更新日: 2022.06.06 11:21
apr GR SPORT PRIUS GT 2022スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート
2022 AUTOBACS SUPER GT Round 3 SUZUKA GT 300km RACE
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
5月28日(予選)天候:晴れコースコンディション:ドライ観客数:11,000人
5月29日(決勝)天候:晴れコースコンディション:ドライ観客数:21,000人
依然として続く大苦戦。
我慢の走りも実らず、リタイア…
1カ月足らずの短いインターバルで連戦の様相を呈しているスーパーGTは、早くも3戦目に突入。『たかのこのホテル SUZUKA GT300km RACE』が、鈴鹿サーキットで開催された。
2台体制で挑むaprが、コンビ結成4年目の嵯峨宏紀選手と中山友貴選手に託すのは、お馴染みのTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(ZVW52)『apr GR SPORT PRIUS GT』。タイヤは引き続き信頼と実績のブリヂストンを使用する。
マシンもコンビ同様4年目に突入し、着実に熟成が進んでいるのは、昨年の第6戦・オートポリスの優勝で実証されたはずが、今年はGT300車両が総じて試練を課せられている。厳しいBoPによって、懸命にメイク&トライを重ねて整えてきたバランスが、大きく崩されてしまったのだ。
そのため、岡山国際サーキットの開幕戦では予選22番手、富士スピードウェイの第2戦では予選24番手と、予想外の結果になっていた。リストリクター径の縮小はパワートレーンを根底から見直す程の労力であり、致命的なのも事実。決勝ではオーバーテイクが許されず、我慢の走りを余儀なくされるばかりで、粘り強く完走は果たしているものの、それぞれ19位、22位と、手も足も出せぬ状況が続いている。
その中で、しっかりデータを積み重ね、短いインターバルではあったものの、なんとか実を結ぶためにプライベートテストも実施し、進むべき方向は見えてきた。とにかくベストは尽くす。光明を見出すために!
公式練習 5月28日(土)9:25〜11:00
まだ5月だというのに、土曜日の鈴鹿サーキットは猛烈な暑さに見舞われた。雨の心配をせずに済むのはありがたいが、ひょっとしたら現状からすれば、ウェットコンディションの方が可能性あるかも。ふと、そう思ってしまったほど、茨の道を進み続けている『apr GR SPORT PRIUS GT』。前回からの短いインターバルに富士でプライベートテストを実施し、ある程度の改善ははかられたものの、コースのキャラクターが極端に異なる鈴鹿で、果たしてそれが通用するかという不安がないわけではなかった。
今回も中山選手のドライブから公式練習を開始。極端な不具合は見当たらなかったのは、走行を始めて間もなく2分0秒932が記録されたことで明らかだが、これではまだ勝負にならない。その後、何度もピットに入れられ、一回のスパンが長いのは大胆なセット変更を行っているからだ。
今回は50分ほど経過したところで、嵯峨選手が代わってセットアップを進めていく。もちろん行われているのは決勝に向けての最適化。終了間際に、嵯峨選手は2分2秒699を自身のベストタイムとしていた。
公式予選Q1 5月28日(土)15:13〜15:23
公式練習が終わってなお、セット変更が行われ、公式予選に向けて準備が整えられた『apr GR SPORT PRIUS GT』。今回もGT300の予選は2組に分けられ、A組に振り分けられた31号車、Q1は嵯峨選手に託された。
計測2周目からアタックを開始、まずは2分0秒306を記し、次の周には2分0秒029、そして計測4周目にはついに2分を切る、1分59秒824を出し、これをレースウィークのベストタイムに。
だが、Q1突破のボーダーラインは1分58秒で、はるかに及ばず。13番手に留まって、『三度目の正直』を果たせず、ここで公式予選を終えることとなった。
嵯峨宏紀選手
「タイム的には芳しくないですね。ほぼミスなく、まとめたんですけど、タイム的にはあれ以上行きませんでした。ただただ重いだけのマシンバランスで軽快さが無い。他と比べて、パフォーマンスの差はかなり大きく感じがします。
2秒差ですからね……。いろいろセットを変えたんですけど、いかんせん光が見えない状態で。ドライバーとしてはやり切ったし、ミスなく走ったつもりなので。あとは粘り強くミスなく走り、決勝を頑張ります」
中山友貴選手
「昨年の優勝したAP戦以降と、その後更に課せられたBOPでのパッケージでは全然ペースが上がらない状況で、まったりと遅いとしか言えない。諦めず、なんとかして少しでもペースアップできるよう、ドライビングでも頑張っていきたいです。少しは伸び代があると信じています」
金曽裕人監督
「新しいタイヤ、新しいセットを、プライベートテストで試したことを今回投入しましたが、やっぱり鈴鹿という特有のサーキットに対して、セットも間に合いませんでした。正直、前戦よりもパフォーマンスは出ると思ったんですが、やはり今年のレギュレーションの中で、クルマを決め込むというのが本当に難しく、ある程度、小さな光は見えているんですが、先はまだまだ長いような……。でも諦めずに、セットを大きく変えたりだとか、ドラスティックな作戦を取ろうとか、いろんなことを考えています。明日の決勝は、先に進むための布石としてデーター取りに徹します。『しばし待たれよ、プリウス!』って感じです」
決勝レース(52周)5月29日(日)14:40〜
決勝レースに向けた最終確認が行われるはずだった、ウォームアップでアクシデントが発生。デグナー立ち上がりでクラッシュした車両があり、セッション半ばにして赤旗終了となってしまったのだ。
許されたのは嵯峨選手による3周のみ。2分3秒014を出すに留まり、なにより中山選手によるチェックができなかったことに不安材料を残す。しかし、それにしても暑い。決勝レースを前にして気温は30度と真夏日の様相を呈し、路面温度に関しては50度にも達していたからだ。この暑さが、波乱のレースの引き金にならねばいいのだが。
スタートを担当したのは嵯峨選手で、ポジションキープでのレース開始となるが、1周目を終えたところで、さっそくFCY(フルコースイエロー)となる。GT500車両がスローダウンし、コース脇に停まったからだ。5分ほどで解除されると『apr GR SPORT PRIUS GT』は、GT300車両同士でバトルを繰り広げ、5周目に1台をかわす。9周目にセーフティカー(SC)が導入される。シケインでのクラッシュと、タイヤを痛めてスローペースになった車両が現れたからだ。これが3周に及び、12周目にはピットレーンオープン。
ドライバー交代はできないものの、後々のピット時間を短縮するために給油したり、タイヤをあらかじめ交換しておくため、4台が滑り込んできたことで、嵯峨選手はポジションを上げることとなる。
さらにSC明けから間もなくドライバー交代可能なミニマム周回に達したため、早々とドライバー交代を行う車両も。どうやら季節外れの高温によって、タイヤが早々に音を上げたようである。
その点、『apr GR SPORT PRIUS GT』はタイヤ的には問題なく、はからずも好燃費をアピールできたことで、中山選手への交代を24周目まで伸ばすことができ、その時点で4番手にまで上がっていたが、これが最大限の抵抗と言わざるを得ず。それでも18番手で折り返し、序盤よりも順位を上げてはいた。
ピットで先行したはずのGT3車両に、なす術もなくストレートで抜かれ続けていたが、なんとしてもチェッカーだけは受けようと、我慢の走りを重ねていた中山選手だったが。35周目に入ってマシントラブルが発生、パワステも効かなくなったマシンで走り続けるのは危険と判断し、中山選手はヘアピン脇でストップ。無念のリタイアを喫することとなった。
次回のレースはこれまでとは異なり、やや間隔を明けて8月6〜7日に、富士スピードウェイで今年2回目の450kmレースとして開催される。この長いインターバルを利用し、必ずやチームは打開策を見出してくれるはず。巻き返しを期待したい。
嵯峨宏紀選手
「電気系トラブルで補器が機能しなくなり、さらにエンジンも止まったようです。僕が乗っている時は問題なかったのですが、ピットアウト後に何かしらの要因があったのかも知れません。マシンパフォーマンスは20年にポールポジションも取れた鈴鹿でありながら、その時と比較しても、どこもかも全体的にベタっと遅く得意な所もなく、頑張って上を目指し走っていましたが、防戦一方で本当にしんどかったです」
中山友貴選手
「トラブルで電源が落ち、エンジンが吹けなくなったばかりか、パワステまで落ちてしまって。コーナリング中だったので追突しそうにもなったので、最後は止めました。なんとかヘアピン立ち上がりの脇に、無事に止められて良かったです。絶対的なパフォーマンスとしては、通常の状態ではない感じで走っていたので、評価としては難しいところですが、ドライバーでは挽回できないパフォーマンス不足は事実。また違ったことをトライしないといけないのかな、と思っています」
金曽裕人監督
「電気制御のトラブルで、リタイアとなってしまいました。どっちにしても、今年のレギュレーションはやっぱり噛み合わない。正直、簡単なレベルじゃないですよというところに、時間がかかっています。まぁ、人とは違う難しいことをやっている以上、いろいろことが出てきて当然なのですが、その厳しさを改めて実感しているところです。技術は日進月歩で変化もするし、難題も出てきます。まだまだ頑張らなきゃいけないところはあるし、成長していかないと。それが我々の使命でプリウスの存在価値……と思っている状況です。絶対に諦めません。もう少しお待ちください」