしてもアンチラグをライバルより多めに使って走る傾向があるので、燃費をよくするという取り組みを続けてきました。去年の最終戦から2~3パーセントは燃費の面で向上できたのがひとつ、あとは性能の絶対値としては特に夏場とか、オートポリスなど気圧が低くてターボの回転(過給圧)を上げないといけないわけですけど、そういったところでエンジンの性能を出し切れていなかった部分があるので、過給圧を下げた状態でも性能を出せるように取り組んで部品を換えています。すでに効果は出ているので、今年は夏場とオートポリスに開発した成果が出せると思っています」
もっとも燃費に厳しいもてぎでは、NSXとGRスープラの燃費差は最大4.9パーセントあったという。
「ホンダさんとの差は同等まで詰められていると思っています。もちろん、ホンダさんがどのように運用しているのか、燃費はクルマのセットアップやドライバー側の影響も大きいのですけどね」
燃費は当然、クルマのセットアップやドライバーの運転の仕方による影響が大きい。特にトヨタ陣営には、LC500時代から続くセットアップの方向性が大きく燃費にも影響していると考えられる。
GRスープラの前、LC500の時からトヨタ陣営の各チームではレイクを大きく付けるセットアップがトレンドとなっていた。車体前部のダウンフォースをレイクを付けて稼いで回頭性を上げていた一方、ブレーキングではどうしてもリヤが軽くなり、タイヤがロックしやすくなる。そのロックを防ぐためにリヤタイヤを回転させるトルクを出していため、アンチラグ(ターボエンジンでアクセルオフ時にターボラグによってレスポンスの遅れを解消するシステム。減速時でも燃料を使うことになり、燃費が悪くなる。コーナーでマフラーから炸裂音や火が出る現象)の多さと合わせて、どうしても他陣営より燃費が厳しかったという背景がある。
今年はそのダウンフォース不足とアンチラグの両面に大きく手を加えてきたというわけだ。アンチラグを減少させるために、どのようなアプローチを施してきたのか。
「アンチラグがなくてもレース走行できる開発は制御系と補機類の両方でできると思っています。今後のビックチェンジも考えていますけど、今年の開幕仕様にはそのビックチェンジは含まれていません。試作品でのメドは付いていますので、あとは準備の部分になりますね」と佐々木氏。
真打ちの登場はシーズン後半の2基目になるようだが、特性を大きく変えた今季のGRスープラがどんなパフォーマンスを見せるのか。
「去年、チャンピオン獲得できたのはいろいろな運があり、実力で完全に獲りきったというよりパッケージとしてはNSXに負けていたという思いで開発しているメンバーは今季に向けて取り組んできました。今年はしっかりと実力でタイトルを獲れるように、クルマの準備としては今の段階ではパーフェクトではないですけど、引き続きチーム、ドライバー含めてTGR一丸でしっかりと戦っていきたいと思っています」と、佐々木氏。
ライバル陣営の印象についても「Zも直線が速いですよね。富士でも我々よりも全然速かったです。GRスープラと同じような方向性なのかなと思います」と話すように、今季は3車の得意不得意のサーキットが大きく変わる気配も漂っている。