最終ラップで10位を掴んだ佐藤琢磨「最後は前のタイヤから白煙上げながら抜いた」
アメリカの独立記念日、7月4日に決勝を迎えたNTTインディカー・シリーズ第10戦のミド・オハイオ。インディペンデンスのホリデーともあって、サーキットの場内は入場制限もなくキャンプを楽しむモータースポーツファンで盛り上がっていた。マスクをする人も減り、すっかりコロナ以前のアメリカを取り戻しているようだった。
このミド・オハイオが終わると、およそ1カ月のサマーブレイクとなるインディカー・シリーズ。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨としても、上位入賞かもしくは表彰台の一角でも奪い取って後半戦に勢いをつけたいところだ。
今季は予選までのパフォーマンスが十分に発揮出来ず、上位グリッドどころかQ1の突破さえ実現できていない。インディカーでポールポジションを10度も取った琢磨とは思えないほど。
ここまでマシンの仕上がりがままならない状況を琢磨に聞くと、「今年のタイヤはブラックでもレッドでも温まるのに少し時間がかかっていて、このミドオハイオのような路面だと余計にそうなってしまう。うちのチームはその傾向が強くて、他のチームはそのあたりをうまくマネージメントしているんだと思います……」とコメント。
タイヤがその一因だとしても、それを支える足回り、そしてエアロダイナミクスとインディカーのセッティングは奥が深い。
RLLは今回ステファノ・フェルッチを三度迎えて3台で臨むが、今回はプラクティスの走り出しを3台ともほぼ同じような仕様で始めたという。
「多分初めてじゃないかな」と琢磨が言うように、RLLが手探り状態にあるのもうかがえる。
その結果予選グリッドは、グラハム・レイホールが8番手、琢磨が19番手、フェルッチが22番手という順。ポールポジションを取ったペンスキーのジョゼフ・ニューガーデンは3戦連続のPPだったが、ニューガーデンのマークしたベストタイムは1分6秒6739。レイホールは1分6秒5946。琢磨は1分07秒0951。グループ分けのアヤで、残ったり落ちたりはするものの、相変わらずの僅差のインディカーである。
前戦ロードアメリカは20番手から8位入賞したが、ここミド・オハイオはオーバーテイクポイントも少なく、そこまでうまくレースが運ぶのか……。琢磨はブラックを履いてレースをスタートした。
スタート直後のターン3で中団でライアン・ハンター-レイ、ジェイムズ・ヒンチクリフ、アレックス・ローゼンクヴィストらが絡むクラッシュが発生し、琢磨はこれをうまく避けて15番手に浮上した。
さらにこのイエローコーション開けで同じところでウィル・パワーとスコット・ディクソンが接触。パワーがスピンしたところにエド・ジョーンズがぶつかり再度イエローコーションに。
ブラックタイヤの琢磨はステイアウトして31周目のピットインを遅らせた。1度目のピットイン後はオーバーカットもうまくいかず、再度15番手に戻ったが、ニューレッドが2セット残っていた琢磨はレッドタイヤにしてからペースを戻し、2度目のピットでオーバーカットに賭けた。
1度目のピットを遅らせていたために、2度目のピットも遅らせることができ、前のライバルがピットに入り始める頃にプッシュして時間を稼ぐ。55周目、2度目のピットインの直前には自己ベストラップを刻む。
この作戦で前のスコット・マクラフラン、シモン・パジェノーらの前に出ることに成功し12番手になった。
目前のセバスチャン・ブルデーの攻略には少し手を焼いた。ローダウンフォースのセッティングのブルデーは直線で逃げたが、琢磨はブルデーよりプッシュ・トゥ・パスに余裕があり、ファイナルラップ、ターン3のブレーキングでブルデーを仕留めた。
また7番手を走っていたコルトン・ハータがピットインしたために自動的に10位となってチェッカーを受けた。
「スタートの混乱もうまく避けられましたが、ブラックでなるべくピットインを遅らせてオーバーカットを狙っていく作戦でした。2度目のピットインではうまくいってポジションも上がりましたし、最後のブルデーはなかなか手こずりましたが、最後は前のタイヤから白煙上げながら抜きました(笑)」
「この後サマーブレイクになりますが、ラグナセカで一度テストがありますし、チームとまたミーティングを重ねて後半戦に備えたいと思います」
残り6戦は琢磨の好きなストリートコースやショートオーバルのレースが続く。ここからの巻き返しに期待したい。