更新日: 2023.08.04 10:44
GR86&BRZ、兄弟車でも空力アプローチはさまざま。プロトタイプカー譲りの造形も【2023年GT300開発競争その3】
muta Racing GR86 GTは、muta Racing INGINGとムーンクラフトのジョイントで製作したオリジナルのエアロを身にまとう。ムーンクラフトは1/4スケールの風洞設備を完備し、かつてGT300で活躍していた紫電やマザーシャシーのロータス・エヴォーラを開発してもいる。同じように風洞を使っても、aprとは導き出された答え(デザイン)が異なるのが興味深い。muta Racing GR86 GTが履くのはブリヂストン。タイヤの違いによる影響もあるのかもしれない。
特徴的なのはフロントフェンダー後方の処理だ。膨らみとくびれがある造形は、まるでF1のサイドポンツーンのようにも見えるが、プロトタイプカーのフェンダー内を覗くと同様の形状になっているそうだ。このように上下に振り分けたような形状にすることでホイールハウス内の空気を効率良く引き抜くことができ、フロントのダウンフォースが確保しやすくなるという。サイドステップ前方は、それに合わせてデザインを変更した。
リヤビューでは、リヤフェンダー後方にワイヤーメッシュを設置。ディフューザー上には整流パーツを設けるなど、細かいこだわりを感じる。フロアのギヤボックスの逃げにおいても、キール形状を採用していた。ボディとフロア、いずれもムーンクラフトの風洞実験により、性能が良かったことによる導入だ。そして、第2戦富士と第3戦鈴鹿で2戦連続の2位表彰台。2023年規定への対応も含めたアップデートに成功したことを証明してみせた。
■BRZのエアロバランスはリヤ寄りに。CPUとホイールもアップデート
SUBARU BRZ R&D SPORTは、スバルとして、BRZとして、水平対向エンジンとそれにともなう低重心にこだわり続けてきた。ターボエンジンとはいえ、2リッターはGT300クラスで最小排気量。活路はコーナーでのパフォーマンスにあり、要となる空力を追い求めてきたのだ。そのひとつの解答が、2021年に採用したフロントフェンダー前方が張り出したデザイン。それが正解だったことは、2021年のタイトル獲得が物語っている。しかし今季のルールで、その最強の武器を失ってしまった。
エアロの変更点としては、フロンフェンダー前方の張り出しがなくなり、エグリが入れられて特徴的だったリヤフェンダー後方がボックス形状となってワイヤーメッシュを設置した程度。いずれも斬新だったがゆえに見た目の違いは大きいが、メニューとしては少ない部類だ。
リヤフェンダーについては空力的な影響はあまりないそうだが、フロントはダウンフォースを失い、新規定によってディフューザーの始点が前進したこともあり、エアロバランスは少しリヤ寄りになったという。ここはサスペンションも含めたセッティングで合わせ込んでいくことになる。
また、空力ではないところでのアップデートとして、昨年導入を見送っていたモーテック製CPUを再採用。CPUの高速化により点火や燃料噴射の正確性が上がった。そして、今年のアップデートのなかで一番変化したというのがホイール。BBS製であることに変わりはないが、デザインを変更し、タイヤの進化に合わせて剛性を高めている。狙いはタイヤのロングライフ化だ。
2021年にチャンピオンとなり、2022年も最後までタイトルを争った。だが、今季はここまで苦戦が続いている。入賞は第3戦鈴鹿の6位のみ。必ずしもそれだけが原因ではないだろうが、最初に走行風を受け、後方まで風の流れに影響するフロントフェンダー前方のデザイン変更は、やはり大きな影響を及ぼしているのではないか。それでも、第3戦鈴鹿ではポールポジションを獲得し、速さが健在であることは示した。ここからの巻き返しに期待したい。