更新日: 2023.04.19 18:11
横浜ゴム 2022スーパーGT第8戦もてぎ 決勝レポート
【SUPER GT第8戦/モビリティリゾートもてぎ】
まさかのホイール脱落で一度は諦めかけた王座奪還、運も味方につけた
「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」が2020年以来の栄冠を掴んだ!!
全8戦で争われる2022年のSUPER GTは、ついに最終戦を迎えた。モビリティリゾートもてぎが舞台の一戦は、ほぼ全車ノーウエイトの戦いとなり、この1年間の成熟度も含めて同じくノーウエイトの開幕戦以上に真価を問われることとなる。また、ヨコハマタイヤユーザーではGT300クラスで、「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」の藤波清斗選手とJ.P.デ・オリベイラ選手に、シリーズチャンピオンの権利が残されている。
11月5日(土)は公式練習が行われた午前こそ肌寒くあったが、時間の経過とともに上空には青空も広がり、文字どおり公式予選は小春日和の中で行われた。GT300クラスの予選では、今回もヨコハマタイヤユーザーは8台がQ1を突破。A組では「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」の藤波選手が2番手につけて、より期待を高めるとともに、B組では「UPGARAGE NSX GT3」の小林崇志選手がトップタイムを記録していた。
Q2ではトップこそ奪われたものの、「UPGARAGE NSX GT3」が引き続き好調、太田格之進選手が2番手を獲得。3番手にも谷口信輝選手からバトンを託された、「グッドスマイル 初音ミク AMG」の片岡龍也選手がつけていた。この後にも、「weibo Primez ランボルギーニ GT3」の小暮卓史選手、そして大注目の「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」のJP選手が続く。タイトル獲得可能なライバル一台の先行を許してはいたが、このポジションをキープできれば逃げ切りは可能だ。
一方、GT500クラスでは「リアライズコーポレーション ADVAN Z」の佐々木大樹選手が2番手、「WedsSport ADVAN GR Supra」の国本雄資選手が3番手につけ、2台ともQ1を難なく突破する。となれば、ヨコハマタイヤユーザーによる、今シーズン5回目のポールポジション獲得に期待がかかるも、まず「リアライズコーポレーション ADVAN Z」の平手晃平選手は5番手に。そして、「WedsSport ADVAN GR Supra」の阪口晴南選手は、入念なウォームアップの後に、ワンアタックをしっかり決めて、いったんはトップに立ったものの、本当に最後の最後に一台の逆転を許して、悔しい2番手に甘んじてしまう。
一夜明けた6日(日)の決勝レースも天候に恵まれ、スタート直前の気温16度、路面温度27度は、奇しくも公式予選のスタート時とまったく一緒。期待を抱かせるに絶好のコンディションとなっていた。そんな状況において、GT300クラスでスタートダッシュに成功したのが「UPGARAGE NSX GT3」の小林選手。3コーナーでトップに立ってからは、同じNSXを駆るポールシッターを一歩も寄せつけなかった。
だが、ペースが上がり始めた8周目に、3コーナーで多重接触が発生。即座にFCY(フルコースイエロー)が提示されるも、オイル処理が必要ということで、やがてSC(セーフティカー)が導入されることに。しかも、間もなく再開というタイミングで、今度はホームストレートでアクシデントが発生。再開には30分以上を要したことで、21周目からのSC先導終了後には、ドライバー交代可能なミニマム周回に到達する。
早々とピットに戻る車両が相次ぐ中、「UPGARAGE NSX GT3」はあえて太田選手への交代を26周目まで遅らせるも、クラッチにトラブルを抱えていたことから十数秒をロスし、大きく順位を落としてしまう。一方、「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」も、1周前に藤波選手からJP選手に代わっていたが、ポジションキープを果たせなかったばかりか、逆転チャンピオンの権利を残す、早めに交代したライバル勢3台の先行すら許していた。ただし、その位置関係であれば、まだ逃げ切りは可能であった。
ライバルのうち1台を27周目に自力でかわしていたJP選手は、さらにもう2台にも迫っていたことから、安全圏に持ち込んだかと思われた。そんな矢先の41周目、3コーナーで突然、右フロントのナットが外れてホイールが脱落。なんとかピットに戻れて、再出走できたのは不幸中の幸いだったが、これで万事休すと誰もが思ったはず。ラップダウンとなって、入賞圏外に退いていたからだ。2番手を走るGRSupra、3番手を走るGT-R、いずれかの戴冠が濃厚になっていた。
だが、終盤に差し掛かると、明らかにヨコハマタイヤユーザーのペースが速い。まずGT-Rを「Bamboo Airways ランボルギーニ GT3」の松浦孝亮選手が52周目に抜き、さらに次の周には、一度は大きく順位を落としていた「UPGARAGE NSX GT3」が、太田選手の凄まじい追い上げによってキャッチアップ。
さらに最終ラップには松浦選手がGRSupraをかわして2番手に浮上、そればかりかGT-Rを「weibo Primez ランボルギーニ GT3」の小暮選手が抜いたことで、形勢が激変! 結果的に19位でゴールした「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」が、ノーポイントながらも逃げ切りに成功し、藤波選手とJP選手が2年ぶりの王座奪還となった。まさにヨコハマタイヤユーザーのナイスアシストでもあった。
GT500クラスでは2番手スタートの「WedsSport ADVAN GR Supra」が、ポジションキープから国本選手がレースを開始。その一方で5番手スタートだった「リアライズコーポレーション ADVAN Z」の佐々木選手は、5コーナーで発生した先行車両の接触を回避しようとして、10番手にまで順位を落としたばかりか、8周目の3コーナーの多重クラッシュに巻き込まれ、早々にリタイアを喫してしまう。
「WedsSport ADVAN GR Supra」はSC導入によって、広げられていた差を詰める幸運もあったが、22周目の阪口選手への交代後、アウトラップのウォームアップに苦しみ、順位を落としてしまう。さらに終盤には燃費に苦しみ、全開走行も許されずに7位で無念のレースを終えていた。
■藤波清斗選手(リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R)【今回の成績:GT300クラス19位(シリーズチャンピオン確定)】
「チャンピオンを取り返すことができました!! 1年間を通してヨコハマタイヤさんが、すごく高いポテンシャルのタイヤを提供してくれたおかげです。本当に感謝しています。とはいえ、ホイールが外れた時、一時は本当に諦めかけたのですが、信じて見守っていて良かったです。本当に奇跡です。これに浮かれず、本当にもっともっと努力して、今度は連覇できるように頑張ります」
■J.P.デ・オリベイラ選手(リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R)【今回の成績:GT300クラス19位(シリーズチャンピオン確定)】
「チャンピオンになったのはチェッカーを受けるまで知らなかったんです。ずっと無線がオフで、情報がなかったので。1コーナーを過ぎたところで、やっと『チャンピオン!!』と(笑)。今回もヨコハマがロングスティントに強いタイヤを用意してくれたので、本当に良かった。走り出してすぐ行けると分かったから、最初はちょっとセーブしてね。でも、ホイールナットが飛んだのはびっくりしました。チャンピオンになれるかどうかまでは分かりませんでしたが、大丈夫だと信じて最後まで頑張りました。ラストラップのランボのオーバーテイクはラッキーでしたが、それがSUPER GTなんですよ。とても最高のシーズンでした」
■国本雄資選手(WedsSport ADVAN GR Supra)【今回の成績:GT500クラス7位】
「スタート直後のウォームアップが悪かったんですが、なんとかポジションをキープできたのは良かったです。その後のペースも決していいところではなかったのに、なんとか2番手のまま戻ることができたので、表彰台を……と思ったんですが、代わってからのアウトラップだったり、ペースがなかったりして、非常に厳しいレースになってしまいました。今年1年間、コンスタントに予選ではいいパフォーマンスを出せていたんですけど、逆に改善しなければならない部分も、アウトラップだったり、タイヤのウォームアップだったりはあったので、そこは反省点でもあり、今後開発すべき点だと思うので、シーズンオフにしっかり反省して、自分たちの詰められる部分をもっと詰めて、準備したいと思います」
■阪口晴南選手(WedsSport ADVAN GR Supra)【今回の成績:GT500クラス7位】
「ファーストスティントは厳しい最中、国本選手が一所懸命バトルで抑えてくれました。しかし、どういった理由かは検証しなければいけませんが、ピットを出てきたところでは順位を下げてしまったし、かつウォームアップに課題があるので、アウトラップでも順位を下げてしまいました。その後もガソリンが足りるか足りないかとなって、全開走行が途中からできなくなっていたので、自分達の力を出しきれない、悔しいレースになりました。得意としていたもてぎで、ロングのペースがなかったので、これまで歩んできた道を、もう一回見直さなければと思います」
■平手晃平選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)【今回の成績:GT500クラスリタイア】
「今回、僕はリタイアで決勝レースを走れていないんですが、今シーズンを通じると、とにかく自分たちが開発してきたタイヤの進化を、ものすごく感じられました。表彰台には2回も上がれましたし、自分たちのチームの方が安定していたように思いましたね。自分の進化も感じられたシーズンでしたし、来年はもっともっと頑張ります」
■佐々木大樹選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)【今回の成績:GT500クラスリタイア】
「今日は不運が多くて、1周目も8号車と3号車の接触が目の前で起きた時に、失速してしまって抜かれてしまって、その後にも突っ込んできた車が前にぶつかって、塞がれたところに追突されてしまいました。ちょっとタイミングも悪かったですね。最終的に速さはあったと思うので、来年につなげられればな、と。来年は優勝できるよう、頑張ります」
■松浦孝亮選手(Bamboo Airways ランボルギーニ GT3)【今回の成績:GT300クラス準優勝】
「タイトル争いの状況を自分では理解していなくて走っていましたが、自分たちのベストを尽くすために一所懸命頑張った中で、ヨコハマさんのチャンピオンに貢献できたのは、本当に良かったと思います。本当は僕らが取ることが最大の目標ですが、そういうところを走らせてくれたヨコハマさんに感謝しています。SCのタイミングで変則的なストラテジーをとって、そのおかげで後半のペースも良かったし、本当にいいレースができました」
■坂口夏月選手(Bamboo Airways ランボルギーニ GT3)【今回の成績:GT300クラス準優勝】
「スタート直後こそ厳しい展開だったのですが、チームの作戦が良くて、僕が単独で走れている時に頑張れたので、孝亮さんにうまくつなげられました。孝亮さんも何台かオーバーテイクしてくれて、本当にかっこいいレースができて良かったです。ヨコハマさんも『抜け、抜け!』って、一緒に応援してくれました。タイヤもすごく良くて、いいペースで走れました」
■小林崇志選手(UPGARAGE NSX GT3)【今回の成績:GT300クラス4位】
「タラレバなんですけど、勝てていましたね、間違いなく。クラッチが切れなくなって、直結になっちゃったんですよ。だから、セルモーターでなんとか発進して、という状況でした。それで10秒ちょっとロスしてしまったので残念です。勝った55号車よりアウトラップは速かったので、おそらくアンダーカットできて、前で戻れたと思うんですよね。そこからペースも、後半のスティントも速かったし。来年こそ勝って、ファンの皆さんに喜んでもらいたいと思います」
■太田格之進選手(UPGARAGE NSX GT3)【今回の成績:GT300クラス4位】
「僕ら、GT-Rとヨコハマのチャンピオン獲得を、アシストしていたんですね。それは気づかなかった。ただ、トップで帰ってきて、ピットで15秒ぐらい失っているので、それでドンと落ちた感じなんですよ。しょうがないなって感じでした。タイヤは良かったですね。悔しいですけど、内容は良かったです」
■白石貴之(横浜ゴム タイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発 1グループ・リーダー)
「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rのチャンピオン返り咲き、本当にありがとうございました。我々も見ていて疲れました(苦笑)。タイヤは昨日からかなり良さそうでしたし、実際ペースは良かったので、問題ないかと思っていましたが、ナットが飛んでホイールが外れた時には『終わった……』と思いました。JLOCの2台にも頑張っていただいて、とても感謝しています。ランボルギーニもタイヤはコンディション的にマッチしていたと言ってもらえて、今年一緒にテストしていたこともあったので、2台とも非常にいい結果も出していただいた上に、オールヨコハマとして最高の結果に結びついたのだと思っています」
「GT500の方は、決勝は路面温度がそれほど低くはなかったのですが、タイヤのウォームアップ性能に関して狙ったような形にはならず、厳しい結果になってしまいました。そこは来シーズンに向けた課題として、構造、ゴムともに取り組んでいきたいと思います」
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