更新日: 2018.03.22 15:05
【特別インタビュー】ホンダF1田辺豊治TDに聞く就任までの経緯と現場力、トロロッソとの手応え
──中団のトップという彼らの目標をクリアできそうな気配があれば、一気に良い方に加速していきますね。
「そのためにもガッカリさせないようにしないといけませんね(笑)。そこを私、HRDさくら側のもうひとつの大きな責務としています。サーキット側と連絡を取り合いながら、現場側の要求とHRDさくら側の実情を合わせながら最善をつくしていくことになります」
──気持ちの部分も含めて、トロロッソとホンダとの共通するのはどんなところだと思いますか?
「今のホンダとしての立場は、トップに向かってチャレンジしていく立場です。こんな言い方は失礼ですが、彼らも今まで中位から下位というトップに至らなかったチームです。それで一緒にやって、今までの我々の結果のさらに上を目指そうということで気持ちが一致していると思います」
──イタリア、ファエンツァにあるファクトリーは良い意味でアットホームな雰囲気で知られていますが、いかがでしたか?
「設計にしろ作業場にしろ、ちょっと密度が高いかなという感じで人が入っていて、みんな休まず何かに向かって働いているということが感じられた。トストさんやジェームス・キーにファクトリーを見せてもらったのですが、とてもフレンドリーで『調子はどう?』といった感じで話をしてました。そのあたりがアットホームで、大きくないけど最適なサイズで効率よく働けているオフィスという感じを受けました」
──トロロッソとは、パッケージとしてどのように今シーズンを戦っていきますか?
「新しいパッケージということで、お互いのことをよく知るということが最初になると思います。知るためには、我々としてはトラブルを出さずに距離を走らないといけない。ドライバーを含めて新しい人たちの集団になりますので、距離を稼いでいろいろなデータを計測、収集する。プラス、いろいろな意味での経験を積むことが大切だと考えています」
──実際にトロロッソとやりとりするなかで、向こうからのリクエストがあったり、技術的な部分でリクエストを出すこともあると思います。そうした連携は上手くいっていますか?
「今のところはまったく問題なく上手くいっています。今のところと言うとおかしいですが(笑)、大丈夫です。先程も申しましたようにジェームス・キーから適宜質問や懸案などが来ますから、我々はそれに答えます。我々もクエスチョンがあれば質問するというかたちで進めています」
──具体的に、今年はどんな年にしたいと思っていますか?
「昨シーズンからを含めてですが、確実にPUとして……過去を振り返ると壊れていたということがありますので、壊さないように確実にレースの完走を目指す。トロロッソとともに、結果をもって戦闘力を上げる。チーム代表のトストさんもおっしゃっているように、中団のトップを狙っていくことに注力していきたいと思っています」
──ジェームス・キーとは、第3期のころから接点があったのでしょうか?
「私はないです。ジョーダンをやられていたので(佐藤)琢磨選手とは一緒だったと聞いています。一緒に仕事をするのは今回が初めてです」
──ジェームス・キーといえばF1パドックのなかでも実力を認められている人物のひとりです。これまでの経歴を含めて、どのように見ていますか?
「最初に会って話をした段階で、この先もお付き合いをしていくことを考えると、非常にやりやすい方だと思いました。その後にもう一度ふたりだけで、どのように付き合っていくかという話をしました。そこでは、私個人として心配なこともあなたに話すから、あなたも心配なことがあったら言ってほしいと言いました。隠しごとなく話をしようということになっています。正直ベースで、これから話ができると思っています」
──こうした開発の場合、一般論としては車体側とパワーユニット側で要望が食い違うことがあります。そのような場合の落としどころは上手く見つけられそうですか?
「そうですね。折衷案という言い方をしていいかどうかは分かりませんが、最終的には彼らの要望と我々の要望を折衷案へと持っていったとき、もしくはどちらかの要望を受け入れたときに、車体のパフォーマンスとしてどちらが得なのかという技術的な判断で結論をつけます。その過程ではきちんと話ができると思うので、大丈夫だと思います」
──ジェームス・キーはワークスエンジンを使ったことがないということで、どこまでリクエストできるかという部分であまり経験がないとおっしゃっていましたが、そこについてはもっとリクエストがあってもいいのでしょうか?
「ワークスであるか否かに関わらず、勝ちたいと思っているんだったら好きなだけ言ってもらいたいですね。特に今年はワークスということなので、とにかく要望はいくらでも言ってほしい。最終的なできる/できないはパフォーマンスにかかってきます。お互いにどこまで妥協するか、パフォーマンスが上がるのか上がらないのかで最終判断しますから。そこがないと勝てるクルマは作れないと思います」
──久々のF1復帰になりますが、第2期、第3期F1からインディも含めて、今の田辺テクニカルディレクターの強みはどういったところにありますか?
「今までサーキットの現場でやってきたいろいろな場面と、それを準備するファクトリーでの仕事で得た経験です。当然、我々ホンダ内でも活用しなければならないし、ドライバーも含めてチームとの関係においても、私が得た経験を出していけるように。それがある意味、私が現場を担当する意味だと思います」