更新日: 2019.10.02 22:16
【MotoGPコラム】「他のライダーたちは甘やかされたガキのよう」。さらに一歩を踏み出したマルク・マルケスの強さ
Translation:AKARAG
第11戦オーストリアGPからの3戦を終え、決して無敵とは言えなかったMotoGP王者マルケスは、アラゴンGPで自身を証明してみせたかった。レースのある段階でマルケスは2位に7秒差でリードしていた。その後、差は縮まったが、2位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)に4.8秒差をつけてチェッカーを受けたのだ。
それ以上の差をつけてマルケスがレースに勝てた可能性があったことは間違いない。たとえば第2戦アルゼンチンGPでは、マルケスは9.8秒差で地平線に消えていったのだ。だがもしかすると、マルケスの頭にはそのときの勝利が頭をかすめていたのかもしれない。なぜならその次戦の第3戦アメリカズGP(オースティン)では、マルケスはたった8周のうちに4秒のリードをとった後、転倒したのだ。
「ここでの一番の目標は集中して忍耐強くなり、あまりプッシュしすぎないことだった」とマルケスは決勝日に語った。
「オースティンでの経験はいつも僕の頭のなかにあった。だから走り続け、差を調整するようにした。なぜならオースティンで僕が学んだのは、12秒差だろうが4秒差だろうが、なんなら1秒差で勝とうが変わらないということだ。最も重要なことは25ポイントを取ることなんだよ」
「今日のレースでは、リヤタイヤとフロントタイヤも労っていた。左コーナーで(フロントの)ミディアムタイヤに少し手こずっていたからだ」
左コーナーを何よりも好むマルケスが、アラゴンの反時計回りのコースで4度目の勝利を飾ったことは、当然の結果だったかもしれない。しかし、MotoGPレースにおいて、当然の結果などというものは存在しない。いかに簡単に見えようが、無我の境地の限界まで進むことなしに、MotoGPレースで勝てる者は誰もいない。それがいかに簡単に見えようがだ。
マルケスのライバルたちは、彼が2019年でまた一歩を踏み出したことを知っている。また、それはホンダRC213Vに施された変更のおかげでもあるのだが、仲間のホンダライダーたちはその変更による助けをまだ得られていない。
「2019年、僕たちはバイクのバランスを変更した。だから今では僕はミディアムのフロントタイヤでレースができる。それは良いことだよ。ハードのフロントタイヤはリスクが大きすぎるからね」とマルケスは説明した。
「また、2019年はエンジンも改善した。今ではふたつかみっつの違うやり方でラップタイムを出せるようになったことが、最も重要なことだ」。つまりマルケスは、ストレートでさらなるスピードを手に入れ、滑り始めようとするフロントタイヤの感触もより良く掴めるようになったのだ。
アラゴンGPのフリー走行2回目でマルケスは一度クラッシュした。急勾配の下り坂の8コーナーでフロントのコントロールを失ったのだ。驚いたことに、その時ハードのフロントタイヤを試していたという。マルケスは間違ったタイヤを選択しなかったからこそ、彼の背後で起きたことはある意味興味深いことだ。