2023 AUTOBACS SUPER GT ROUND 4
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km
8月5日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:2万200人
8月6日(決勝)
天候:曇り一時雨 コースコンディション:ドライ一時ウエット 観客数:3万200人
試練は続く、天国から地獄へ。そして再び這い上がり、最下位から脅威の追い上げで5位に
2023シーズン、aprは全8戦で競われるスーパーGTにニューマシン、レクサスLC500hを投じてGT300クラスを戦う。31号車apr LC500h GTをドライブするのは嵯峨宏紀選手、そしてスーパーGTでは初めてaprでフル参戦となる小高一斗選手。また、8戦中5戦で開催予定の450kmレースでは、第3ドライバーとして根本悠生選手が起用される。タイヤはブリヂストンを使用する。
シリーズ第4戦の舞台は、富士スピードウェイ。国内最長のストレートから、1コーナーではフルブレーキングを要し、セクター1とセクター2は高速コーナーが続く一方で、セクター3は上りの峠道のようなテクニカル区間が設けられている。
前回の鈴鹿では予選Q1でトップタイムを記すも、Q2ではQ1と違うタイヤをチョイスし路面コンディションに合わせ切れず苦しみ、決勝には11番手から臨むことに。義務づけられた2回の給油を伴うピットストップの1回を早めに行いQ1で使用したタイヤに交換し終盤の追い上げに賭けたものの、アクシデントの発生によって赤旗が出されてレースは終了。まだまだこれから……という矢先だっただけに、13位という結果は残念であったが、ドライバーが大事に至らなかったのは何よりだった。
前回のレースから2か月のインターバルがあり、その間マシンは一層手が加えられた。サクセスウエイトはまだ9kg。本領を発揮するのは、今まさにこの時だ!
公式練習8月5日(土)9:00〜10:35
近頃は連日のように全国的に猛暑が続くが、この週末も例外ではなかった。もちろん、そんな暑さにマシンが音を上げないように対策は施され、タイヤも熟慮した上でのチョイスだ。その意味では想定どおりのコンディションではあったが、それでも厳しいことには変わりはない。今回も公式練習は、小高選手から走行を開始。スタート時の気温は31度、路面温度は38度だ。
さっそくスピードが試されると、計測3周目には1分38秒864が記録され、その時点でのトップに立つ。その後、2回のピットストップを挟んで、1分38秒670まで短縮された後、30分ほど経過したところで嵯峨選手に交代。ロングを15分かけて、その間に1分38秒912を記していた。続いてapr LC500h GTに乗り込んだ根本選手もロングを担当。やはり15分走行する間に1分38秒906を記録する。
ラストのGT300クラス専有走行には、再び小高選手が乗り込むと、決勝想定のセットにもかかわらず1分38秒230と、このセッションのベストタイムさえマークして、公式練習を10番手で終了。この後のFCY(フルコースイエロー)テストは根本選手が、サーキットサファリは主に嵯峨選手が担当。FCYテストでは根本選手が最後の周に1分38秒475をマークしてトップ、万全の仕上がりを感じさせた。
公式予選Q1 8月5日(土)15:38〜15:48
今回の公式予選Q1に、apr LC500h GTはB組で臨み、第2戦以来となる根本選手がアタッカーとして起用された。気温は32度に、路面温度に至っては48度と、公式練習より10度も上がっていたが、もちろん想定の範囲内だ。
なかには計測2周目からアタックを開始するドライバーもいたが、根本選手は計測3周目からアタックを開始。1分37秒621で2番手につけ、引き続きのアタックで1分37秒551にまで短縮を果たすも、その間にトップとの間に2台が割って入り、4番手になってしまう。それでも、もちろんQ1突破を果たし、Q2に構える小高選手にバトンをつないでいた。
公式予選Q2 8月5日(土)16:13〜16:23
開幕から4戦連続でQ2進出を果たしたapr LC500h GTが、今回選んでいたのはQ1、Q2ともにハードタイプのタイヤ。おそらく予選同様、猛烈に暑くなるであろう決勝レースにおいて、戦略の幅を持たせるための選択だ。小高選手も計測3周目からアタックを開始する。
まずは1分37秒621をマークして5番手につけた小高選手は、さらにアタックを重ねて1分36秒775にまで短縮。その結果、3番手を獲得し、apr LC500h GTは2列目イン側のグリッドから決勝をスタートすることになった。
嵯峨宏紀選手
「明日、戦略的にどうなるか分かりません、ふたりで行くのか、3人で行くのか。いずれにせよレースに向けては、いい状況は作れていると思います。特にタイヤは実績がありすぎるパフォーマンスの高いタイヤなので、そのあたりの不安はないのが強みですし。ただ、今回から5周目以降のピットということになって、今までショート〜ロング〜ロングができなかったGT3も、やってくるのが何台かいると思うので展開は読めないです。となると純粋な速さでの勝負になりますから、若干GT3に分があるかな、って気もしています。あとは天気が微妙なんで、雨降ったら、もう蓋を開けてみないと分からないかもしれません」
小高一斗選手
「ポールを獲りに行くような柔らかいタイヤではないので、3番手からスタートできるのは、すごく上出来じゃないかと思います。今年からルールでセット本数が減って、何が正解か分からないまま、ここまで来ちゃいましたが、前回の反省を今回活かせたのが、この結果につながったと思っています。雨が降ったらイレギュラーになるかもしれませんが、ドライであるなら、そこそこ強いクルマになっていると思うので、作戦を皆さんとこれから考えて、明日は良い結果を残せるように。S耐を含めて、ずっと速さはあるけど、結果につながっていないレースが続いていて、チームとしてもかなりストレスが溜まっていると思うので、ここでしっかりと。チームの皆さんと明日、喜べればと思っています」
根本悠生選手
「今回はスムーズにメニューがこなせたこともあって、しっかりと練習の時間もとらせてもらって、Q1行く前にニュータイヤも使わせてもらっていたので、ウォームアップの感覚を持った状態で走れたのは、すごい力にもなりましたし、ひとつ大きな自信につながったかな、と思います。決勝を見据えて選んできているタイヤでしたから、少しつらかったというのはありましたが、ドライでしたら、けっこういいところを走れると思います。デグラレーションも今回は、かなり調子良さそうなので。ただ、ダンプになったらどうなるか。それでもフルウエットになってくれたら、僕らには力があるので、そこは全然気にしていないです。中途半端なコンディションになった時に、チーム力やタイヤ戦略がすごく出ると思うので、そこは間違えないように、みんなで頑張っていきたいと思います」
金曽裕人監督
「硬いタイヤで1回交換を狙っているから、あの順位につけられたというのは最高! 素晴らしい、みんな頑張ってくれました、グッドジョブです。車は持ち込みから決まっており少しのアジャストで、ここまで来られましたし、第2戦のQ1は根本、Q2は小高ってパターンを崩しませんでした。明日はまだ決めてませんが、天候に合せてドライバーの組合せを考え、そのあたりはフレキシブルにやっていくつもりです。そろそろ優勝したいので、全力で応援してください! 我々も全力を尽くします」

決勝レース(100周) 8月6日(日)13:45〜
「決勝レースを前に、緊急事態が発生していた。まずひとつは予選後、再車検の燃料分析検査で、鈴鹿の燃料であることが判明。失格となってしまったのだ。第3戦で余った燃料を移動車や発電機に使う予定でキャリーオーバーして持ち込んだが、間違いでそのまま予選で使用してしまったのである。パフォーマンスに影響はなくとも、レギュレーションでは開催サーキットで販売している燃料使用が義務づけられており、これに抵触という……。その結果、最後尾スタートとなった。
そして、もうひとつの緊急事態は、雨に見舞われたこと。どうやら台風5号の影響のようだ。サポートレースの決勝中に降り出した雨は、瞬く間に路面を濡らし、20分間のウォームアップが始まる前にはやんだが、走行開始時には激しく水しぶきが上がるほど。スタートを担当する小高選手から走り始め、1分45秒937を記した後、嵯峨選手がドライブ。その間にどんどん路面は乾いていき、最後はドライタイヤも履けるようになる。ダンプコンディションがいちばん厄介だったから、決勝はドライコンディションで戦えると思われたのだが……。
その後、グリッドウォークなどセレモニーが行われる間に路面はほぼドライに転じるも、間もなくフォーメイションラップ開始というタイミングで、また雨が、しかも強く降ってきたからたまらない。結局、全車がウエットタイヤを装着し、レースはセーフティカー(SC)スタートでの開始となった。2周の先導の後、いよいよ熱戦の火蓋が切られることに。
最後尾から小高選手は、着実に順位を上げていく。しかし、5周もすると雨はやんで、皮肉にも路面は徐々に乾き出す。ストレートのピット寄り、まだ水の残る部分を走って対応できるのも、もはや時間の問題……。そこでapr LC500h GTを9周目にピットに戻し、給油とドライタイヤへの交換を行って、小高選手をコースに送り戻す。全車が義務づけられた給油を伴うピットストップの2回のうち1回を済ませると、apr LC500h GTは14番手。どうやら恵みの雨になってくれたのか?
路面がドライに転じても、ブリヂストンタイヤのパフォーマンスはずば抜けて高く、小高選手のポジションアップは続く。33周目から2コーナー先で出火し、止まった車両の消火、回収のため5周にわたってSCが導入される。その時点でapr LC500h GTは6番手。先導が終わると、40周目には1台を、41周目にはまた1台を、そして42周目にはさらに1台を抜いて5番手に。もう小高選手の勢いは止まらない。48周目には4番手に!
そして、レースが折り返しを迎えた50周目、apr LC500 GTは根本選手に託され、そのままゴールまで突き進むこととなっていた。しかし、タイヤ交換中にホイールナットが飛んでしまう大きなピットミスをおかしてしまい、なんとピットロスは14秒を要してしまう。これで8番手に退く羽目に……。
さらに62周目からは再びSCが。またしても出火した車両があり、13コーナーで止まっていたためだ。しかも、火の勢いは激しく、すぐに消火とはいかなかったことから、2周後には赤旗が出されてレースは中断。その後、強い雨に見舞われたこともあり、再開時間は延ばされてしまう。
3周におよぶSCの先導からレースは再開。この間に、1台がドライバーの体調不良により、ひとりで走り続けており、規定で許された最大周回の66周に達したため、ピットに戻ってレースを終えたことでapr LC500h GTは7番手に。68周目には1台をパス。だが、またも雨はやんで根本選手の履くウエットタイヤは音を上げかけていた。
そして、77周目にリヤタイヤは唐突にブレイク! 根本選手はふたつ順位を落とす。その後も我慢の走りを強いられたが、それも限界とチームは判断し、81周目にドライタイヤに交換。これで13番手まで落ちるも、そこから最後の根本選手による巻き返しが開始される。同様に堪えきれなくなった車両が現れるたび順位を上げ、コース上でも88周目に1台をパス。なおも前を追い続けるも、最終ラップで7番手。
もはや、これまでか……と思われたものの、最終コーナーでウエットタイヤのまま走り続けていた2台が接触! 土壇場でひとつ順位を上げたばかりか、コース上に留まっていた方もペナルティで降格となり、apr LC500h GTは5位という結果を得ることとなった。
最後尾からのレース開始だっただけに、22台抜きを果たした格好ではあるが、たらればを許されるなら。きっとまた違った結果も見えていただろう。さらに気まぐれな天候変化がなかったら。ただ、apr LC500h GTそのものの、真価が明らかになったのは間違いない。これを自信にも、希望にもして3週間後、8月28〜29日に控えるシリーズ第5戦に臨みたい。次なる戦いの舞台は鈴鹿サーキットだ。
嵯峨宏紀選手
「チームのミスなんですけど、タイヤ交換で致命的なミスがあって、小高選手がすごく良いペースで走ってくれたのに、それがチャラになってしまって。そもそもガソリンのミスがあって、失格になってしまったことがあり、最後尾からスタートしなければならなかったという……。何か根本的に足りないところがあって、勝つまでは何度も全員で振り返りをする必要があると思います。今年新車のLC500hは速くなってきたし、ドライバーも強いし、勝てる道具は揃っていると思いますが、やはりヒューマンエラーが毎回発生する問題が大きいと思うので、そこは徹底的に対策していかないと、本当に。応援してくれている方々に、申し訳ない気持ちです」
小高一斗選手
「難しいコンディションでしたが、僕らにが思う以上にブリヂストンタイヤのパフォーマンスが高かったですし、僕のスティントは完璧だったという自負もあります。その後、ピットのミスだったり、今年そういうことが必ずお決まりの様に出ているところが、運営の問題だけではなく僕たちの課題なのかとも思います。昨年までマシンで苦労している間に、レースに勝つためにやるべき気持ちが弱くなったのかと思います。速いだけだと勝てないということだとも思うので、もう少しチームのみんなと、勝つことにもう少し意識を傾けていく必要があります。次に向けて、もっと良いレースができればと思っています」
根本悠生選手
「たくさん乗らせていただいて、本当にありがたい限りです。でも、ウエットでのタイヤの経験はなくて、第2戦の時のFCYテストでしたか、一瞬だけだったんです。自分としては、けっこうタイヤを我慢して使っているイメージだったんですが、突然リヤタイヤが沸いてガーンとグリップが落ちちゃって。あと3周、あのペースでドライタイヤに換えられていたら、もっと違ったかなと思うので、チームには僕の経験不足で迷惑かけてしまいました。前向きにとらえると、僕の中ではあのぐらい行くと、タイヤに厳しいというデータは取れました。その後ドライに換えて、順位を取り戻せたから良かったし、自分のミスを自分でカバーした感もありますが、そこは素直に経験不足を認識して、今日のデータをもとに、もっと良くできるように頑張ります」
金曽裕人監督
「予選はガソリンの件で失格になってしまい、本当に申し訳ありませんでした。そんな状況において、小高選手があれだけのパフォーマンスで、27台中の4番手まで上がってきてくれました。最後尾から表彰台に上がれば美談にもなるし、応援下さる皆様の士気も上がるので、それを目指してレースをやりましたが、ピット作業時にミスがあって14秒ロスしてしまって。それで5位までしか行けなかったです。27位から5位って素晴らしい結果じゃないかって、言ってくれる優しい応援団の方はいますが、僕のなかでは反省ばかりです」
「aprはクルマを作って、コンストラクターをやるのは評価されているかもしれないけど、ここ最近マシンの速さを生かせず結果が付いてこない。ガソリンで失格、ピットミスの件も含めて、たくさんの皆様に多大なるご迷惑をかけ毎戦、皆様に謝罪が現状。どうやってクルマ以外の勝つためのパフォーマンスを伸ばすのかを、もっと違う側面から見て、僕が初心に戻り意識とオペレーションを変えていかないといけない……。スーパーGTは世界でも最高峰と言われるレースであり、超プロ集団で全チームが運営しているので、速さだけでは勝てません。だからもし、3番手からスタートしても、果たして今のままで勝てたのかは疑心暗鬼です」
「これが正直な我々の実状と今回の流れでした。ですが、チームワークは良いですし、修正する速さもあるはずなので次戦の鈴鹿は改善して挑みます。今回のレース、良かったこともありましたが、反省の方が多く本当にすみませんでした。鈴鹿は、褒めて頂ける結果に向け全力を尽くします」
