マルキオンネ直轄の極秘プロジェクト? 独特の美学で中高年マニアを刺激する/アルファロメオ・ステルヴィオ実践試乗レポート
今回の試乗車はディーゼルエンジン搭載車だったが、誤解を恐れずにいうと、今のアルファのエンジンはガソリンもディーゼルも関係なく“ディーゼルっぽい”のが特徴だ。
低速から力強いトルクをモリモリと発生させるエンジンを多段ATと組み合わせて、あまりエンジン回転を上げずに走らせることが、静かで快適に走るし内部摩擦抵抗も大きくならず高効率で燃費も良くなる……というのが、昨今のクルマづくりの定石である。
なかでも、アルファの4気筒エンジンはガソリン、ディーゼルともども、その思想が徹底している。
見事なまでにフラットなトルク特性で、BMWなどのように、高回転域でドライバーを心地よくさせる演出もほとんどない。
考えてみると、アルファ、そして30年以上もその親会社だったフィアットのエンジニアリングは、歴史的にとても真面目で正攻法なのが特徴だ。
たとえば、最新クリーンディーゼルの元祖となった直噴コモンレール型エンジンを、乗用車として初めて実用化したのは、何を隠そうアルファ156だった。
フィアット傘下に入る以前のアルファといえば、高回転で突き抜けるように回るエンジンが代名詞だった。
昭和~平成初期の日本の自動車雑誌では、そんな高回転型エンジンを「ラテン系の味わい」と持てはやした。
それはそれで間違いではないが、当時の技術では、エンジンを高出力化するには高回転化するしかなかったわけで、それもまた生真面目なエンジニアリングの結果ともいえた。
また、ステルヴィオはSUVとしては異例なほどロール剛性が高く(=カーブでの左右の傾きが小さい)、ステアリングも非常にクイックな設定となっている。
聞くところでは「兄弟車のジュリアとまったく同じロール剛性と俊敏性を実現する」のが、ステルヴィオのシャシー開発目標だったとか。
実際のステルヴィオの操縦性や乗り心地は、少しばかり“やりすぎで敏感すぎ!?”の感がなきにしもあらずだが、これもまた生真面目なエンジニアリングの結果だと理解すれば、好事家には逆に微笑ましくも思えるだろう。
マルキオンネが逝去してからはFCAもさらなる時代の荒波にもまれて、ジョルジョもいつしかアルファ専用ではなくなり、今後はマセラティやジープにも流用されるらしい。
そして、ついにはFCA自体までがグループPSA(プジョー、シトロエン、オペル/ボクスホール)と合併することとなった。アルファを取り巻く環境はまたまた激動しそうである。
■アルファロメオ・ステルヴィオ 2.2 ターボディーゼル Q4 スポーツパッケージ 諸元
車体 | |
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全長×全幅×全高 | 4690mm×1905mm×1680mm |
ホイールベース | 2820mm |
車両重量 | 1820kg |
乗車定員 | 5名 |
駆動方式 | 4WD |
トランスミッション | 8速AT |
タイヤサイズ | 235/55R19 |
エンジン種類 | 直列4気筒インタークーラー付ターボ |
総排気量 | 2142cc |
最高出力 | 154kW(210ps)/3500rpm |
最大トルク | 470Nm(47.9kgm)/1750rpm |
使用燃料/タンク容量 | 軽油/64L |
車両本体価格 | 666万円 |
■Profile 佐野弘宗 Hiromune Sano
1968年生まれ。モータージャーナリストとして多数の雑誌、Webに寄稿。国産の新型車の取材現場には必ず?見かける貪欲なレポーター。大のテレビ好きで、女性アイドルとお笑い番組がお気に入り。