●苦労の先に流れた師弟の涙
「苦労が長かった分、本当に嬉しかったです。サクシードスポーツの皆さんとがんばってきて良かった」という川端は、チェッカー後、メインストレートにマシンを止めると、涙を流しガッツポーズ。同じく感涙の永守代表、そして寿一がサインガードで出迎え、こう声をかけた。
「これからやぞ。これがスタートやぞ」
ちなみにこのとき、寿一は川端に声をかけながら、サングラスを一度も外さなかった。当然、“サングラスを外せない”理由があったからだ。

川端は、翌日の第2戦でも「昨日のライバルが後ろにいるから、ぶっちぎってうしろとの間隔を見ながらレースをしろ」という寿一からの指示を守り優勝。第1戦では松本恵二さんのヘルメットを、第2戦では遺影を持って表彰台に上がり、師匠に開幕2連勝という完璧な滑りだしを報告した。「これで(関係者注目の存在に)立候補したよね」と寿一も笑顔で表彰台を見守った。
「3年前にサクシードスポーツに入って、JAF-F4ではチャンピオンを獲れましたが、FIA-F4ではすごく苦労をかけました。それでも懲りずに、あきらめずに支えてくださった永守代表に本当に感謝しています。厳しい方ですが、愛情をいつも感じています」と川端。
「永守さんも、恵二さんを表彰台に連れていけたのでホッとしているのではと思っています。今度はチャンピオンを獲って、また永守さんを泣かしたいです!」
「僕はもちろん、恵二さんが現役のときに走っているところを見たことはないです。でも、その人がいたからこそ、今の僕がいると思う」と川端はいう。松本さん、寿一、そして川端と続くDNAがいま、大きく花開こうとしている。
