7周目の3コーナーで発生した多重アクシデントにより10周目にセーフティカーが導入された。車両の回収も終了し、リスタートに向けてクラス別に隊列が整えられていた13周目。SC導入中のホームストレートで31号車apr GR SPORT PRIUS GTが5号車マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号に追突するまさかのアクシデントが発生した。
31号車のステアリングを握っていた中山友貴は「ちょうど最終コーナーに差し掛かるときに、少し(隊列が)ばらけてるように見えて、最終コーナーを立ち上がってからは少し前と(車間を)開けるようにしました。その一瞬で、誰が後ろに、どう並んでいるのかを確認したのですが、(再び)前を見たら(5号車が)かなりスローダウンしてるような状況で……。発見が遅れてしまったので止まりきれなかったという状況です」と説明する。
「当然、リスタートも控えていたので、(タイヤの)内圧やサイドミラーを確認したり。それぞれの作業を同時進行でやっている中でした。自分的には『前が少し、先に加速したな』というのを見送った後で、それ(内圧やサイドミラーの確認)をしていたのですけど……。(前方を)見ていなかった時間が少し長くなってしまったという感じです」
「セーフティカー中は、前とあまり離れてはいけないので、そこも気にしながらでした。タイミングが悪かったというか……本当に冨林選手とTEAM MACHのみなさんには申し訳ないです」
一方、5号車のステアリングを握っていた冨林勇佑は「先ほど中山選手から謝罪して頂きました」とした上で、追突時の状況を振り返った。
「(リスタートに備えて)タイヤを暖めていたのですけど、あちらが少しメーター類をチラッと見て、気がついたら僕が目の前にいた。それがすべてかなと思います。レースを戦っている以上、こういうこともあるとは思うので」
追突の衝撃は大きく、Gセンサーも作動したが、「体は痛いですけど、(検査をしたら)骨に異常があるとかはなかったのでよかったです」と冨林。
GT300デビューイヤーの最終戦は不本意なリタイアとなったが、「来年に向けて、いろいろと勉強させていただいた1年だったと思います。引き続き、来年もしっかりと頑張りたいですね!」と笑顔で語った。(TK)


■予選でクラッシュを喫した山内英輝「攻めるレースを最後までできた」
11月5日の公式予選Q2でクラッシュを喫したSUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝。決勝日朝に行われた100戦記念のセレモニーでも、100戦に関することはひと言も言わず「最後の最後まで今日のレースを頑張っていきたいと思います」と決勝に向けた意気込みを語った。
そんなSUBARU BRZ R&D SPORTだが、決勝レースは20位という結果に。チャンピオンには届かなかった。ただレース後山内は「僕の昨日のミスをみんながカバーするために全力でやってくれましたし、攻めるレースを最後までできたと思っています。その気持ちが嬉しかったです」とレースを振り返った。
「チャンピオンには半周足りなかったですが、みんなが出し尽くした結果だと思っています」
車両は万全というわけではなく、「エンジン側でいろいろあって、それを労りながら走る状況でした。昨日のクラッシュが原因だったのかは分かりませんが」と山内は言う。
「どちらにしろ、昨日僕が流れを崩してしまったと思います。アタッカーとしてやってはいけないものだと思うので、必ずクルマをしっかり戻せるように心がけていきたいと思います」
連覇という大きな目標には届かなかった。しかし、速さではすべてのライバルが認めるトップドライバーである山内がさらなる“強さ”を得る、ターニングポイントとなるレースとなったのかもしれない。(RH)
■一時は絶望も。リアライズのホイール脱落は「ナットが原因では」
「終わった。今年一年の苦労が水の泡だ」
41周目、まさかの光景を見たリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rの米林慎一チーフエンジニアは青ざめた。ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが走行中のGT-Rの右フロントタイヤが外れてしまったのだ。
当初、オリベイラからは「タイヤが壊れた」と連絡があったというが、米林チーフエンジニアはピットイン時、右フロントの装着がやや遅れたと明かした。「ちゃんと締まっているのか心配はあった」というが、一度ピットインし、右フロントを装着して送り出し、その後チェッカーまで走り切ったことから、「おそらくナットではないか」と推測した。
さらにその後も、メインストレートで一時スローダウンしヒヤリとさせた。これについては「ABSのアラームが点いたので、一度再起動させたんです」という。ともあれ、なんとか走り切りチェッカーを受け、そして大逆転でのチャンピオン獲得を果たすことになった。
「本当は全戦ポイントを獲りたかったのに、2戦も落としてしまいました」と米林チーフエンジニアは、チャンピオン獲得でホッとしつつも、少し悔しそうな表情を浮かべていた。(RH)

■「クラッチが切れなかった」UPGARAGE太田格之進
2番グリッドから鋭いスタートを見せ、3コーナーまでにトップへと浮上したUPGARAGE NSX GT3。スタートを担当した小林崇志は、ポールポジションのARTA NSX GT3の“弱点”をスタート前から観察していたという。
「ウォームアップ(走行)の段階で、55号車はタイヤのウォームアップが厳しそうだなというのは見てとれていたので、1コーナーしかないなと思っていました。どういう状況になっても抜きに行けるようにタイヤもしっかり温めてありましたし、準備していました」
「僕が55号車のアウト側から、斜め左後ろに位置して1コーナーに入って行ったんですが、(55号車は)ちょっとアンダー出してたので、そこはすかさずノーズを入れてうまく並ぶことができました。3コーナーへのブレーキングでも、向こうはちょっと温まってなくてしんどそうだったので、あそこで前に出られたのは良かったです」
かくしてトップに立ち、レース前半を優位に進めていたUPGARAGEだったが、26周目の終わりにピットへと飛び込んで太田格之進へと交代した際、リスタートに手間取ってしまう。
「発進時にトラブルが出てしまいました」と太田は振り返る。
「クラッチが切れなかったんですよね。だからスターターを押すとガガガガって進んでしまって、押しがけみたいになってしまいました。バッテリーが残っていたので、無理矢理エンジンはかかったのですが……」
全車がピットを終えた39周目時点で、太田は10番手にまでドロップしてしまっていた。
幸いレース後半もマシンのバランスは良く、TANAX GAINER GT-Rとはほぼコース1周にわたるサイド・バイ・サイドの争いを繰り広げた。「『これを抜いたら、チャンピオンがどうのこうの……』と言われたので、燃えましたね(笑)」と太田。最後は4位まで追い上げただけに、ピットでのロスが悔やまれる結果となってしまった。(KN)
