マシンバランスの課題を克服し、万全の体制で勝利を掴んだメルセデス【今宮純のF1シンガポールGP決勝分析】
1周23コーナーあるうちセクター2に7コーナー、3に10コーナー。2018年メルセデスが『コーナリング命』のレッドブルをも引き離した。
直角コーナーなどでメルセデスW09の挙動はフロントが“フラット”に保たれ、ロール角度もピッチング上下動も制御され、理想値に近いダイナミック・ダウンフォースが得られている(はずだ)。
だからふたりともこのセクションが安定し、リヤタイヤの過熱症状(急なオーバーステア)も見られない。初日からハンドリング矯正を進め、ブレーキングがナーバスな部分も対策、ほぼ万全な仕上がりで予選へ。
しかし、メルセデスがこの週末たった一度だけ躓きかけた。予選Q1にウルトラソフトで臨み、ボッタス12番手、ハミルトンはあわやの14番手。15番手ガスリーと16番手マグヌッセンと0.2秒差、きわどかった。
これを見たはずのフェラーリだがQ2にふたりをウルトラソフトで行かせた。だが十分なタイムを出しきれずハイパーソフトに変更。このチーム行動などを外から見る限り“指揮・判断”系統に緻密さや周到さ、冷静さがやや欠けているように映るが……。
ハミルトンのQ3アタック、セクター1は2位、2も2位、3が最速。直角ターンを次々に“3速ギヤ”で切り抜けていった。セクター3で2位フェルスタッペンを0.125秒、3位ベッテルを0.260秒も引き離す1分36秒015。
このPPタイムは2014年彼自身の1分45秒681より『9.666秒』も速い。景色がまったく違って見えたことだろう。
――モナコと同じ予選トップ6がそのまま決勝トップ6ゴール。何かが起こるシンガポールGPも今年はほとんど起こらず、たった1台エステバン・オコン(フォース・インディア)が数百メートルでリタイア。完走19台。レースタイム1時間51分11秒611、ハミルトンとメルセデスの最短記録である。