更新日: 2024.09.27 12:53
apr GR86 GT 2024スーパーGT第6戦SUGO レースレポート
2024 AUTOBACS SUPER GT Round6
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県)/3.586km
9月21日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ウエット 観客数:8900人
9月22日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ウエット/ドライ 観客数:1万6000人
2台体制、レーシングコンストラクターの強みを発揮。二度のクラッシュを乗り越えて完走
8月31日〜9月1日に予定されていたスーパーGT第5戦鈴鹿大会が台風10号の影響により12月7〜8日に延期となったことで、後半戦の幕開けとなった第6戦SUGO。第4戦からおよそ1カ月半ぶりとなるSUGOラウンドは、前日まで続いた夏日の気候から一転して想定外の寒さとなり、さらに停滞する秋雨前線や低気圧の影響で東北地方は大雨の
予報が出されていた。
今季ここまで開催された4戦は、第3戦鈴鹿の決勝直前に行われたウォームアップ走行でウエット宣言が出されはしたが、本戦はすべてドライコンディション。雨となれば、今季初めてウエットタイヤでの戦いとなる。
apr GR86 GTが履くヨコハマのウエットタイヤは、今季からトレッドパターンを変更。テストでは好感触を得ていたが、気温に対する温度レンジの選択も含めて、チャレンジングな一戦になることが予想された。
公式練習/10位 9月21日(土)9:15〜11:00
公式練習開始時の気温は17℃、路面温度は20℃で、ウエット宣言が提示されるなかでスタート。午後の公式予選の時間帯は天候がさらに悪化する予報であり、公式予選が行われない場合、この公式練習のタイムが決勝のスターティンググリッドになる可能性がある。
apr GR86 GTは『予選モードでの公式練習』を見据え、前夜のうちにウエットセッティングで車両を仕立て、2スペックを持ち込んでいたウエットタイヤのソフト側を履き、小林利徠斗をコースに送り出す。走り始めの雨は小康状態だったこともあり、全車両が早々にアタックに入っていった。
その状況下でコースオフ、クラッシュが多発。雨脚が強くなった9時44分には、コンディション悪化のため2回目の赤旗が提示された。この時点での小林のタイムは13番手。9時53分に再開すると、小林はタイヤを温めながらフィーリングと限界を探っていき、13周目に全体で10番手、ヨコハマタイヤユーザーでトップとなる1分32秒011をマークする。
さらに小林は15周目、セクター2とセクター3で自己ベストを更新してタイムアップを狙うが、最終コーナーでオーバーシュート。左側面をガードレールにヒットさせ、グラベルに止まった。同時に別のコーナーで他車がグラベルストップしたこともあり、3回目の赤旗に。小林は自走でピットに戻ったが、チームは予選に向けて車両を修復するべく、apr GR86 GTはここで走行を終えた。
その後は雨脚が強くなったこともあり、apr GR86 GTのリザルトは変わらず10番手で公式練習が終了。車両の損傷は左側のボディカウルとアンダースポイラーのみのダメージで足まわりは大丈夫だったが、万が一のためにステアリングまわりの部品も交換、万全の準備で予選に備えた。
しかし、天候悪化によって午後の予選はキャンセルとなり、決勝は10番手グリッドからスタートすることが決定。スペアパーツへの交換をすでに終えていたが、細部の確認とカラーリングのために夜遅くまで作業を続け、サーキットに持ち込んだ状態まで車両を復元し、翌日の決勝に臨むことができた。
公式予選9月21日(土)悪天候のためキャンセル 総合順位10位
永井宏明選手
「予選が中止になったのは、お客様にとっても残念です。明日は10番手からスタートできますのでチーム全員で入賞を狙っていきます」
小林利徠斗選手
「予選が中止になるかもしれず、その場合は公式練習の結果がそのままグリッドの順位になる可能性があることは聞いていました。その公式練習では走り始めからクルマのセッティングもタイヤも調子が良くて、雨のアタックは初めてでしたが、安心して攻めることができました。ただ、最後は最終コーナーでアンダーステアが出てしまいクラッシュ。完全に僕のミスなので、本当に申し訳ないです。攻めるにしても、その攻め方をちゃんと考え直したいと思います」
織戸学選手
「走れそうにない雨量で、予選中止は良い判断だと思いますが、寒い中、大勢のお客様に予選をお見せできなかったのは残念です」
金曽裕人監督
「今回は雨がザッと降ったり小康状態を繰り返す公式練習で、タイヤの選択とタイムを出すタイミングが明暗を分けましたね。僕たちはソフト側のウエットタイヤで走り始めたことで、早めにタイムを出せたのが良かったと思います。でも、ヨコハマユーザーのなかではトップタイムでしたけど、コンディション的にはもっと低温レンジのタイヤが適していて、ミシュランとダンロップのタイムは見えなかった。小林選手の最後のクラッシュは、攻めた結果だからしかたない。懸念として残るのは、クラッシュの修復もあり、永井選手が全く練習できなかったことですね」
決勝レース(79周)/21位 9月22日(日)14:22〜16:33
日曜日も前日からの雨が降り続き、決勝に向けて設定されるウォームアップ走行は、30分ディレイの13時00分から開始された。apr GR86 GTは、前日走行できなかった永井宏明がステアリングを握る。しかし、前日の公式練習時より雨脚が少し強く、タイヤが温まりにくい状況にありSPアウトの立ち上がりでスピン。タイヤバリアに突っ込んでしまった。
車両がピットに戻ってきたのは、スタート進行でピットレーンがクローズになる10分前。前日のクラッシュと同様のダメージ、同じ箇所だったためスペアパーツはない。それでもチームはあきらめず修復作業に取りかかり、なんとかグリッドに並べることができた。グリッドでも作業は続き、破損部分はダクトテープで補修したが元通りの剛性は当然出せない。左側のカナードも1枚なく、アンダースポイラーもウイングも完全な状態では無かったが、なんとか走行できる状態まで復元した。
スタートドライバーは永井。フォーメーションラップは当初の13時30分から14時22分のスタートに変更されたこともあって雨脚は弱まり、ドライアップしていくことが予想されたためハード側のウエットタイヤを装着。セーフティカー先導から4周目にレースがスタートした。
エアロバランスが前後左右で違う状況で、とくにフロントのダウンフォースが出せず、マシンの挙動は終始アンダーステアだった。ドライアップしていくコンディションにあって、スリックタイヤに履き替えるタイミングでのピットを目指したが、フロントタイヤの摩耗が激しく、永井は29周目にピットイン。第1スティントと同じハード側のウエットタイヤで小林をコースに戻す。
だが、その後はドライアップが進んだことで、コンディションとタイヤがマッチせず、ペースを上げられない。小林は48周でピットに入りスリックタイヤに交換。周回遅れが確定していることもあり、無理はせず完走を目指し、21位でフィニッシュした。
10番手という好位置からのスタートで悔しい結果となってしまったが、apr GR86 GTは公式練習とウォームアップ走行、二度のクラッシュを乗り越えて完走を果たしたことが評価され、そのレースウイークに素晴らしいパフォーマンスを見せたメカニックに贈られる『ZFアワード』を受賞。修復作業には僚友apr LC500h GTのメカニックの協力もあり、レーシングコンストラクターとしての強みを見せることができた。
永井宏明選手
「かなり慎重にウォームアップ走行に挑んだのですが、グリップがなかなか出てこず一瞬でスピンモードになりクラッシュさせてしまい皆様に申し訳ないです。修復時間も限られていたので決勝はリタイアだと思えるほどでしたが、メカニックの素晴らしい頑張りでスタートができ、本当に感謝しています。クラッシュの影響でマシンバランスはアンダーステアで厳しかったのですが、今日は最後まで走り切れるマシンに修復してもらえただけで満足です。次こそ上位入賞のために全力で挑みます」
小林利徠斗選手
「公式練習のときも、ウォームアップ走行のときも、メカニックさんがクルマを直してくれたことに感謝しかありません。決勝での僕のスティントではバランスのズレはあったにしても、しっかり走れる状況でした。どちらかというと、ウエットでもスリックでもタイヤのグリップ感と消耗度合いがそのときのコンディションに合っていない状況だったのが大きかったと思います。そのなかでも、タイムの出し方、速いクルマへの譲り方など、甘すぎる部分があったので、そこは改善していきたいです」
織戸学選手
「レースがスタートするまでの短い時間の中で2台のメカニックが連携して修復。素晴らしいチームワークを目の当たりにできただけで、今日は満足、100点です!」
金曽裕人監督
「今回のレースは、わずかな時間でクルマを修復してくれた30、31号車のメカニックたちを称えたいですね。aprはクルマを作っている会社だから、僕が何も言わなくても、どうすればいいのか、すぐにメカニック全員が思い描いてみんな行動してくれる。誰一人、あきらめることなく、10分間でグリッドに並べてくれました。そしてドライバーのふたりも、最後まで走り切ってくれました。みんなよく頑張った! 格好良い! いい経験ができ、幸せでした」