更新日: 2023.08.09 01:45
横浜ゴム 2023スーパーGT第4戦富士 レースレポート
スーパーGT第4戦/富士スピードウェイ
GT500はリアライズコーポレーション ADVAN Zが前戦の雪辱を果たすポールポジションを獲得、GT300はDOBOT Audi R8 LMSが嬉しいチーム初表彰台を飾った!
スーパーGT第4戦が富士スピードウェイで開催。鈴鹿サーキットで開催された第3戦からは約2カ月というインターバルを挟み、真夏の富士決戦が幕を開ける。前戦はレース終盤に大クラッシュが発生し赤旗終了。その時点でトップを走行していた車両にタイム加算がされ、2位を走行中だったWedsSport ADVAN GR Supraが逆転で優勝。チームとしては2016年の第7戦タイラウンド以来、国内サーキットでは初めての優勝を遂げ、40kgのサクセスウエイトを追加して得意の富士へ挑むこととなる。
またGT500クラスのもう1台、リアライズコーポレーション ADVAN Zも予選後の車検で違反が見つかりタイム抹消という衝撃の結果とはなっていたが、予選セッションでトップタイムをたたき出し、決勝でも力強い走りで追い上げる姿を見せていただけに、今大会に向けても一層気迫がみなぎっていた。
予選日はまさに夏真っ盛りという陽気で、午前中のフリー走行も朝9時の段階で気温は28度を記録。路面温度は40度という状況で各車が走り出していった。途中、GT300クラスの車両がコース上にストップしたことで赤旗中断、さらにGT500クラスの専有時間には1台が車両トラブルでコースサイドに止まってしまったことでもう1度赤旗が掲示され、セッションはこれで終了してしまった。
GT500クラスの各車は予選に向けたアタックシミュレーションを満足にできずに走行を終えることになり、ライバル勢の動向もよく分からない状況となってしまったが、リアライズコーポレーション ADVAN Zは1分29秒363というタイムで5番手につけ、まずまずの滑り出しで予選に向かっていった。
フリー走行終了時点で気温は30度に到達。さらにフルコースイエローのシミュレーション、スーパーGTではおなじみのサーキットサファリなど、さまざまなプログラムが行われていくが、灼けるような日差しの影響で路面温度はぐんぐんと上昇していき、公式予選開始時刻の午後3時20分の時点では47度を記録。真夏の1戦にふさわしいコンディションで最速タイムを競う予選がスタートした。
2組に分かれて行われるGT300クラスのQ1。A組には、ランキング1位で90kgのサクセスウエイトを搭載するリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rをはじめ、10台のヨコハマユーザーが出走した。早めのタイミングでアタックを開始したライバルの1台がターゲットタイムを記録し、各車がそのトップタイムを塗り替えるべくプッシュするが、なかなかタイム更新には届かない。
坂口夏月選手がQ1を担当したBamboo Airways ランボルギーニ GT3がトップに対し約0.3秒差で2番手につけ、これがヨコハマ勢としてトップのタイムとなる。これに、古谷悠河選手がステアリングを握ったANEST IWATA Racing RC F GT3が3番手で続き、DOBOT Audi R8 LMS、JLOC ランボルギーニ GT3、リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rの計5台がQ2に駒を進めることとなった。
B組は、HOPPY Schatz GR Supra GTやUPGARAGE NSX GT3など、出走した13台中6台がヨコハマユーザー。速さを見せたのはグッドスマイル 初音ミク AMGで、Q1を担当する片岡龍也選手は1回目のアタックで1分37秒657をマークしてトップに立つと、連続アタックでさらに自己ベストタイムを短縮。1分36秒896で2位以下を突き放し堂々のトップタイム通過を果たした。これに、RUNUP RIVAUX GT-RとHOPPY Schatz GR Supra GTも加わり3台がQ2へ進出する。
Q2はグッドスマイル 初音ミク AMGの勢いが止まらず、谷口信輝選手が1分36秒395でトップタイムをマークしポールポジション獲得。チームとしても、谷口選手自身としても2017年以来、6年ぶりのポールポジション獲得となった。
GT500クラスの予選はリアライズコーポレーション ADVAN Zが圧巻の走りを見せる。Q1は平手晃平選手が担当し、トップに対して100分の7秒と僅差の2位でQ2に進出。バトンを託された佐々木大樹選手は、やや気温、路面温度が下がってきたことも手伝って平手選手の出したタイムを約0.17秒縮める1分27秒763をマークし、堂々のトップタイムをマーク。前戦鈴鹿では予選後の車検で違反が見つかり、速さは証明したものの悔しい結果となったリアライズコーポレーション ADVAN Zが雪辱を果たすポールポジション獲得を成し遂げた。 WedsSport ADVAN GRSupraは国本雄資選手がQ1を担当したが、やはり40kgを超えるサクセスウエイトが響きQ2進出はならず、9番グリッド獲得となった。
週末の天気予報は、当日が近づくにつれて徐々に雲行きが怪しくなり、日曜日は朝から傘のマークが並ぶようになっていた。午前中には雨が降り始め、多くのファンが参加したピットウォーク時には土砂降り状態で、路面状況は一気にウエットコンディションへと変化。ただ、ウォームアップ走行が始まるころには雨がやみ、50台近いGTマシンが20分間走行したことでコンディションは回復し、スリックタイヤに履き替えた車両たちがスターティンググリッドに向かっていく。
ところがスタート進行を進めている間に再び雨が降り始め、100周の決勝レースはセーフティカー(SC)先導の下でスタートが切られた。SCが隊列を離れ本格的にスタートしたのは3周目。平手選手がスタートドライバーを担当するリアライズコーポレーション ADVAN Zはトップをキープしていたが、翌4周目に1台の先行を許し2位へ後退。10周目にはさらに1台にかわされ3位へと下がってしまった。
雨は小康状態で路面は再び回復方向に。この状況に、リアライズコーポレーション ADVAN Zがいち早くタイヤ交換を決断し、11周目を終えるところでピットへ向かうとドライタイヤへの交換と燃料補給を行いコースへ復帰する。
これをきっかけにライバル勢も続々とピットイン。先にタイヤ交換を済ませた車両がポジションを逆転するアンダーカットが成功するかに思われたが、まだ完全なドライコンディションとは言えない路面でタイヤがなかなかウォームアップせず、リアライズコーポレーション ADVAN Zは順位を上げることができずに我慢の前半スティントとなってしまった。
レースが3分の1を消化した35周目に、GT300クラスでヨコハマユーザーの1台であるHACHI-ICHI GR Supra GTがTGRコーナーを立ち上がったところでマシンをストップさせる。たちまち車両からは炎と煙が上がり、すぐさまセーフティカーが入ることとなった。ステアリングを握っていた佐藤公哉選手は自力で車両から出てきたものの、煙を吸い込んでしまったようでその後病院に搬送されたが、無事が確認されている。
レースは41周目にリスタート。この時点で10番手を走行していたリアライズコーポレーション ADVAN Zは、リスタート直後の混戦のなか、前を行く数台と接近戦を繰り広げた。何度もテール・トゥ・ノーズまで近づきオーバーテイクのチャンスをうかがうが、決定的な場面を作れずに周回数が進んでいく。それでも他車のタイヤ交換のタイミングもあり、55周目には5番手までポジションを上げ、56周を終えるところで2度目のピットイン。コースに復帰し、9番手で再び追い上げを開始した。
GT500クラスのトップ車両が66周目に入ったところで、GT300クラスの1台、HOPPY Schatz GR Supra GTから火災が発生する。火の勢いは序盤に起きたHACHI-ICHI GR Supra GTのとき以上で、レースは赤旗が提示され中断。ホームコース上に各車はストップし、消火活動と車両回収を待つ。このスティントを担当していた野中誠太選手は無事に車両から降りる姿が映像モニターに映し出されている。
火災がタイヤバリアにも燃え広がってしまったことと、途中で天候も悪化してきたことから、約50分の赤旗中断に。また強い雨が降ってきたことから、コース上にストップした車両はタイヤ交換のみ作業が認められ、各車がウエットタイヤに履き替えて午後4時30分にSC先導でレースが再開された。
大粒の雨を落とした雲は移動し、ところどころ雲間が見えるような空模様で、残りが約30周となった終盤戦は徐々にドライアップしていくコンディション。GT300クラスとの混走のなかで足元をすくわれスピンする車両もあるなか、佐々木選手が走行するリアライズコーポレーション ADVAN Zは我慢の走りを続け、10位でゴール。最大延⾧時間ぎりぎりまで続けられた100周の戦いで無事にチェッカーを受けた。
予選9番手のWedsSport ADVAN GR Supraは国本選手がスタートドライバー。実質のオープニングラップとなった3周目はウエットタイヤのウォームアップが思うようにいかず苦しいペースでの走り出しとなってしまった。途中ドライタイヤに履き替えて以降はペースが回復し他車とバトルする場面もあったが、序盤のタイムロスが響き12位でのチェッカーとなった。
GT300クラスは、見た目上ではトップをライバルに譲り渡す場面はあったものの終盤まではポールシッターのグッドスマイル 初音ミク AMGがレースをコントロール。しかし赤旗中断後のスティントでベテラン谷口選手がまさかのコースアウトを喫してしまう。まだ濡れた箇所も残っているなか、ドライタイヤへと履き替えた直後の周だった。
グッドスマイル 初音ミク AMGが後退したことで表彰台圏内にはDOBOT Audi R8 LMSが浮上。予選も5番手と好調ぶりを見せていたDOBOT Audi R8 LMSは、途中ポジションを落とすこともあったが、ウエットコンディションを得意とするロベルト・メリ・ムンタン選手がハイペースで追い上げて挽回。最終的には2ポジションアップの3位表彰台を手にした。
これに5秒遅れて4位でチェッカーを受けたのはリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rで、大量のサクセスウエイトを搭載しているにもかかわらず今回も上位争いに加わりポイントを獲得。次戦はマックスウエイトの100kgを搭載して戦うこととなる。
佐々木大樹選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績:GT500クラス10位】
「今回のレースのように天候や路面コンディションが大きく変化するような展開のときは、タイヤが対応できる状況の幅というのがとても重要になります。その幅を広げるように開発していくことはとても大変ですが、その部分でライバルたちとの差を感じるレースになりました。予選のときのように自分たちが狙っているコンディションのときには強いものの、それ以外のときに合わせこんでいける、そういうタイヤを作って行けるようにみんなで頑張っていきたいです」
平手晃平選手(リアライズコーポレーション ADVAN Z)
【今回の成績:GT500クラス10位】
「ドライタイヤに関しては、フリー走行の時点でロングランもショートランも自信を持てるパフォーマンスを感じました。ただし、ウエットタイヤに関してはまだまだ改善しなければならない部分が多いです。今回は残念な結果に終わってしまいましたが、次の鈴鹿大会もまだウエイトは軽い状況ですから、また予選からポールポジションを狙っていけると思います。決勝もドライだったら、鈴鹿こそ逃げ切れると思うので、そういうレースをしたいですね」
国本雄資選手(WedsSport ADVAN GR Supra)
【今回の成績:GT500クラス12位】
「ウエットタイヤは思ったようなグリップ感を出せず、厳しいレース展開となりました。スタートから数周で大きく離され、その時点で勝負権がなくなったような感じです。この問題点はもちろんのこと、ドライタイヤでもコンスタントに戦えるようなものを持ち込めるよう、改善していきたいです」
阪口晴南選手(WedsSport ADVAN GRSupra)
【今回の成績:GT500クラス12位】
「僕はドライタイヤもウエットタイヤもどちらも使うようなスティントになりました。ドライタイヤはまずまずの感触でしたが、ウエットタイヤは課題が大きいと感じています。今回のレースでたくさんのデータが獲れたので、これを活かしてさらにいいタイヤを開発していきたいです」
片山義章選手(DOBOT Audi R8 LMS)
【今回の成績:GT300クラス3位】
「今回のようなコンディションだと、序盤にライバルメーカーたちが速さを出すことは想定していましたが、思ったよりもすぐに落ちてきたし、自分たちはペースを上げていくことができました。ただ今回のレースは自分たちのチームとしてのミスが続き、それがなければ勝てていたと思うので、チーム初表彰台という点では嬉しいですが、悔しい思いもあります。ヨコハマタイヤのドライタイヤはとてもコンペティティブで、いい働きをしてくれました」
ロベルト・メリ・ムンタン選手(DOBOT Audi R8 LMS)
【今回の成績:GT300クラス3位】
「スーパーGTで初めての表彰台を獲得できて本当に良かったです。ただ、自分たちのパフォーマンスを考えると優勝も十分に狙えたので、満足はしていません。順位変動の激しいレースで、自分自身も何台オーバーテイクしたか覚えていないほどです。力強い走りができるサポートをしてくれたヨコハマタイヤに感謝します」
白石貴之
【横浜ゴムタイヤ製品開発本部MST開発部技術開発1グループ・リーダー】
「24号車は前戦のリベンジを果たすポールポジション獲得でしたが、フリー走行のときからクルマとのマッチングは良さそうな感じだったので、良いところには行けるだろうと思っていました。それでも、他のクルマも速かったのでポールポジションまでは予想していなかったですが、結果的には高いパフォーマンスを発揮していただき、非常に良かったと思っています。19号車はやはり前回の鈴鹿優勝でサクセスウエイトをかなり積んでいるので、その分を考えると十分な速さを見せていただきました」
「決勝では、2台ともにドライタイヤでは結構いいペースで走っていただけたと思っている一方、今年パターンを変えたウエットタイヤは、夏場の比較的温度の高い富士という状況では、ゴムや構造といったところであのパターンに合うものをまだ出せていないという印象です」
「GT300クラスは、結果に関しては残念ですが、比較的ウエットも合わせこみがうまくできているなと感じています。4号車は終盤まで力強くレースをリードしていましたし、6号車も予選からいいところにつけ、最後までパフォーマンスを出してくれました。そして56号車は我々のタイヤをかなり知り尽くしていることと、チームとしてレースを戦っていく力が非常に高いと感じます。次戦以降フルウエイトでの戦いになりますが、楽しみな1台です」
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