【FUJIMAKIGROUPE SUZUKA GT 450km RACE】
SUPER GT ラウンド5は、8月27日〜28日に鈴鹿サーキットで開催された「FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT450km RACE」
前戦富士では、願ってもない好成績を収めることができ、ドライバーズポイントまで獲得したArnage Racing。チームのお膝元鈴鹿サーキットでおこなわれる真夏のロングレースも、前戦同様、第3ドライバーに末廣武士選手を迎え、富士ラウンドと同じようなレース展開が期待できるのか。
チームは、開幕戦以来リアの荷重問題に苦心していたが、6月末に行われた岡山テストでようやく解決の緒を掴み、前戦富士である程度の結果を出すことに成功していた。そのため、富士ラウンドで投入した「タイヤに優しいセットアップ」を、この鈴鹿ラウンドにもそのまま持ちこんで臨むことにしていた。
鈴鹿サーキットはコースの特性が富士と異なるため、富士ラウンドと同じセットアップでは柔らか過ぎるのではないかという懸念があった。しかし、タイヤを守り長丁場を戦い抜くには、鈴鹿ラウンドでも、柔らかさの限界を攻めるようなセットアップを試す必要があった。
見るたびに変わる週末の天気に一喜一憂しながら、チームは再び長丁場のレースに向けて、入念なメンテナンスを行なった。
8/27 公式練習
予選の行われる土曜日は、雲は多いものの、雨の心配はなさそうだ。
土曜日の午前中の公式練習はスケジュール通り9時25分よりスタート。
まず阪口選手がコースに出て、マシンのフィーリングを確認した。
阪口選手は持ち込みの柔らかいセットのまま数ラップを走行したが、チームの懸念通り、マシンの挙動が掴めないほど柔らかく、バランスも悪かったため、チームは一旦阪口選手を呼び戻してスタビを硬い方向へとセット変更した。しかし、それでも柔らかい傾向は変わらず、チームはセッション半ばでバネを交換することを決断。バネを硬いものに交換し、ダンパーのセット変更も行って、再び阪口選手をコースに出し確認を行った。
マシンの状態はようやく落ち着き、バランスも走行するには問題ない程度になったため、チームはソフト方向のタイヤテストも行った。阪口選手は専有走行前の混走の中で、柔らかいタイヤを履いて1‘59.937をマーク、クラス17番手につけた。
しかし、柔らかいタイヤは固い方のタイヤと比較すると、グリップもフィーリングも劣っていたため、チームは決勝に向けて、固い方のタイヤをチョイスすることにした。
公式練習の最後の10分間を使って、300クラスの専有走行が行われ、阪口選手から交替した末廣選手が5Lapほどを走行。2分00秒台をマークするなど好調なところを見せ、マシンへの理解が更に深まったことが確認できた。
続いて、その後行われた20分間のFCY訓練の時間を使って、今度は加納選手がマシンをドライブ。加納選手もマシンに慣熟していき、午前中のセッションは非常に有意義なものとなった。
ただ、この段階では、サスペンションはバランスこそ取り戻したものの、ピッチングの状況やロールの状況がまだバラバラな状態にあり、予選までのインターバルの間に、チームは固い方のタイヤに固い方のバネを合わせるセットアップを行ってマシンの状態を整えていった。
8/27 予選
FCYの時間にサーキットのシステムに不具合が発生し、土曜日の午後のスケジュールは全て20分ディレイとなった。公式予選も予定より20分遅れて、15時20分からの開始となった。
Q1をB組から出走するArnage Racingは、この鈴鹿ラウンドでも阪口選手がQ1を担当することになっており、阪口選手は開始と同時にマシンをコースインさせた。
阪口選手は非常に慎重にタイヤに熱を入れながら、タイミングを見計らっていたが、5Lap目に1’58.532をマーク、さらに6Lap目に1’58.123を叩き出してB組3番手につけた。富士ラウンドに続く高順位に、阪口選手を見守るピットも大いに沸いたが、結局このタイムは走路外走行を咎められて抹消となり、それでも辛うじて7番手に残りQ2進出を果たすことができた。
続いて行われたQ2に、チームは第3ドライバーの末廣選手をコースに送り込んだ。末廣選手は早々とアタックを開始。しかし、功を焦ったか、早々にタイヤの美味しいところを使ってしまい、5Lap目に1’58.550をマークして11番手にとどまった。富士ラウンドに続き、本人にはほろ苦いQ2アタックとなってしまった。
とはいえArnage Racingは今季最高位の11位から翌日の決勝を戦うこととなり、メカニックは450kmの長丁場を戦うべく、夜遅くまでメンテナンスに励んだ。

8/28 決勝
決勝が行われる日曜日は、朝のうちは雲の多い空模様だったが、次第に青空が広がり、ピットウォークが行われる頃には、願ってもないような眩しい夏空が広がる、絶好のレース日和となった。
決勝前のウォームアップ走行では、2回のピットインが義務付けられている鈴鹿450kmレースに備えて、ドライバー交替のシミュレーションを行い、さらにウォームアップ終了まで時間いっぱいを使って加納選手が6Lapほどを走行、更なる慣熟を行って決勝の時を待った。
気温30度、路面温度40度と夏の終わりを飾るレースにふさわしいドライコンディションの中、パレードラップ、フォーメーションラップと続いて、14時30分より鈴鹿のロングレースがスタート。
第1スティントを担当する阪口選手が、11番手から450km先のチェッカーを目指して激走を開始した。レース開始直後からスプラッシュと呼ばれる短い給油をするチームもあり、順位は序盤から混沌としていたが、阪口選手は2分01秒台を何度かマークし、好調な走りを見せていた。
ところが8Lap目、「パワステが壊れた」と阪口選手からの無線が飛び込んでくる。マシンは警告灯が点滅、パワステが効いたり効かなかったりする症状が出ており、阪口選手は序盤から忍耐のレースを強いられる。それでも阪口選手はステアリングの重さを上手く利用しながら、ペースを落とすことなくドライブを続けていた。
しかし、27Lap目、更なるトラブルが発生。パドルシフトに不調が現れ、シフトが上がったり上がらなかったりする状態となってしまう。
チームは第2スティント担当の末廣選手に状況を伝え、予定通り、300クラスのチームの中で最後、30Lapを終了したところで、1回目のルーティンピットを行うために阪口選手をピットに呼び戻した。
メカニックは、ミスのないピットワークでタイヤを4輪とも交換して給油を行い、第2スティントの末廣選手が13番手でコースに復帰した。
末廣選手は、ステアリングが重くシフトも不調な中、手負いのマシンをうまくコントロールしながら、燃料の重いスティント前半はペースを抑え、タイヤをマネジメントするクレバーな走りを見せていた。
しかし、不運がチームを襲う。44Lap目に130Rで起きたクラッシュのため、SC導入となってしまった。2回目のルーティンピットを引き延ばす作戦をとって築いてきたマージンが、ここで全てご破算となり、上位浮上のチャンスが遠のいてしまった。
整列したマシンは、SCに先導され5周にわたってコースを周回し、50Lap目、ようやくレース再開となった。
末廣選手はスティントの後半、SCで負ったディスアドバンテージを取り戻すかのように、2分01秒を連発するハイペースでプッシュし続け、53Lap目には今大会ベストとなる2’01.135をマーク。見かけ上の順位は1位のまま、まもなく予定通り2回目のピットインのタイミングを迎えようとしていた。
ところが、スティントの残り2Lapのところで、「電圧低下」を示す警告灯が点いたと末廣選手からの無線が入る。マシンは更に危うい状態になっていることが予想されたが、もはやチームにはなす術もなく、残り10周余りとなったレースを加納選手に委ねるべく、60Lap目に末廣選手をピットに呼び戻した。
末廣選手の巧みなタイヤマネジメントのおかげで、タイヤは残りのレースを戦うのに問題なく、メカニックは、予定通りタイヤ無交換で給油のみの素早いピット作業を行なって、加納選手を17位でコースに送り出した。
加納選手は、満身創痍のマシンをなんとかゴールまで導こうと、レースを開始。途中ライバルマシンのアクシデントなどにより、15位までポジションを上げた。
しかし、66Lap、シフトの入りは、更に厳しくなっていき、ステアリングも固着が感じられるような状況に陥ってしまった。「無理、もう耐えられへん」と無線から加納選手の緊迫した声が入り、チェッカーまで3Lapを残して、無念の緊急ピットイン。そこでレース終了となってしまった。
Arnage Racingは、レースの3分の2を走行していたため、辛うじて完走扱いとはなったが、完走ポイント3を取る絶好の機会であった鈴鹿サーキットでのレースで、またしても3点を取ることができなかった。
しかし、レース内容は今シーズンの残り3戦に期待を繋げるものであり、また、チームとして、目前の完走を逃しても、危険な状態でレース続けることが不可能だという判断を下し、敢えて走行終了という戦果を選択できたことは幸いであった。
