更新日: 2020.09.29 10:54
【レースフォーカス】序盤に攻めたクアルタラロとミル&リンスが最終周に刻んだラップタイム/MotoGP第9戦
レースの半分以上でトップを走行し、2020年シーズン3勝目を挙げたクアルタラロに対し、レース後半に躍進したのがチーム・スズキ・エクスターのふたり。スズキが2015年、MotoGPクラスに復帰して以来初めて、ふたりのライダーがそろって表彰台に立った。
2位フィニッシュを果たし、3戦連続、今季4度目の表彰台獲得となったミルは、予選後にユーズドタイヤでのフィーリングがいいと語り「終盤の10周はみんな厳しいと思うよ。でも、僕はなんとかできると思う」とコメントしていた。そして決勝レースは、ミルの予想した展開になったようだ。
8番グリッドからスタートし、レース中盤までは5番手を走行。16周目で3番手、残り2周で2番手に浮上した。ラップタイムを確認してみると、この16周目あたりから、クアルタラロやこのとき2番手につけていたフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)のタイムが落ち始めている。ミルも同様だったが、その落ち幅が小さかった。
「レース終盤には41秒後半から42秒で走れるとわかっていた。速くはなかったけれどね。たぶん、レース終盤にはみんな苦戦するとわかっていたんだ。多かれ少なかれ、期待したレースにはなった」と、ミルは最終的にクアルタラロと1秒以内の差でフィニッシュした決勝レースを振り返った。
ミルよりもポジションを上げたのが3位のリンスである。リンスは13番グリッドからスタートして1周目で6番手にポジションアップ。残り2周でモルビデリを交わし、2020年シーズン初表彰台となる3位でフィニッシュした。
後方からスタートしたリンスの場合、「カギになったのはいいスタートだった」という。
「1周目にポジションをたくさん上げ、そこからレース終盤までにタイヤをマネジメントして、前にいるライダー、つまりジョアンに対してタイムを詰めようとした。(ポル・)エスパルガロと争っているとき、少しタイムをロスしてしまったと思う。でも、僕は自分の考えをはっきりさせてミスしないようにしていた。ここモンメロでは、10コーナーで簡単に転んでしまうから。リズムをつくり、タイヤをマネジメントしたよ」
追い上げのレース展開だったにもかかわらず、チーム・スズキ・エクスターのふたりが最終ラップで刻んだのは、クアルタラロのそれよりも約0.7秒から1秒速いラップタイム。決勝会見でクアルタラロが「(24周のレースが)25周だったら、彼ら(スズキライダー)にオーバーテイクされていたと思う」と語るほどだった。
■4位のモルビデリは悲喜こもごも
第9戦カタルーニャGPでは、予選でヤマハ勢がトップ3を占め、フロントロウを独占した。そのひとりがモルビデリだ。予選では最高峰クラスで初となるポールポジションを獲得。決勝レースではホールショット奪って8周目までレースをリード。しかし、残り2周でミル、そして13番グリッドから追い上げたリンスに交わされ、4位でフィニッシュした。
「4位には怒っている」とモルビデリはレース後の取材で切り出した。「素晴らしいスタートを切ったのだけど、たぶん攻めすぎた。タイヤが厳しくて、ファビオが後ろについたとき、僕は戦えなかった」
さらに、14周目にはあわやクラッシュという場面もあったという。
「ファビオの後ろにつくとストレートで僕は少し遅れてしまい、彼をとらえるのにはブレーキングでリスクを冒さないといけなかった。そして、ミスをしてしまった。ほとんど彼にぶつかりそうになり、まっすぐにいかざるをえなかった。それで2秒はロスをしてしまったよ。これで表彰台を逃したのだと思う。このミスに怒っている」
モルビデリは、タイヤマネジメントについて考えなかったという。「ストレートでパワーがあればタイヤをマネジメントできるけれど、そこは僕たちの弱点なんだ。レース終盤にはドゥカティライダーよりも22km/h遅かった。だから作戦を立てられず、ただスタートから全力を尽くした」
「でも、僕たちのパッケージではこれが最善の作戦だったと思うんだ」と語るモルビデリ。確かに、モルビデリのラップタイムは、落ちるタイミングもクアルタラロとほぼ変わらないものだった。
一方で、モルビデリは初のポールポジションを獲得したカタルーニャGPに「この週末全体としては、満足している」とも語った。悲喜こもごもの週末となったようだ。