更新日: 2024.06.10 14:36
apr GR86 GT 2024スーパーGT第3戦鈴鹿 レースレポート
2024 AUTOBACS SUPER GT Round3
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km
6月1日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:1万7500人
6月2日(決勝)
天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:2万5000人
タイヤとクルマのマッチングは永遠のテーマ。今回見えた課題は、必ず次戦に繋げる
高速旋回が続く鈴鹿サーキットはハイダウンフォースの車種が有利であり、JAF-GTを前身とするGTA-GT300車両が比較的得意とするコースだ。30号車のapr GR86 GTにとっては、2022年第5戦で3位表彰台獲得、2023年第3戦でも9位入賞を果たした地である。
しかし、エンジン的には全開率が国内一のサーキットで、ピークパワーの差も出やすい。現在のFIA-GT3車両は大きな体躯を活かしてダウンフォースが強力で、エンジンパワーも秀でている。実際、過去5年で8回開催された鈴鹿大会は、FIA-GT3車両が7回制しているのだ。
30号車にとっては、今季フロントタイヤのサイズを710から680に変更して初めての鈴鹿戦。今大会は給油をともなう2回のピットが義務付けられた3時間レースであり、第1ドライ
バーの永井宏明、第2ドライバーの小林利徠斗、そして第3ドライバーに織戸学という布陣で、チャレンジングな一戦に臨む。
公式練習/13位 6月1日(土)9:45〜11:30
公式練習、セッション開始時のコンディションは気温25度、路面温度34度。前日は台風の影響もあって曇り一時雨という天候だったが、好天に恵まれた。
30号車は今回、公式練習の使い方を変更した。これまでは永井もしくは織戸から走り始めてセットアップの基準を作っていたが、2023年のFIA-F4チャンピオンであり、今季もスーパーフォーミュラ・ライツに参戦して高いスピードレンジに慣れている小林からスタート。小林は3周目にこのセッションでベストタイムとなる1分59秒716をマークすると、5周でピットに戻り永井に交代。
織戸のチェック走行も含めてピットイン・アウトを繰り返し、セットアップを進めていく。走り始めにニュータイヤでアタックした小林は好感触を得ていた。しかし、周回を重ねるとアンダーステアが強くなる症状が発生。タイヤがコンペティティブな状況にあるなかで、今大会においてはヨコハマタイヤが劣勢にあったようだ。
公式練習、ヨコハマ勢のトップタイムは12番手で、30号
車はヨコハマ勢の2番手となる総合13番手というリザルトだった。ニュータイヤでの手応えを感じつつ、FCY、サファリの時間も使って予選に向けたセットアップを詰めていくことになった。
公式予選 6月1日(土)
Q1 B/9番手 15:00〜15:10
Q2 Gr.2/7番手15:53〜16:03
総合順位20番手
予選Q1は30号車も出走するグループBからスタート。気温は公式練習と変わらず25度だったが、路面温度は6度増しの40度に上昇していた。Q1を担当した小林は、計測4周目でアタックラップに入る。S字をリズムよく駆け抜け、セクター1で好タイムを記録。
しかし、デグナーふたつめでアウト側にオーバーシュート。四輪脱輪によりタイム抹消となってしまった。小林は翌周に再度アタックするが、タイヤのピークグリップは過ぎており、また少し安全な走りを優先したことで、2分00秒094は9番手タイムとなってしまった。
Q2はグループ2に永井が出走。Q1の脱輪はタイヤにダメージを与えるほどのものではなかったが、ユーズドタイヤでアンダーステアが強くなる傾向にある症状は改善し切れていなかった。2分1秒592はグループ2の7番手。Q1とQ2の合算タイムによる20番グリッドから、決勝では追い上げを図る。
永井宏明選手
「公式練習ではタイヤの摩耗に比例してアンダーステアが強くなる傾向にありました。予選までに少しは改善できたのですが、僕が担当したQ2では解消し切れていなかったですね。バランス的に、もうちょっと曲がる方向にできればよかったなと。でも、確実に良い方向には進めているので、決勝では追い上げていけるのではないかなと思っています」
小林利徠斗選手
「アタックラップ、セクター1までは調子が良くて『結構良いな』と思っていた矢先にミスをしてしまいました。翌周にもう一度アタックしましたが、脱輪しないようにという状況で……。クルマとしては上位を狙えるポテンシャルは確実にあったので、きっちりまとめられなかったのは、クルマを仕上げていただいたみなさんに申し訳ないですし、ドライバーとして悔しいし恥ずかしいです。決勝では、クルマの良さを活かせるように頑張ります」
織戸学選手
「クルマ自体の仕上がりは悪くないんだけど、今回はヨコハマタイヤ全体がコンディションに合ってない感じでロングランに課題がありますね。僕たちとしては、思ったよりも温度が上がらなかったのが原因。Q1の小林選手はリズムにうまく乗れなかったみたいで、ちょっとミスしてしまったみたい。スピードはあるから、あとはもうちょっと経験を積むことが必要かな。Q2の永井選手は、あの状況で良い走りだったと思いますよ」
金曽裕人監督
「公式練習ではこれまでとメニューを変えて、最初に小林選手が乗って、そのフィードバックから永井選手がセットアップを進めて、織戸選手が確認してというやり方にしました。それくらい小林選手への信頼度が上がっているということ。でも、Q1は経験不足というか、もう少し置きにいったアタックでも良かったかな。四輪脱輪がなければQ1上位突破は楽勝だったはず。それくらいいけるクルマだったということでもありますけど、今回の予選に関してはダンロップ、ブリヂストン、ミシュランが強かったですね」
決勝レース(85周)/19位 6月2日(日)13:38〜16:39
13時30分、2周のフォーメーションラップを経てレースがスタート。30号車の第1スティントは、序盤からのポジションアップを期待して小林に託す。しかしオープニングラップ、ヘアピンの立ち上がりでイン側に並びかけてきた車両に接触されてコースオフ。25番手まで一揆に順位を落としてしまった。
タイヤに大きなダメージはなかったが左側のカナードとチンスポイラーの左角が損失。小林のペースは悪くなかったが、空力的にもアンダーステア状態にもなり、そもそも集団の後ろまで下がってしまったのは厳しい状況だった。鈴鹿は抜きにくいサーキットであるうえ、最高速に勝るFIA-GT3を相手に難しい展開を強いられる。それでもGR86の軽快さを武器に、小林はコース上で2台を攻略。30周してピットに戻り、織戸に代わった。
第2スティントの織戸は、32周目に30号車のベストタイムとなる2分03秒166をマークするなど、速いペースで追い上げを図る。しかし、10周を過ぎたあたりからアンダーステアが厳しくなりラップタイムが落ちていく。これは56周目に代わった永井の第3スティントでも同様だった。永井も代わってからの10周前後は好タイムを刻むが、その後タイムダウン。タイヤのグリップが落ちるというより、鈴鹿の高荷重をタイヤが支えられていない症状と、空力的なアンダーステアのダブルで、コーナリングの姿勢が安定せず、コントロールに苦闘していた。
それでも、30号車はスターティンググリッドからひとつ順位を上げて19位でフィニッシュ。車両とタイヤの合わせ込みという課題は残したが、完走を果たし、フロントタイヤ680サイズでのデータを収集することができた。およそ2カ月後の第4戦富士、さらに第5戦鈴鹿に繋げるべく、チームもドライ
バーも前を向く。
永井宏明選手
「スティントの中盤になると、クルマがフラフラになってコントロールするのが非常に大変でした。タイヤとフロントダウンフォースが減ったのが原因というのもありますが、全体のバランスだと思うので、セットアップでももっと速く走れるようにできたかもしれないと思います。今回は苦しいなかでもなんとか走り切って完走できたので、次に向けて仕切り直したいと思います」
小林利徠斗選手
「1周目のヘアピン、イン側から抜きにきた車両と立ち上がりで横並びの状態だったのですが、そこで当てられてコースアウトし、順位を落としてしまいました。そこからのペースは悪い感じではなかったのですが、コーナーが速くて直線加速が遅いというクルマの特性上、バトルするのは難しかったです。それでもブレーキ勝負だったりうまく抜くことができたので、そこの駆け引きというのは今回ひとつ上達できたかなと思います。クルマは毎戦どんどん良くなっているので、それが結果に繋がることを信じて、またベストを尽くせるように頑張ります」
織戸学選手
「今回はヨコハマタイヤのロングランは厳しい状況でしたね。今年はGT300には追加重量があって、高荷重の鈴鹿ではフロントタイヤが耐え切れず、コースに留まるのがやっとみたいな雰囲気でした。燃料搭載量が多い時は特に、ゴムがタレるというより、構造が重さに負けちゃう感じですね。ほかのヨコハマ勢はどのクルマも同じような状況だったと思います。重量対策は、今後の課題ですが、我々としてもひとつの経験を積めたので、次に繋げたいですね」
金曽裕人監督
「今回は小林選手からのスタートで、最初に良いポジションで織戸選手に繋げたかったのですが、接触もありドロップしてしまいました。結果的なことを言うと、今回のタイヤは一発のタイムは出る優れた性能はあったけど、燃料満タン時と、ロングディスタンスでは少々きつかった。決勝日の天気予報は雨というのもあって、ヨコハマのウエットタイヤのパフォーマンスは高いので雨待ちしていたところもあったけど、残念ながらドライのままでしたね」
「今年はフロントタイヤを680サイズにして、その精度がじわじわ上がってはいるけど、まだまだタイヤ屋さんと一緒にクルマを修正していく必要があります。コンペティションである限り、タイヤとクルマのマッチングというのは永遠のテーマですからね、次戦までに巻き返します」