Tomohiro Yoshita, Tomoyuki Mizuno / autosport web

「僕が言いたいのは“義務”とは? “義務違反とは”ということです。スーパーGTにはとてつもなく多くのファンがいて、応援してくれる子どもたちがいるなかで、義務を果たしていないクルマが優勝してしまうということに対して、どう説明をするのか? という部分です」と語るのは、DENSO KOBELCO SARD GR Supraの脇阪寿一監督。レース後も、TOYOTA GAZOO Racing系チームの監督やスタッフと険しい表情で話し、忙しく動き回っていたのが印象的だった。

 今回ここまで混乱している原因のひとつが、赤旗でレース終了になった場合、給油義務を消化していない車両に対するペナルティの有無がレギュレーションに明記されていなかったこと。「ルールでもジャッジできないことを審査委員の方々が裁量を考えてジャッジをするのが、経験ある審査委員の方々だと思います」と語る脇阪監督。そこには、このような想いがあった。

「審査委員の方々も努力していただきながら、いろいろな話し合いをされていることも理解しています。エントラントのみんなが抗議を提出したり、レースを良くするために話し合っているのは分かるのですけど、それをファンの方々がなかなか知ることのできる機会がないです」

「これで(審査委員会が)『ルールですから』ということで3号車が勝つことになったときに、うやむやな状態で皆さんに(結果が)伝わることになっています。何より、子どもたちに“義務”という言葉の意味を、我々がどうやって伝えれば良いのか。やはり、スーパーGTはファンあってのレースだと思います。ファンの方々が納得するリザルトジャッジというのは、どういったことなのかを考えていただきたいです」

 結果に対する抗議は行いつつも、審査委員会への敬意と配慮を忘れない脇阪監督。「抗議を提出したのと同時に、僕は審査委員会に行かせていただいて、みなさんにそういった話をしました。『貴重な意見をありがとう』と言っていただきました」とコメント。こちらも話を聞いたときは抗議提出直後だったのだが、審査委員会の再審議を期待している様子が伺えた。

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 脇阪寿一監督(TGR TEAM SARD)
2023スーパーGT第3戦鈴鹿 脇阪寿一監督(TGR TEAM SARD)

 こうして再審議が行われ、給油義務を消化していなかった3号車に対して60秒加算のペナルティが出されるという暫定結果の改訂版が20時40分に出された。抗議した10チームをはじめ、そこに賛同した関係者らの声が届くかたちとなった。

 なお、これに対して3号車NDDP RACINGが抗議を提出。しかし審査委員会によって却下されたため、その後NDDP RACINGが控訴の意思を表明。控訴の内容については「ノーコメント」とのことで、19号車が優勝という暫定結果のまま、JAFモータースポーツ審査委員会の裁定を待つことになった。

 いずれにしても、大クラッシュによる赤旗中断による終了に加え、レース後の観客がいないサーキットでウイナーが替わるという後味の悪いかたちで終わってしまった2023スーパーGT第3戦鈴鹿。『ファンファースト』を掲げるスーパーGTが、今後のルール整備も含めて関係者間で徹底的に議論していただき、今回のような後味の悪い終わり方が起きないように、状況が改善していくことを願うばかりだ。

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)
2023スーパーGT第3戦鈴鹿 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)

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