更新日: 2024.05.16 15:20
G Force Engineering 2024フォーミュラ・リージョナル第2大会SUGO レースレポート
2024 Formula Regional Japanese Championship ラウンド2 SUGO大会
・ミハエル・サウター、レース4、5ともに表彰台獲得も、頂点には届かず
・ジェシー・レイシー、レース4で3位表彰台獲得
・セバスチャン・マンソン、レース5でポールポジション獲得も、2位でフィニッシュ
5月11〜12日の週末に、宮城県のスポーツランドSUGOで2024 Formula Regional Japanese Championship (フォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップ=FRJ)のラウンド2、SUGO大会が開催され、『G FORCE DRIVER DEVELOPMENT PROGRAM』(ジーフォース・ドライバー・デベロプメント・プログラム)のミハエル・サウター(19歳、Birth Racing Project, G FORCE F111/3)、ジェシー・レイシー(17歳、BIONIC JACK RACING, G FORCE F111/3)、セバスチャン(セブ)・マンソン(16歳、BIRTH RACING PROJECT, G FORCE F111/3)の3名は3月初旬に開催された開幕鈴鹿大会から2カ月ぶりに来日。レース4とレース5の2戦に挑み、それぞれが新たな経験値の獲得、そして次の課題発見など、実りある週末を過ごしました。
今大会では木曜日にフォーミュラカーにも25分 x 5本のスポーツ走行が設定されたため、SUGO初走行となるジェシーとセブは水曜日午後にサーキット入りし、SUGO走行に関する講習を受け、トラックウォークを実施。SUGOの狭さ、高低差、注意が必要な縁石や路面の状況などを自らの足で歩いて確認し、翌日のスポーツ走行にのぞみました。
木曜日のスポーツ走行では、25分の走行が終わるごとにエンジニアがデータを分析、ドライバーからのフィードバックと照らし合わせながらクルマを作りこんでいくと同時に、四輪レースでの経験値がまだ圧倒的に少ないジェシーとセブは、湯地チーフエンジニアからビークルダイナミクスについて、あるいはタイヤのラテラル・フォースバリエーションなどについてレクチャーを受けながら、習熟を進めました。
今回、学校の試験日程により木曜日のスポーツ走行参加がかなわないミハエルは、金曜日朝一でサーキット入りし、公式プログラムの専有走行1から走行開始する予定でしたが、パリ発の便がエンジントラブルにより遅延。結局、10日(金)午前9時過ぎに羽田に到着し、チームが気を揉むなか午後の専有走行2に文字どおりぎりぎりで滑り込むことに。サーキット到着後即着替え、マシンに乗り込んですぐにスタートという状況下、2周目から22秒台を刻むなど、昨年のSUGO大会にスポット参戦し1勝を挙げた経験からか、極めて落ち着いた様子をみせ、チームを安堵させました。
今大会でチームが直面した問題のひとつに、ジェシーやセブなど高校生ドライバーならではとも言える体重管理がありました。16歳、17歳の男子はまさに成長期で、身長、体重ともに短期間でかわっていきます。20代、30代のプロドライバーであれば、体調管理とともに体重しっかりしているため、大会ごとに体重が大きく変動していることはまずありません。
しかし、今回元々高身長のセブはなんと鈴鹿から5kg以上も増量していたのでした。これにはエンジニアをはじめ一同が驚嘆し、クルマ重を合わせるためにそれまで積んでいたバラストを全て降ろすことに。「もうバラスト1枚もないから」と、セブにはおやつ禁止令が適用されることになりました。
2回の予選とレース4が行われる11日(土)、午前9時にレース4のスターティンググリッドを決める15分間の公式予選1がスタート。ミハエル、ジェシー、セブも一斉にコースインし、まずはしっかりタイヤに熱を入れ、3周目からタイムアタックを開始。ジェシーが真っ先に1分19秒台をマークすると、続いてミハエルとセブも4周目で19秒台を記録。
その後ミハエルは周回を重ねながらタイムを縮め、最終的には全10周回のうち9周目で自己ベストタイムの1分19秒294を記録しましたが、堀尾選手のタイムに0.039秒届かずポール獲得はならずに2番手となりました。ジェシーは7周目に自己ベスト1分19秒448で3番手、セブは5周目以降にタイム更新ができず、4周目に記録した1分19秒579で5番手となりました。
公式予選1から15分のインターバルを経て行われたレース5のグリッドを決める公式予選2では、燃料が減って重量が軽くなっていることもあり、序盤から次々に公式予選1のタイムを上回る1分18秒台が記録されていきましたが、予選インターバルにマシンのセットアップ変更を実施し、4周目のアタックラップをうまくまとめあげたセブが1分18秒396を記録、ポールポジションを獲得しました。ミハエルは5周目に記録した1分18秒725で3番手、ジェシーは18秒台に入れることがかなわず1分19秒236で6番手となりました。
2回の予選が行われた後に、12時5分からは22周回で争われるレース4の決勝がスタート。2番グリッドからスタートのミハエルは抜群のスタートを決めましたが、ポールスタートの堀尾選手を攻略するまでにはおよばず、2番手で1コーナーを通過。その後5周目にファステストラップを記録しましたが、最後まで堀尾選手をとらえることは叶わずに2番手でチェッカーを受けました。3番手スタートのジェシーは中盤以降に4位以下とのギャップを広げはじめ3位フィニッシュ。セブも5番手スタートの5番手フィニッシュ、SUGOでは「予選次第」を体現するレースとなりました。
翌日曜日、前日よりも暑い1日になるのではとの予想を裏切り、雲におおわれ南からの風が吹き抜けるSUGOで13時15分にレース5がスタート。ポールスタートのセブは緊張のなか、抜群の好ダッシュをきめた堀尾選手にトップを譲り渡すことに。レース中盤からは3番手スタートのミハエルが前を行くセブとのギャップを激しく詰めにかかりましたが、セブはミハエルから2番手を守り切ってチェッカー。3番手にミハエルが続き、スタートでブリッグス選手が6番手からふたつポジションをあげたために1つポジションを落としたジェシーは、そのまま6番手でフィニッシュとなりました。
5号車ドライバー ミハエル・サウター
「予選ではそんなにミスはなかったのですが、うまくクリアラップがとれなかったのが悔やまれます。結果、2番手、3番手のスタートになりました。レース4ではあまりスタートがうまくいかず、また、レースを通して終始オーバーステアに苦労し、ペース的に前を行くトップの選手についていけませんでした。レース5もスタートはあまりうまくいかなかったのですが、レースペースは改善できていたのは良かったと思います。岡山大会ではさらに良い結果を出せるよう頑張ります」
53号車ドライバー ジェシー・レイシー
「SUGO大会は、良いところ、悪いところ、両方がありました。木曜日にスポーツ走行で初めてSUGOを走りましたが、この1日の収穫はとても大きいものでした。木曜日のスポーツ走行から金曜日の専有走行で、中古タイヤとニュータイヤ、それぞれで良いセッションができました。予選1では、ベストではなかったものの、なんとかまとめることができ、3番手となりましたが、予選2では、うまくまとめることができずに5番手にとどまりました」
「決勝は、レース4は良い感じでスタートでき、途中4番手にポジション落とす場面がありましたが、1コーナーでブリッグス選手のアウト側から3番手を奪い返せたので良かったです。タイヤの使い方もうまくいって、特に目立ったミスなく3位でフィニッシュできました。レース5は、スタートはうまくいったもののペースが上がらず苦戦し、6位でのフィニッシュになりましたが、フロントウイングに破損があったことが終了後にわかりました。次戦も頑張りますので、応援よろしくお願いします」
55号車ドライバー セバスチャン(セブ)・マンソン
「木曜日のスポーツ走行、金曜日の専有走行を経て、ドライビングとクルマの両方で改善が進み、土曜日を迎えました。予選1ではトラフィックがあったのと、うまくまとめることができずに5番手になりました。予選2では、予選1からのインターバル中にセットアップを少し変更したことが功を奏し、またうまくまとめることもできたのでポールを獲得できました」
「レース4ではちょっとミスもありましたが、そんなに悪くはなかったと思います。レース5では、スタートで少し出遅れてしまった感がありますが、総じて2レース通して、鈴鹿よりも自分のドライビングもクルマも良くなったと思いますので、また次に向けて頑張ります」
監督 岡澤優
「菅生は開幕戦の鈴鹿同様に日本を代表するドライバーズサーキットです。ヤングドライバー達がどの様に適応していくのか楽しみにしていました。また、季節が巡り気象条件やトラックコンディションの変化に合わせた対応が必要になる為、経験が少ない彼らが苦戦することも予想していました。コース習熟からはじめて、個々の課題に違いはありましたが、セッション毎にドライビングやセットアップを改善することができていました」
「決勝ではライバルに先行をゆるしたため、本来のパフォーマンスが出すことができませんでした。彼らも悔しかったと思います。オーバーテイクが難しいFRJでは予選順位とスタートが重要です。次戦はそれらの決定力向上に注力したいと思います」
チーフエンジニア 湯地浩志
「ミハエルは学校の都合に加え、フライトの遅れで、プラクティスへの参加は、金曜日のFP2の1時間となりました。FP2直前にサーキットへ到着し、G FORCE F111/3に飛び乗り、木曜日から練習走行に参加していたライバルたちを0.2秒引き離して、トップタイムを刻んだのは、かっこよかったです」
「とは言え、クルマ両セットアップの合わせ込みが遅れていたのは否めず、FP2でもハンドリングには問題があり、QF1/QF2でもセッティング作業をしている状態で、今回はポールポジションを獲得できなかったのは、鈴鹿の彼のペースを考えると、残念でした。レース4からレース5でも、クルマ両セットアップを改善し、レース4で、彼のベストラップは、2位のベストラップを0.5秒引き離しており、後半日でも早くサーキットに到着できていればと悔やまれます」
「ドライバーとしては、クルマのセットアップや挙動に対する理解も進んでいるので、次回、岡山のレースでは、レースウィークの最初から参加できるとのことなので、ミハエルと鈴鹿の再現を目指します」
「ジェシーは、前回の鈴鹿でのエンジントラブルにより、車両の理解と習熟が遅れているというのが、彼についてのフェアな認識です。QF1でミハエルと0.1秒の3位を記録するなど、車両が彼のスイートスポットに入れば、タイムを出せるようになってきたのはポジティブですが、鈴鹿1レース分、彼のドライビングスタイルへのクルマ両の合わせ込みが遅れている側面は否めません」
「鈴鹿からG FORCE DRIVER DEVELOPMENT PROGRAMのレギュラードライバーとして参加している3名のなかでは、このようなビハインドと戦っている状況ですが、非常に辛抱強く各セッションを進めてくれており、レース5でも抜きにくい菅生で、中村選手を追い回しながらも、辛抱強くクリーンなバトルを展開してくれたのは、メンタルの成長を感じるとともに、非常にポジティブでした。今回はトラブルなく、4日間走行でき、クルマ両への理解、また、ドライバーとしてのフィードバックも改善したので、次回の岡山はある意味ジェシーの番かもしれません」
「セバスチャンは、鈴鹿からの成長が目覚ましかったです。もちろん、鈴鹿から3人とも、成長しているのですが、クルマ両と彼のドライビングスタイルとの合わせ込みという点も含めて、進みました。これは、彼のフィードバックの成長に起因します。菅生というテクニカルなサーキットを初めて走行し、コースを習熟しつつ、クルマ両のセットアップを進めるというこの経験を岡山でも活かしてくれることを期待します」
「レースでは、ポールポジションからスタートしたレース5のスタートで2番手からスタートだった堀尾選手に先行されたことが残念です。レースペースは堀尾選手と同じか、少し速いくらいだったので、スタートを決めきれていればと悔やまれますが、すばらしいスタートを決めた堀尾選手を称えるべきと思います。これも経験なので、岡山でまた、ポールからスタートし、今度こそ、初勝利を飾れるように、一緒に頑張ります」
「エンジニアリングとしては、鈴鹿から菅生に向けてクルマのセットアップを変更したい部分はもっとありましたが、G FORCE DRIVER DEVELOPMENT PROGRAMとしては、ドライバーの車両理解を混乱させるような大きな変更はしたくなかったので、鈴鹿から最小限の変更で臨んだ点では、チャレンジングな週末でした。岡山に向けて、ドライバー育成と、クルマ両エンジニアリングの両立というチャレンジも続きますが、これもG FORCE DRIVER DEVELOPMENT PROGRAMの醍醐味として、ドライバーたちとハードワークしたいと思います」