更新日: 2017.09.14 12:56
「乗るべしスーパーカー」発売記念連載05『フェラーリ・アイディングパワー F460GT』
「世の中にこんな面白いものがあるのか、と。本当に思い通りにならない。アクセル踏んだら回るし、そのうち腕はパンパンになってくるし、1日で富士のショートを120周したこともある。翌日、体がコチコチになって会社は休み(笑)」
そんな最中、アイディング・パワーが2006年から3年間にわたり、井手社長肝いりのプロジェクトとして開発した、とある車両に巡り合う。
「それがフェラーリのF430で、社長が夢として作ってた。3000万で新車を購入して5000万円くらいかけて作ったから、もう430じゃなくなってる。で、みんなにプレゼンしても『MTだからとか、じゃじゃ馬みたいなクルマだから動かせないんじゃないか』とか、二の足を踏んじゃう。で、僕がたまたま動かしてみたら『これは一体、何なんだ。こいつを買わなきゃ人生の大損』、と思って買いました」
ベース車となるF430を「雰囲気はいいけどね」と評していた人物に対し、頭のネジが取れてしまうほどの衝撃を与え“ドライビング・ジャンキー”にしてしまうほどの魅力を、このアイディング・パワーF460GTは備えていた。
「アイディングの良さって言葉だけじゃ説明できない。とにかく全部違う。箱根の下りでこれほどワクワクして走れるクルマはない。ブレーキ踏んで、そこから少し離して鼻先を上げて、そのままクリッピングへ向ける。そんでステアリングを戻しながら踏んでいくんだけど、この操作が6000回転から7000回転で自在にできる。そうするともう、頭がおかしくなるんだよ(笑)、まぁそれが何速かは言わない方がいいけどね」
接地感はこれでもかとステアリングに伝わり、オーケストラみたいな排気音が山に木霊する。型から起こしたオリジナルのマグネシウムホイールは、復筒式ダンパーとも相まって、路面を捉えて離さない粘り腰のロードホールディングを見せる、そんな「最高の走る道具」に仕上がっていた。
「思い通り走らせられるし、腕がなくても気持ち良い。クルマがいいとそういうことになる。操作したことに対するレスポンスが絶妙、すごく分かりやすい」
ドライビングの新しい世界への扉を開かせてくれたF460GT。今年還暦を迎えるオーナーは、さらにひりつく面白さを求めて3年前にスーパーFJを購入。今季からシリーズという高みを追いかける。