更新日: 2017.03.27 16:27
F1開幕戦で露見した、メルセデスのまさかの綻び。足下に難ありか──【今宮純の視点】
17周目、たまらずハミルトンが自分の意志で早めにピットへ。ここで入ると4位フェルスタッペンの後ろになるが、それでも決断せざるを得なかったピンチ。もうアンダーカットするどころではない。タイヤデータ的に彼らがフェラーリに劣るのが暴露された瞬間であった(テストと本番は違うのだ)。
すると予想外のことがまた起きていった。1位ベッテルが23周目にピットへ、そのインラップでトラフィックに遭いロスしたがぎりぎり、フェルスタッペン+ハミルトンの前で戻れた。ベッテルのアウトラップは1分33秒830で、フェルスタッペンは1分31秒016、ハミルトンは1分31秒474。レッドブルは2秒もこの周だけペースが落ち、それにつき合わされたメルセデスはピットアウトしたフェラーリに先行されてしまう。
決定的瞬間後、ベッテルとハミルトンのギャップは25周目になんと5.898秒差に広がる。その直後フェルスタッペンはピットへ、ひとつの見方としてあえて言うなら「ベッテル援護射撃」を済ませてからの行動か──。
それからはベッテル独走展開、彼のソフトのペースに王者はまったく対抗できない。自己ベストラップは44周目に記録した6番手タイム、序盤ウルトラソフトでも終盤ソフトでもハミルトンのペースは予想外に遅かった。
そればかりか気になったことがもうひとつ。最速ラップはライコネン、2番手ボッタスでトップ8にベッテル、ダニール・クビアト、フェルスタッペン、マグヌッセン、カルロス・サインツJr.がずらり、メルセデスPU勢はひとりもいないのだ。これはめったになかった事実、ここから考えられるのは彼らが一様に、2017年ピレリタイヤとのマッチングになにか問題を抱えていたのではないのか?
ハミルトンが訴えたオーバーヒート症状、グリップ低下、デグラデーション現象などを、メルセデスPUメンバー以外は言及していない。まだ1戦だけだが17年タイヤは特性が変化、ビッグパワー&トルクのメルセデス最新スペックPUには厳しいのだろうか。あるいは(大胆に言うなら)昨年までのメルセデス指向から、フェラーリ方向に変わったのだろうか。
そこで思い出すことがあった。昨年10回実施された「17年試作タイヤ開発テスト」に、フェラーリが最も多くレギュラーを走らせ、メルセデスは2人のレギュラードライバーを起用せず大半をテストドライバーのパスカル・ウェーレインに担当させた。そのアドバンテージは少なくないはずだ。
今年の20分の1レースに勝ったベッテルとフェラーリははしゃがず、負けたハミルトンとメルセデスは悔しがらず余裕しゃくしゃく。その開幕戦勝敗の温度差が、新しいシーズンの新たな変化ではないだろうか。