更新日: 2024.09.30 20:58
GOODSMILE RACING & TeamUKYO 2024スーパーGT第6戦SUGO レースレポート
2024 AUTOBACS SUPER GT Round6
SUGO GT 300km RACE
■DATA
会期:2024年9月21~22日
場所:スポーツランドSUGO(宮城県)
観客:予選8900人 決勝1万6000人
予選:19番手
決勝:20位
獲得ポイント:0Pt
シリーズ順位:5位(28Pts)
台風10号の影響により第5戦鈴鹿サーキットが12月に延期された。このため、スポーツランドSUGOでのSUPER GT第6戦『SUGO GT 300km RACE』は、今シーズン5回目のレースとして開催された。しかしこの週末も秋雨前線と日本海に停滞した低気圧の影響を受け、みちのく宮城のサーキットは大雨に見舞われていた。
谷口信輝、片岡龍也の両選手がドライブする4号車グッドスマイル 初音ミク AMGのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)は、メルセデスAMG GT3の基本車両重量である1285kgに対しBoP重量の45kgと、速度抑制策として搭載する追加重量の39kgで、合計1369kgに達し毎度ながらヘビー級のグループとなった。またエンジン側でも、吸気リストリクター径が従来の34.5mm×2へと戻された。
さらに戦績に応じて加算されるサクセスウエイト(SW/ポイント分×2)は今シーズン搭載上限の50kg(昨年までのレギュレーションなら56kg)に達しており、GOODSMILE RACING & TeamUKYOが苦手な“S”の付くサーキットで、今大会も難しいレースになることが予想された。
9月21日(土)【公式練習】
公式練習 天候:雨
コース:ウエット
気温/路面温度:開始前17℃/20℃(9:00)
中盤16℃/19℃(10:00)
終盤16℃/19℃(10:30)
終了17℃/20℃(11:00)
この日は元々悪天候が予想されていたため、前日に行われた監督ミーティングでは、「(土曜日の)公式練習のタイムによって決勝のグリッド順を決定する可能性がある」と通達されていた。この通達により、午前9時15分から開始された公式練習では、悪天候の中ではじまったセッションにも関わらず開始と同時に全車が先を争うようにコースへ入り、少しでも良いタイムを計時しようとアタックをはじめ、『長めの予選』とも表現すべき様相を呈した。
セッション開始時のコンディションは本降りと言えるしっかりした雨量の雨で、気温17度、路面温度20度と、寒ささえ感じるほどであった。片岡選手もライバル同様にすぐさまコースインしたが、このレースに持ち込んだウエットタイヤの熱入れがなかなか進まない。そうこうしているうちに52号車(Green Brave GR Supra GT)がSPアウトコーナーの立ち上がりで姿勢を乱しクラッシュしたため、マシン回収とバリア修復で早くも赤旗中断となった。
約15分後にセッションが再開すると雨はますます強まり、セクター1で61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)と11号車(GAINER TANAX Z)が次々にスピン、他にもトラック上のあちこちでハイドロプレーニング現象(タイヤが水膜に浮き操作の効かない状態)に陥るクルマが続出したため、再開後10分も経たずに『雨の影響による』2回目の赤旗が掲示された。
雨が小康状態となった午前9時53分、走行が再開された。片岡選手は自身11周目に1分36秒695を記録し、暫定5番手までタイムを詰めていった。しかし、ライバルたちも次々とタイムアップしていき、ポジションはジリジリと下がっていった。
17周目に1分33秒711と自己ベストを更新したが、18周目ターン4のブレーキングで足元をすくわれるようにコースアウト、グラベルにスタックしてしまった。ほぼ同時に最終コーナーでは30号車(apr GR86 GT)がバリアにヒットしたため、3度目の赤旗中断となった。
その後FROによる牽引でグラベルを脱出すると、幸い深刻なダメージが無かったため片岡選手は自走でピットへと帰還した。ピットでメカニックにより改めて問題なく走行可能なことを確認すると、このタイミングでドライバーを谷口選手へと交代した。しかし午前10時31分、雨量増加によりまたも赤旗中断となり、谷口選手は本格周回わずか1周でピットへ戻されマシンを降りることとなってしまった。
その後、午前10時45分に予定から5分遅れでGT300クラスの専有走行が開始される事が宣言されると、再び片岡選手がマシンに乗り込んだ。ここまでの何度ものセッション中断で思うようなタイムアタックができていなかった4号車は、この時点でクラス19番手となっていた。午後の予選開催が危ぶまれていた事もあり、10分間の最後のセッションが始まると同時に片岡選手は予選のつもりでコースに飛び出す。
しかし22号車(アールキューズ AMG GT3)がすぐにクラッシュを喫して5度目の赤旗。午前10時55分から残り走行時間10分のままセッションが再開されるも6号車(UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI)が馬の背へのブレーキングで明らかにハイドロとわかる高速コースオフを喫しクラッシュして赤旗。これを以て公式練習は終了となってしまった。
天候は悪化の一途を辿り、その後のGT500クラス専有走行セッションと、FCY(フルコースイエロー)テストセッション、更に午後の公式予選もすべてキャンセルが決定され、翌日の決勝スターティンググリッドは事前の通達どおり、公式練習の結果で決められる事になった。この結果4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、翌日の決勝レースを、19番グリッドからスタートすることとなってしまった。
9月22日(日)【決勝】
天候:雨/晴れ
コース:ウエット/ドライ
気温/路面温度
スタート時(14:30)19℃/24℃
中盤(15:30)19℃/22℃
終盤(16:00)19℃/22℃
ゴール(16:30)19℃/21℃
前日からの雨は日曜午前中も降り続いていたが、予報によると天気は次第に回復するとされており、午後の決勝レース中に雨が上がると見込まれていた。大会運営は天候を睨みながら徐々にディレイを決め、正午に開始予定だったウォームアップ走行は最終的に1時間遅れで開始された。
朝ほどではないがまだしっかりとした雨が降るなか、ウォームアップセッションが始まった。しかし開始されてすぐに30号車がSPアウトコーナーの立ち上がりでコースオフ、赤旗が掲示されセッションが中断された。午後1時17分に残り時間10分で走行が再開され、4号車のステアリングを握っていた片岡選手はこのセッションを21番手タイムで走り終えた。
ウォームアップ中のセッション中断によりスケジュールはさらに7分ディレイし、午後1時45分、片岡選手は決勝レースに向けてグリッドへと向かった。
サーキット上空は徐々に明るさが増し、雲の切れ間からわずかに空も見えるようになっていた。天気予報や気象レーダーでも雨雲は去ることが示されており、決勝レース最大延長時間も予定より15分延長されて午後4時45分とされたことで、レース中盤以降はドライ路面での勝負になる可能性も出てきた。
不本意な19番手グリッドから上位ゴールを狙うには、“ギャンブル的な戦術”を採用するしかない……という状況のGSRは、オーバーテイクの難しいSUGOのコース特性なども考慮し、スリックタイヤでのスタートを決断。レインタイヤ装着のライバル達のなか、ウエットコンディションの序盤をドライタイヤで耐え、ドライタイヤ装着のためにライバル達がピットインする中で上位浮上のチャンスを狙う作戦だ。
午後2時22分、短縮されたスタート進行を終え、全車グリッドを後にした。2周のフォーメーションラップを終えた後もセーフティカー(SC)の先導は続き、路面状況を確認したレースコントロールが4周目にSCランを解除、レースがスタートした。
“ダンプ路面”と呼ぶにはまだウエット寄りの状況だったことや、グリップの発動も難しいタイヤセットの影響もあり、4号車と、同じくスリックを装着して16番グリッドからスタートしていた18号車(UPGARAGE NSX GT3)は、一気にポジションを失ってしまった。
4号車は25番手、18号車は26番手までポジションを下げると、8周目には早くもGT500クラスの先頭集団にラップダウンされ、その後18号車にも先行を許して4号車は26番手、つまり最下位までポジションを落としてしまった。
期待したペースでラップタイムが上がらずレインタイヤを履いた先行車勢についていくこともできない状況だったが、それでも当初は1分40秒台後半だったラップタイムは徐々に上がって21周目には1分31秒703まで伸びていた。
しかしここで25号車(HOPPY Schatz GR Supra GT)と96号車(K-tunes RC F GT3)の接触アクシデントが発生、コース脇に停車した25号車の回収のためにSCが導入され、やっと温まりかけた4号車のドライタイヤは再び冷えてしまった。
29周目にレース再開、片岡選手は再びタイヤ熱入れを始めるが、なかなか温まらない。そんな状況で自力でのオーバーテイクはままならないものの、リタイア車両やスリック換装のためのピットインに向かうチームの動きもあり、21番手までポジションは回復、四苦八苦の熱入れの末にラップタイムも1分28秒台まで上げるなど、粘りのドライブを見せる。
しかし20番手まで浮上した39周目、11号車(GAINER TANAX Z)がレインボーコーナーでクラッシュしてFCYに、車両回収が必要となりそのままSCへと切り替わった。隊列整理と長引くスロー走行を経て、タイヤはまたも冷えてしまった。46周目にレースがリスタートすると、片岡選手は47周目に1分27秒3、48周目に1分25秒084までタイムを上げ、50周目には16番手となった。
ここでチームはドライバー交代のために片岡選手をピットに戻し、違うスペックのスリックタイヤに交換した後、谷口選手をコースへ送り出した。
20番手でコースに入った谷口選手は、片岡選手同様にタイヤの熱入れに手を焼くも、59周目に1分29秒630を記録すると、そこから徐々にペースを上げていく。終盤には、65周目に1分24秒339、69周目に23秒609、70周目に23秒371と立て続けに自己ベストを更新していった。
最終盤、73周目には1分22秒846のこのレースの自己ベストをマークしたが、最大延長時間目前に74周でチェッカーを受け、トップから5ラップダウンの20位でレースを終えた。ギャンブルの目論見は脆くも外れ、非常に厳しいレース結果となってしまった。しかしこのレースの後もランキング首位と36点差ながら5位に留まることができている。
続く第7戦は開催ラウンド入れ替えの影響もあり、10月中旬にシーズンでもっともウエイトを搭載した状況で九州決戦『AUTOPOLIS GT 3Hours RACE』を迎える。タイヤへの攻撃性が高いことで知られるオートポリスの地で“フルウエイト”の長距離イベントとなるだけに、荒れ模様の耐久戦でつねに強さを発揮してきたチームとして巻き返しを狙いたいところだ。
■チーム関係者コメント
安藝貴範代表
「戦略上の判断に関しては、そんなに外していないんですよね。路面は乾いていたワケですから。ただ、レコメンドどおりギャンブルしたタイヤが残念ながら期待どおりでなく機能しなかった。そこが厳しかったということです。(スタートで)ウエットタイヤを履いていたらもう少し良い位置にいた可能性はあるけれど、それでも10位以内に入れたかな……ぐらいですね。ギャンブルなので、いいハズしっぷりでした。見事にハズしてストレスしかない(苦笑)」
「最後のタイヤは、少しテストに近いような状態で敢えて使ったので。谷口が最後にベストを連発してくれましたが、温まるまでに15周ぐらい掛かってます(苦笑×2)。暑いときは相対的な差が縮まる感はありますが、寒くなるとやはり相手の強さが際立つようになってくる。次のオートポリスではライバルも含めフルウエイトでの勝負になりますが、とにかくタイヤがハマってくれるといいですね」
片山右京監督
「雨で予選が出来ない可能性が知らされていたから、フリー走行での順位が採用されるかもしれない……ということでみんな頑張って走ったけれど、その段階で少しセッティングが合っていなくて苦しんでしまいました。序盤にボンとタイムが出たところは『ああ、良いかな』と思っていたのですが、そこから少し伸び悩んで。その間にタイムが接近戦のところで前に行かれてしまったから、苦しい展開になりました」
「結果的にギャンブルせざるを得ない状況に追い込まれましたが、それら全部を踏まえても、今回はダンロップやミシュランが先行して『ちょっとこれ……全然、マズいぞ』という状態。レースで仮にギャンブルが成功していても、(良くても)9位か、(せいぜい)11位というのが限界で、本当に『マズいぞ』と。ギャンブル自体を外したショックもデカいですけど(苦笑)ちょっと、それ以前のところに課題がありますね」
谷口信輝選手
「これだけ散るのは珍しい。19番手からポイント圏内まで行けるプランもあまりないので、博打に出たんですが、全然良い方向には当たらず。僕の出番前には『2~3周遅れ?』みたいな感じでした。片岡が履いているタイヤ(種類)をそのまま引き継いでもイケそうでしたけど、せめてテストができないか、ということで違うタイヤを履いた。何か差はあるかを見ていたんですが、より硬いゴムでコースインしたので、もう温まらなくて“地獄絵図”でした」
「お腹ペコペコなのに『今から炊飯器のスイッチ入れます』みたいな。『いつご飯炊けんだよ』って(苦笑)。最後は路面も乾いて、やっとタイヤに熱が入ってからは、それなりに良いペースになったんですが、でも勝負権はなかったですね。だから(連勝した)65号車とチームがさすがですね。次のオートポリスも我々はBoP的に厳しいと思いますが、できる限り頑張りたいと思います」
片岡龍也選手
「タイヤ選択をギャンブルしたつもりでしたが、結果から言うとタイヤに対する情報不足。チームとしての理解力不足なのか、コミュニケーション不足なのか。わからないですけど、少なくとも現状『こうであろう』というタイヤに対する予測が掛け離れ過ぎていた。我々がギャンブルと思ってやったことが、ギャンブルでもなんでもなく。ただもう……全然アテの外れたワケのわからないことをしていただけに(苦笑)」
「そういう意味では、まったく面白味も出せないし、他の人のレースを邪魔してしまって。応援してくれているファンからしても『何してんだよ!』と思うかもしれない……すごく『得るものゼロ』のレースでした。ただ、このフラストレーションを次のレースへの集中力にして。寒くなってくると基本弱いからアレですけど、まだここから3戦あるので。流れを掴んでいきたいですし、次はもう少しまともなレースをしたいかなと思います」