更新日: 2017.09.15 13:38
「乗るべしスーパーカー」発売記念連載07『マクラーレン・P1』
「370台程度しか作られない間でも、オプションなどの仕様の選択の幅がかなり違ってきます。マクラーレン・オートモーティブ最初のモデルだったMP4-12Cは、それこそ様々なモデルに乗ってきた人間の感覚からしても目から鱗だった」
「さらにP1の開発段階では、当時の総師であったロン・デニスがマクラーレンF1のとき以上に『スーパーカーの頂点を、再定義する』って言ったんですよ。クルマも素の土台からそれがないと、本物の雰囲気や感じは出せない。要するにマクラーレン以外はある意味でロードカーなんですよ、自身の定義として。そのロードカーをいかにレーシングカーに近づけるかをやっている。でも、マクラーレンは逆だったんです」
近代スーパーカーが、ロードカーにレーシーなエッセンスやギミックを綺麗に装飾するプロフェッショナルなら、マクラーレンはレースカーを「どれだけロードカーに近づけられるか」を突き詰めている、と感じられた。
それほどまでにMP4-12Cの段階から、剛性も、乗り心地も、ハンドリングも、バランスも“軸”が通り、その存在をありありと教えてくれるような走りをした。それはあたかも「10代のアスリートを想像させるような伸び代」を感じさせるもので、まだまだ深遠なる奥深さをも秘めているように思えた。
「P1は4輪駆動でもないのに前輪にすごく荷重が乗っていて、あんなに太いタイヤなのにステアリングを通して自分の神経が、もっと遠くにまで届くような感じ」
「4輪それぞれがちゃんと自分の狙ったところをトレースしていって、自分がミスする分まで先回りして、遊びまで考えて合わせてくれてるような。機械なんだけど、生き物……みたいな。それこそ馬みたいな感覚がありますよね。馬は手綱で言うことを聞いてくれますけど、でも馬自身も自分で考えて走ってる。マクラーレンは車両制御の方向性として、電子制御や味付けがクルマと対話してる感じがすごく強いですね」
マクラーレンが主催する国内や海外のイベントなどにも積極的に参加し、P1と過ごす時間を楽しんでいる。
「720Sのローンチエディションも、BP23もすでにオーダーしたんです。BP23の仕様を検討するなかで、個人的には本物には華美な装飾は似合わないと思うのでカーボン素材の風合いを最大限感じるために無塗装の状態で乗りたいとも考えています」
何かの真似ではないエンジニアリングと、マーケティング主体の発想ではないと感じられるプロダクト、その背景にはレーシングフィールドで培われたリアルなノウハウが息づいている。そこには、彼らのストーリーに寄り添って付き合っていきたい、と望む人だけが知る本物の世界があるようだ。