更新日: 2018.02.15 18:47
【ポルシェジャパン】ポルシェ カレラカップ ジャパン 2010 合同テスト レポート
ポルシェ カレラカップ ジャパン 2010 合同テスト レポート
ポルシェ ジャパン株式会社(本社:東京都目黒区 代表取締役社長:黒坂 登志明)とポルシェ カレラ カップ ジャパン (PCCJ) 委員会は、ポルシェ カレラカップ ジャパン 2010年シリーズの合同テストを、富士スピードウェイ(静岡県)にて2010年3月16日(火)、17日(水)に開催いたしました。
恒例のPorsche Carrea Cup Japan(以下PCCJ)の合同テストが、昨年の鈴鹿サーキットから、富士スピードウェイに場所を移し、3月16〜17日の日程で開催された。2日間の合同テストでは、1時間×4枠の走行セッションだけでなく、エンジニアによるコクピットドリル、ドライビングアドバイザーを務める影山正美氏によるインカー映像を使用したドライビングレクチャー、チームや関係者によるキックオフパーティーなど、濃密な時間が用意されている。たっぷりとマシンのセッティングを詰められるだけでなく、ニューカマーにとってはシーズン前にPCCJの雰囲気を肌で感じられる貴重な機会となる。
2010年最大のトピックは新型911GT3カップの導入だろう。わずか世界7カ国のカレラカップのみに導入される新型911GT3カップは、パワーユニットを3.6Lから3.8Lに拡大。最大出力も30馬力向上し、450馬力を実現。足回りはラバーブッシュからオールピローボール化されたことで、よりタイトなコーナーリングが可能になった。フロントにオーバーフェンダーを採用し、リヤウィングも大型化したことで、ダウンフォースも増大。見た目の迫力も大幅にアップしている。
「パワーが上がったことで最高速が相当上がった。スーパーGTのGT500クラスと変わらないトップスピードが出せる。ドライバーにとってはコーナーリング時のブレーキングが鍵になるでしょう。富士のようなサーキットであれば、2.5秒くらいタイムが上がるかもしれない」と、影山氏は新型911GT3カップのパフォーマンスに驚きを隠さない。
今回の合同テストには、エントリーを決めた14クルーのうち13台が参加。新型911GT3カップで争われるクラスAは10台、それ以前のモデルが走るクラスBには3台が顔を揃えた。テスト1日目は20℃という初夏を思わせる陽気のなかで、オリエンテーション、新型911GT3カップに関するコクピットドリル、各ドライバーのポートレート撮影に続き、13時ちょうどにセッション1がスタートした。
トップドライバーによるセッティング作業の場としてセッション1を使用するチームが多い中、エントリードライバートップのタイムを叩き出したのは、昨年のタイトルホルダー#1 清水康弘だった。メタリックレッドのボディに輝くNo.1も誇らしげに唯一の45秒台となる1'45.493を記録、2位以下に1秒以上の差をつけてみせた。「今回はテストなので、プロドライバーが何人か参加されています。彼らと比べると自分はまだまだ改善すべき点が多い」と、それでも清水は反省点を口にする。
1時間のインターバルを挟んで、午後15時からのセッション2。ここでも清水が頭ひとつ抜けたタイムをコンスタントに並べ、ベストは終盤に記録した1'44.329。No.5で走るベテランの#5 高見沢一吉は、「ニューマシンはスピードがありすぎて、シニアドライバーにはツライ(笑)」とおどけるが、1'45.401と上々の2番手。一方、昨年のクラスBチャンピオンで、今年はクラスAに挑戦する#16 マイケル・キムは「今回はニューマシンのシェイクダウンだったので、マシンの感触を確かめることに専念しました。今年は念願のクラスAだし、どんなレベルで戦えるのか楽しみ。清水選手やスカラシップドライバーをターゲットにトップ3を狙いたい」と笑顔を見せた。
この合同テストにはもうひとつ重要な意味がある。昨年からスタートした新人育成プログラムのオーディションをも兼ねているのだ。書類選考、面接を経て、サーキットに集められた3人のドライバーは、16日にそれぞれが20分ずつ911GT3カップのステアリングを握った。その後、再度の面接やインカー映像の分析などを経て、厳選なる選考の末に、松下昌揮選手がスカラシップドライバーに選出された。
松下は昨年に引き続き世界一の販売台数を誇るポータブルナビゲーションブランド『GARMIN』がサポートした911GT3カップでPCCJ全戦にエントリー。今後どれだけ成長できるのか、そしてPCCJドライバーとしての佇まいも求められるスカラシップドライバーだが、その先にはスーパーGTや海外のカレラカップなど、さらなるステップアップの可能性も秘めている。
「レーシングカーに乗るのは去年のマカオGP以来でしたが、ドライビングの感覚はすぐに取り戻せました。20分という限られたなかで自分のパフォーマンスを見せるのは、非常にシビアな状況でした。決まった瞬間は本当に嬉しかったし、ホッとしたというのが正直な感想です。目標は1年を通じて成長をすること。そして、シーズン終了時にゼッケン1番を持って帰りたいと思っています」と、松下は一言ずつ噛み締めるように喜びを語る。
翌、テスト2日目は6℃まで気温が下がった中で、午前10時にセッション3の走行がスタート。初日にのセッション1同様に、いくつかのチームがプロドライバーによるセッティングタイムに充てる中、トップタイムはまたも清水だ。エンジニアとディスカッションを重ねながら、前日のベストタイムを0.826も縮める1'43.503を記録した。2番手で続いたのは、オーディションを終えてリラックスした表情の#10 松下。「完全に攻めている状態ではありません。まだ伸びしろは残しています」と頼もしい。3番手には#16 マイケル・キム、4番手に#9 小林賢二が続く。
そして、午後の最終セッションは、序盤からラップごとに清水と松下がベストラップを取り合う緊張の展開。中盤、松下が1'44.637の好タイムを決めると、すかさず清水が今回唯一の43秒台となる1'43.402でトップを取り返した。走り終えた清水は「今年は2連覇を狙いたいです。去年は中盤崩れてしまいましたが、ゼッケン1に恥じない力強いレースをしたい」と笑顔で目標を語ってくれた。終盤にニュータイヤを履いた小林は1'45.009の3番時計。「今年はチャンピオンを狙いたいので、清水さんの1秒差以内に入りたかった」と王者への対抗意識をのぞかせる。
チャンピオン清水、若いスカラシップドライバーの松下の好走、さらには新型911GT3カップの驚異的なパフォーマンスによって、これまで以上にハイレベルなタイムが並んだ2010年のPCCJプレシーズンテスト。”打倒清水”を多くのクルーが虎視眈々と狙うなか、今シーズンも『世界最速のワンメイクレース』の名に相応しいエキサイティングな展開が期待できそうだ。開幕戦の舞台は今年も岡山国際サーキット。4月3〜4日に第1戦と第2戦がダブルヘッダーで開催される。