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F1 ニュース

投稿日: 2020.05.10 07:15
更新日: 2020.05.10 07:34

今だからこそ語れるF1黒歴史。F1速報創刊30年本からシューマッハーとアロンソ、ふたつのニュースを紹介

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F1 | 今だからこそ語れるF1黒歴史。F1速報創刊30年本からシューマッハーとアロンソ、ふたつのニュースを紹介

 2007年のシーズン開幕時、マクラーレンにはすべてが揃っているように思われた。エイドリアン・ニューウェイが2年前にチームを離脱したなかで作り上げたベストマシンMP4-22、フェルナンド・アロンソと新人のルイス・ハミルトンというベストドライバーコンビ。そしてメルセデスというベストエンジンもある。

 潤沢な予算をもとに磨き上げられた武器と、ミカ・ハッキネン在籍時代にチャンピオン獲得を経験した組織力があれば、ロン・デニスのチームの成功は約束されたもののように思われた。

 一行が第11戦ハンガリーGPを迎えた際、選手権暫定トップのハミルトンはアロンソに対し2ポイント、さらに3位のキミ・ライコネンに対しては18ポイントもの差を築いていた。ひとつ付け加えておきたいが、当時は1レースで最大10ポイントしか計上できなかった。

 コンストラクターズ選手権ではマクラーレンがフェラーリに12ポイント差をつけており、再びのタイトル獲得へ突き進んでいた。しかもハンガロリンクでのプラクティスが始まると、フェラーリにはマクラーレンに拮抗する材料も見えてこない。

 ところが予選の最終セッションで、マクラーレン勢は砕け散った。計画では、アタックまでに少しでも多くのラップを走って燃料を消費し、先にアロンソが暫定ポールポジションを狙うという作戦だった。

 ところがハミルトンはアロンソを先行させるのを拒んだ。そこでアロンソはチームメイトより1周早くピットインし、新しいタイヤに交換した後もピットに残り、ハミルトンの2回目のアタックが時間切れになるまでそこに居座ったのだ。モナコGPからくすぶっていたふたりの争いはついに燃え上がった。こういった衝突を解決するのに一番向いていないのがデニスだ。

強力なライバル関係となったアロンソとハミルトン。その意識がエスカレートし、コース上でお互いを妨害し合うことに
強力なライバル関係となったアロンソとハミルトン。その意識がエスカレートし、コース上でお互いを妨害し合うことに

 アロンソにペナルティを科すよう、ハミルトンは個人的にチャーリー・ホワイティングへ電話をかけた(実際そのとおりになった)。一方のアロンソは、フェラーリへの産業スパイ行為が疑われるとして、FIAに訴えるとマクラーレンを脅しにかかった。

 そして、それがきっかけとなりフェラーリで一線から退けられたことを不服としたナイジェル・ステップニーが、F2007の設計図をマクラーレンのチーフデザイナーであるマイク・コフランに流していたことが明らかになったのだ。コフランはプレッシャーに苛まれた末、フェラーリから複数のエレメントをコピーしマシン開発に採用していたが、マクラーレン内部でその行為に気づいた者はほとんどいなかった。

 この事態を招いて驚いたことに、デニスは自らマックス・モズレーに電話をして(彼が最も苦手なことだが)状況を説明すると、自分も含めチームはコフランの行為に気づいていなかったと主張した。

 かねてからデニスのことを毛嫌いしていたモズレーにとっては、長いこと待ちわびたチャンスが訪れた。マクラーレンに1億ドルという前例のない高い罰金を科し、07年のコンストラクターズ選手権から除外するとしたのだ。罰金を支払ったのは無論メルセデスであり、これが火種となって10年にはマクラーレンとのワークス契約を放棄。ブラウンGPを購入し実に55年ぶりにワークスとして復活することになったのである。

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『F1速報の30年』では、こういった当時のF1ニュース再検証の他、本誌執筆陣によるF1速報から見た歴代ドライバーやシーンの再分析、本誌の成り立ちなど「日本のファンが体験してきたF1の30年」を独自の視点から振り返った1冊となっている。

 また、津川哲夫/川井一仁/浜島裕英氏による対談で、ここ30年のベストドライバー、ベストマシン、ベストレースを決定。中嶋一貴と小林可夢偉がF1に一緒に参戦していた頃の回顧対談も収録。

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