TEAM KUNIMITSU 2023スーパーGT第4戦富士 レースレポート
RACE:2023 AUTOBACS SUPER GT Round4 FUJI GT 450km RACE
DATE:予選:2023年8月5日 決勝:2023年8月6日
CIRCUIT:富士スピードウェイ(静岡県)
WEATHER:予選:晴れ/ドライ 決勝:雨/ウエット
RESULT:公式練習:7番手 予選:6番手 決勝:6位
今シーズン前半戦最後の舞台を迎えたスーパーGT。8月5、6日に富士スピードウェイで繰り広げられた450kmの戦いで、チームクニミツのNo.100 STANLEY NSX-GTは予選6番手からスタートを切り、3位でチェッカー。しかし、レース後に『給油中のタイヤ交換』の違反が判明。レース結果に40秒のタイム加算ペナルティを受け、6位となった。
◎予選日:
前大会からおよそ2カ月のインターバルを終えて迎えた第4戦。今シーズン3度目の450kmレース、また富士では2度目の100周の戦いとなるだけに、チームは綿密なレース戦略を立てて臨むことになる。
午前9時からの公式練習は、気温31度、路面温度38度でスタート。真夏の一戦に位置づけられる今大会だけに、セッション後のFCYテスト、さらにサーキットサファリに向けて、34度/46度まで上昇。タフなコンディションの中で、いかに自分たちのパフォーマンスを引き出すかが大きなカギとなった。
GT300クラスとの混走セッションでは、まず山本尚貴選手がNo.100 STANLEY NSX-GTに乗り込み、持ち込みのセッティングを確認。スタートから50分近くドライブを担当した。また、牧野任祐選手は、GT300クラス混走枠からその後のGT500クラス専有枠でもステアリングを握り、午後からの予選に向けて調整を重ねた。なお、チームベストタイムは山本選手が刻んだ1分29秒572で、7番手だった。
雲が多いものの、青空が広がった富士スピードウェイ。この時期にしか目にすることができない“雪のない富士山”も姿を現し、夏休みのレース観戦にインパクトを与えた。
15時53分、GT500クラスのノックアウト予選がスタート。気温32度、路面温度 43度のコンディションとなり、午前中よりも低い数値を示すことに。Q1のアタックでは、牧野選手が出走。セッション開始とともにコースに向かった。装着したタイヤのポテンシャルを引き出すべく、タイミングを見計らってチェッカーラップの周にベストタイムを叩き出した牧野選手は、1分28秒251をマーク。44kgのサクセスウェイトを物ともせず力強いアタックで4番手通過を果たした。
上位8台によるラストアタックQ2。山本選手が午後4時31分からのアタックに臨む。気温30度、路面温度39度とQ1よりもさらに温度が下がる中、満を持してアタックに臨んだ山本選手。惜しくもセクター2でわずかにタイムを伸ばせず、1分28秒295のタイムに。6番手から決勝を迎えることになった。
予選日について、「サクセスウェイトが重い中でも、チームとしてうまく作戦を組み立てることができた。明日は天気がわからないが、いい戦いがしたい」と山本選手が振り返ると、牧野選手は「いい予選でした。正直、Q1を突破するのは難しいとも思っていました。決勝は雨絡みになりそうなので、5位くらいになりそう」と“予想”を立てた。
“サクセスウェイト”というハンデを負うNo.100 STANLEY NSX-GT。戦う条件が厳しい今大会では、着実なレースを遂行することが最重要であることに違いはない。一方、天候の変化次第で結果にも大きな変化があるとも考えられるだけに、450km、100周のレースで粘り強い戦いをするのみだ。
◎決勝日:
前日の予選日とは一転、朝から鉛色の空が広がった決勝日。サポートレース時からポツポツと雨が降り、恒例のフライトパフォーマンスもキャンセル。決勝もウエット レースになる可能性が高まった。ところが、12時15分からのウォームアップ走行では晴れ間が戻るなど、先を読むのが極めて難しいコンディションに。実際、スタート進行中の午後1時ごろには再び雨が降り始め、完全にウエットコンディションに変わってしまった。
天候悪化により、13時45分からの静岡県警の白バイとパトロールカーによるパレードラップもキャンセル。また、レースもセーフティカーが先導する形でスタートとすることになる。水煙が高く上がる中で全車が2周を消化、3周目から決勝レースが幕を開けた。
No.100 STANLEY NSX-GTのスタートドライバーを務めたのは、牧野選手。4周目には同じNSX-GTの8号車を抜いて5位へと浮上。しかし、すでに上空から雨は降っ ておらず、路面もどんどんドライアップするコンディションとなり、コース上では激しいポジション争いが繰り広げられた。
牧野選手はタイヤマネージメントに奮闘するが、思いの外ペースが落ちる展開に。そこで12周終わりでピットインを断行。ウエットからドライタイヤへと交換するとともに給油作業を行い、義務化されているピットストップの1回目を消化した。
12位から再び追い上げを始めたNo.100 STANLEY NSX-GT。牧野選手は、タイヤに熱が入ると次第にペースアップし、ポジションアップに勤しむ。
17周目には9番手まで復帰すると、前を走るGR Supraの38号車を射程距離に捕えつ つ、逆転のチャンスを見計らった。38号車との差はほぼ0.5秒から1秒内。
それが周回を重ねる中でさらに詰め寄ったが、逆転には至らず。異なる車両、サクセスウェイトなどの“条件の違い”が大きく立ちはだかることとなった。
そんななか、レースは35周目の時点でGT300車両が炎上。煙を上げて2コーナー立ち上がりでクルマを止める。ここでセーフティカーが導入され、レースは“振り出し”へ戻ることに。
その後、41周目にグリーンフラッグが振られてレースは再開。9番手から再び前方車両を猛追する走りが続いた。また、46周を終えるとルーティンのドライバー交代に向かうチームが出始める。
各チームの戦略の幅が広がるなか、No.100 STANLEY NSX-GTは55周終わりでピットへクルマを戻し、牧野選手から山本選手へと交代。
奇しくも前を走っていた38号車も同じタイミングでピットへ帰還したが、先にピットロードへ向かったのはNo.100 STANLEY NSX-GT。コース復帰後は新たに8号車を追いかけ、7番手から周回を重ねた。
レースは残り3分の1が近づくなか、66周目の13コーナーで再びGT300車両の火災が発生する。すぐSCの導入となったが、車両からは火柱が上がり、なかなか消火作業が進まない。結果、午後3時43分に赤旗が提示され、レースが一時中断した。
メインストレートでは車両が待機していたが、サーキットには再び雨が落ち始める。また、近隣での落雷が報告されたことを受け、レース再開は2回にわたり延期に。ようやく午後4時30分にセーフティカー先導によるレースが再開となった。
なお、再開を前にウエットタイヤへの交換が認められており、No.100 STANLEY NSX-GTは、ハードタイプのタイヤ装着を敢行する。これは、チェッカーに向けてコンディションが回復することを先読みした英断でもあった。
SCランからレースがリスタートした直後は、タイヤの違いからポジションダウンを強いられたが、タイヤに熱が入って発動し始めると、山本選手が状況をしっかりと見極めて逆転のチャンスを紡いでいく。
一時は入賞圏外であったNo.100 STANLEY NSX-GTだったが、ひとつ、またひとつと順位を引き上げ、92周目にはNSX-GTの64号車をパスして5番手へ。
さらに38号車、NSX-GTの17号車との三つ巴となり、表彰台が一気に近づいた。山本選手は、まるでジェットコースターのような激しい展開の変化を味方に怒涛の追い上げを続け、94周目に3番手まで浮上。また、チェッカー直前まで続いた64号車との攻防戦を凌ぎ、3位で大波乱のレースを終えることとなった。
しかしレース終了後、No.100 STANLEY NSX-GTに対し、『給油中のタイヤ交換』違反が判明。そのペナルティとして、暫定結果に40秒のタイム加算が適用された。これにより、No.100 STANLEY NSX-GTは6位という結果に終わっている。
◎小島一浩監督
「まずは、ペナルティを受けた事により表彰台を逃してしまった事に応援いただいているスポンサー・関係者の皆様、そしてファンの方々にお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした」
「厳しいコンディションのなか完璧な仕事をしたドライバーのふたりにも申し訳なかったと思います。惜しむべくは裁定がレース中に出ていたら、まだ挽回出来るスピードがあったかと思うと残念です」
「今回は天候に翻弄されるレース展開でしたが、1回目のピット以外は予選、決勝通してチームはいい仕事をしてくれました。点差は拡がってしまいましたが、ランキングは上がりましたし、残りのレース数を考えても追い上げられる位置にいますのでチーム一丸となり全力で臨んでいきたいと思います」
◎山本尚貴選手
「最後のピットストップでは、ハードのウエットタイヤを選択しました。他車はミディアムを選んだということを耳にしていたのですが、あの状況で、もう雨雲も来ないとチームから無線で聞いていたし、自分でも調べたのですが、最後には路面が乾いていくだろうと思いました。リスタート直後は、かなりキツかったですね。ただ、しっかり路面に合うようになってからは逆転することもできました。いいクルマを作ってくれたチームには感謝しています」
◎牧野任祐選手
「ウエットタイヤでのスタートでしたが、まずはタイヤを持たせないといけないということを意識して走っていました。しかし、思った以上にタイヤが持たず、厳しい展開になりました」
「その後、ドライタイヤに換えてからも、ペースとしては悪くはなかったのですが、どうしても周りとのクルマのコンディションとの違いで、抜くまでには行きませんでした。なので、途中からは燃費優先の走行に切り替えて周回を重ねてきました。後半、山本選手のスティントは大変だったと思いますが、最後に素晴らしい追い上げを見せてもらうことができました」