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投稿日: 2022.12.04 15:04
更新日: 2022.12.04 15:25

石浦、大嶋が手塩に掛けて作り上げたGRカローラRZ&ヤリス開発秘話。言いにくいことを伝えきった『石浦レポート』


クルマ | 石浦、大嶋が手塩に掛けて作り上げたGRカローラRZ&ヤリス開発秘話。言いにくいことを伝えきった『石浦レポート』

「そこから毎回、言いにくいことはレポートに書いて送るようにしました。モリゾウさんにも送っていたら、モリゾウさんからも『お前はクルマの良くないところ、悪いところをひたすら言ってくれ』と、『褒めるのは俺がやるから』とモリゾウさんに言われました」

 それを聞いた斎藤氏が驚く。「え、ホントですか? それは初めて聞きました! 1回も(モリゾウさんに)褒められたことないですよ!?」

 石浦が続ける。

「モリゾウさんから『嫌われるし、けなしたくないからお前たちが悪いことは言ってくれ』と。『それが仕事だ』と。それで僕も『分かりました』と言って、そこから遠慮なく言わせてもらうようにしました」

 実際に、初期段階ではどのような内容をレポートで伝えていたのか。

「初期の段階では、リヤの接地感がすっぽ抜けていた時期があったんですよ。地面に対するキャンバーの当たり方の話とか、ワンメイク車両だってそこを工夫して接地を稼いでタイムを稼いでいることとか、僕が86買ったときもサーキットを走るには4輪の車高がバラバラだったので、レーシングチームのファクトリーで一度サスペンションを緩めてもらって、そして締めてもらった。どのレーシングチームでもクルマをこういう風にして、サーキットできちんと走るようになるんですよという話をレポートに入れていました。内装についても、僕も大嶋も、細かく要求しました」と石浦。

 GRカローラRZの開発担当を務める坂本尚之氏が、その内装変更の一例を挙げる。

「GRカローラのセンターコンソールもベース車ではアームレストが付いているのですけど、(GRカローラRZでは)石浦さんの意見でなくしました」(坂本氏)

 石浦も、そのアームレストにはこだわりがあった。

「マニュアル車で、シフトチェンジの時に肘が当たるのは一番恥ずかしいですからね。そこは絶対に避けたかったので、同じ内容のレポートを3回くらい送りました(苦笑)」

 性能や速さを求めるレーシングチームのエンジニアとは違い、自動車メーカーの開発エンジニアにとっては、どうしても予算への意識が高くなる。

「やはり開発リーダーの僕が言っても、『(各部の担当者は)お金が掛かるから難しい』とかいろいろ進みづらいところがあるのですけど、石浦さんのレポートで一斉にみんなに言われると、『やらなきゃいけないな』という雰囲気になって、プロジェクトとしても動きやすくなりました」と、坂本氏も石浦レポートの影響力の大きさを振り返る。

 現役トップドライバーが本気で注力し、トヨタGRの開発者と作り上げたGRヤリス、そしてGRカローラ。

 開発を担った大嶋が「サーキットでの限界領域と街中でも気にならない乗りやすさ、クルマの限界のレベルも下がらない、そのあたりのバランス取りの部分は結構、うまくいったと思っています」と話せば、石浦も「普段、自分がサーキットに通う時の足にしようと思って作りました」と話すように、ロングドライブでも疲れないような安定性の高さと安心感、そして走り出しや高速道路でもまったく力不足を感じないパワフルさを身に纏った、まさにモータースポーツを起点としたレーシングカーベースの市販車が誕生した。

 今年、2022年の1月に抽選販売されたGRヤリスは限定500台で、申込み件数は1万件を越えて約23倍という高倍率になったということから、今回のGRカローラRZも最初の500台の完売は必至。このクルマの開発背景、そしてこのクルマの走りを一度体感すれば、カローラという車両名のイメージを完全に覆す驚きを得られることは間違いない。

トヨタGRカローラRZ、GRヤリス試乗会
石浦宏明(右)、大嶋和也(中)に加えラリードライバーの勝田範彦(左)が開発ドライバーとして関わった

トヨタGRカローラ RZ(プロトタイプ)
トヨタGRカローラ RZ(プロトタイプ)
トヨタGRヤリスRZ “High performance”
トヨタGRヤリスRZ “High performance”

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