横浜ゴム 2022スーパーフォーミュラ第6戦富士 レースレポート
【全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦/富士スピードウェイ】
予選はウェット、決勝はドライと大きくコンディションが変化、波乱続きの荒れたレースで笹原右京選手がスーパーフォーミュラ初優勝!!
2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦が富士スピードウェイで開催。序盤のアクシデント発生や、トップ車両のトラブルによる戦線離脱など波乱の展開となった中、13番グリッドから大逆転を果たした笹原右京選手(TEAM MUGEN)がスーパーフォーミュラ初優勝を飾った。
週末の富士スピードウェイは悪天候が予想されていた。実際、設営日の15日(金)からサーキットは雨に見舞われ、16日(土)の10時15分から行われたフリー走行は激しい雨により赤旗中断からそのままセッションが終了してしまった。午後の予報も悪天候は変わらず、Q1、Q2のノックアウト方式から、30分間の計時方式へと予選方法が変更となった。
定刻の15時10分に、予選セッションがスタート。この時点では雨脚が落ち着いていたが、徐々に雨が強くなるという予報が出ていたこともあって、コース入り口に一番近い場所にピットを構えていた関口雄飛選手(carenex TEAM IMPUL)を先頭に、各車は一斉にコースへと飛び出していく。視界がクリアな状況の関口選手は、コースインラップの翌周にアタック。最もコンディションのいいタイミングで1分35秒951の最速タイムをマークした。
続いて牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が1分38秒060で2番手に。この後方にいたのがここまで5戦中4戦でポールポジションを獲得している野尻智紀選手(TEAM MUGEN)で、同じようにコースインラップの翌周にアタックに入ったが、1コーナーでわずかにコースからはみ出してしまう。さらに最終コーナーを回ったところで、「前との間隔を作ろうと速度を落とした時に、ギヤとギヤの間に入ってニュートラルになってしまった」という山本尚貴選手(TCS NAKAJIMA RACING)と並走状態に。これも影響したか、牧野選手にわずかに届かず1分38秒165で3番手につけた。そして、このあとに戻ってきた坪井翔選手(P.MU/CERUMO・INGING)が1分36秒858で関口選手に続く2位に。
その後、野尻選手が計測3周目に1分37秒240をマークして3位に上がったところで、GRスープラコーナーで小林可夢偉選手(KCMG)がクラッシュを喫したため、セッションは赤旗が掲示される。約10分後にセッションは再開したが、この時点で雨がやや強くなってきてしまい、上位陣のタイムを塗り替えるのは難しい状況になってしまった。残り時間が6分となったところで、13コーナーの立ち上がりで宮田莉朋選手(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)がマシントラブルのためストップし、再び赤旗中断。その後、再びセッションはスタートしたものの、コース各所のポストが見えなくなってしまうほどの豪雨に見舞われ、残り時間が1分29秒を示したところで3度目の赤旗が掲示され、そのままセッション終了に。関口選手が昨年の第4戦SUGO大会以来、約1年ぶりのポールポジションを獲得することとなった。
決勝日は、まだどんよりとした雲が上空に立ち込めていたものの降雨はなく、決勝レースのスタートが近づく頃にはコース全体が完全に乾き、気温27度、路面温度37度と、この週末一番の暑さを示す中でフォーメーションラップがスタート。しかし9番手の松下信治選手(B-Max Racing Team)がホームストレートに戻ってきたところでハーフスピンを喫し、コースサイドの芝生エリアに飛び出してしまった。このアクシデントにより、スタートはディレイ。もう一度フォーメーションラップが行われ、40周へとレース周回数が減算されて、改めて第6戦決勝レースのスタートが切られることとなった。
ホールショットを奪ったのはポールシッターの関口選手。2番手の坪井選手はやや出遅れ、1コーナーで野尻選手が2番手に浮上した。その後方では、平川亮選手(carenex TEAM IMPUL)、大湯都史樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)、三宅淳嗣選手(TEAM GOH)の3台が絡む接触アクシデントが発生。平川選手はコースサイドにマシンを止めリタイヤに。三宅選手はピットに戻ってくることはできたものの、マシンのダメージが大きくこちらもリタイヤとなった。大湯選手にはその後、このアクシデントに対してドライブスルーペナルティが課されている。
このアクシデントを回避した集団はオープニングラップを終えて2周目へ突入。その中で7番手争いのサッシャ・フェネストラズ選手(KONDO RACING)と山本選手が最接近する。2台のバトルはヒートアップし、3周目にはオーバーテイクシステム(OTS)を使いながら山本選手がフェネストラズ選手に並びかけて1コーナーへと入っていく。ここではフェネストラズ選手がポジションを守り切ったものの、2台の争いはこれで終わらない。
続く2コーナーでクロスラインをとった山本選手に対してブロックしようとフェネストラズ選手がマシンを振ったが、さらにその反対方向へとラインを変えようとした山本選手のマシンのフロントノーズがフェネストラズ選手のマシンにひっかかってしまい、2台は接触。フェネストラズ選手ははじかれるような形でコースオフし、そのままガードレールに激しくクラッシュした。このためレースはすぐさまセーフティカーが導入され、後に山本選手にはこの接触に対しドライブスルーペナルティが科されている。
レースは9周を終えたところでSCがコースを離れてリ・スタート。関口選手は後続の野尻選手に対してリードを広げてリ・スタートに成功し、野尻選手は坪井選手に迫られ2番手争いが白熱する。その後ろでは、山本選手と笹原選手が急接近。笹原選手は13番グリッドスタートながら、序盤のアクシデントを回避しポジションアップを成功させていたが、ここで山本選手との激しいバトルを制してさらに8番手に浮上した。
レースは10周目を迎え、義務付けられているタイヤ交換のピットウィンドウがオープンになる。一番にピットに向かったのは野尻選手で、関口選手と坪井選手はステイアウトを選択。野尻選手はアンダーカット作戦を成功させるためにプッシュしたかったが、前方のマシンに蓋をされる形でフレッシュタイヤのアドバンテージを生かせず、暫定トップの関口選手とのギャップは約42~43秒の間で膠着状態に。野尻選手の前にいたマシンがピットに入ったところで、ようやく野尻選手がペースアップ。これを見た関口選手はタイヤ交換へと舵を切る。チームも、驚くほどの速さでタイヤ交換を済ませ関口選手は野尻選手の前でコースに復帰した。
しかし、このアウトラップで関口選手にアクシデントが襲い掛かる。ダンロップコーナーを立ち上がったところで、突然左リヤのホイールが外れ、スピンしてしまったのだ。コースサイドに止まった関口選手の横を、野尻選手が通り過ぎていく。ここまで順調にトップを快走していた関口選手だったが、残念ながら戦列を離れることになった。
このアクシデント発生とほぼ同じタイミングでピットに入っていったのが坪井選手だった。坪井選手がタイヤ交換を済ませ、ピットロード出口に差し掛かったところで、このレース2度目のSC導入を示すボードが掲示される。坪井選手は野尻選手にかわされる寸前のところでコースに復帰。これで坪井選手が逆転でトップに浮上したかに思われた。
しかし、SC導入が示された直後、まだタイヤ交換を済ませていなかった笹原選手がピットイン。1周前に坪井選手がピットに入ったことで、見た目上のトップは笹原選手に変わっていた。TEAMMUGENも素早い作業でタイヤ交換を済ませ、笹原選手をコースへと送り出す。この時、坪井選手はまだホームストレートに差し掛かったところ。笹原選手は坪井選手より前でコースに復帰し、実質の先頭に立って1コーナーへと侵入。SC先導で隊列が整った時には、笹原選手、坪井選手、野尻選手というトップ3に代わっていた。残り周回数が10周のところで2度目のリ・スタート。
トップの笹原選手は背後を脅かされることなくリ・スタートを決めると、そのまま安定したラップタイムで10周を走り切りトップチェッカーを受けた。2位の坪井選手は優勝が見えていただけに悔しい結果となったが、それでも今季初表彰台を獲得。3位の野尻選手は、笹原選手と同じタイミングでピット作業を行った宮田莉朋選手が終盤に猛追してきたが、これを何とかしのいで表彰台の一角を奪取。2台そろって上位フィニッシュしたことで、TEAM MUGENはチームランキングでトップに浮上した。
■笹原右京選手(TEAM MUGEN)【今回の成績:優勝】
「なかなか言葉が浮かんできません。チームの皆さんと応援してくださっている皆さんに対する感謝の気持ちばかりです。大きなプレッシャーを感じながらの苦しいシーズンでしたが、とにかく前を追い続け、一つでもチャンスをものにしようと、チームと一緒に戦ってきました。今日の勝利がこの先の流れを変える良いきっかけになったら嬉しいです」
■坂入将太(横浜ゴムタイヤ製品開発本部 MST開発部 技術開発2グループ)
「レース自体は波乱の多い展開でしたが、最初にタイヤ交換を行い、一番距離を走っていた野尻選手をフレッシュタイヤの宮田選手が追い上げていく終盤の3位争いがタイヤに関しての見どころだったと思います。今シーズンのタイヤと、昨年までのタイヤとの特性の違いに関して、我々が想定していたよりも皆さん大きく感じているようですが、シーズンも後半に入り、それぞれ理解を深めてくれているように思います。次戦の舞台であるもてぎは、サーキットの特性として、ストップアンドゴーの多いコースで、これまでのサーキットと比較して特にブレーキには厳しく、(タイヤの観点からすると)8月のもてぎという事もあり天候次第では気温や路面温度変化、路面状況などによる影響も大きく作用するレースになると考えています。今年は2レース制でタフなレースウィークになると思いますが、大変さを吹き飛ばすぐらいの面白いバトルが見られることを期待します」
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