17年前は父親が当事者だった。輪廻は巡る、フェルスタッペン親子の接触事件【今宮純のF1ブラジルGP分析】
1958年からチーム(コンストラクター)を対象にしたもうひとつの“選手権”が設けられた。メルセデスは54年と55年シーズンを席巻し撤退、もしできていたら文句なしの連覇であった(この悔恨はいまもある)。時を経て2010年から復帰した新生メルセデスは、ランク4位/4位/5位/2位を重ね、14年から50年代を再現する巨人の進撃を開始。
ハイブリッドPU新規定にそなえ、復帰した10年頃から水面下で基礎研究に取り組んでいた。その成果が14年から16勝+16勝+19勝+12勝、そして今年の10勝。2018年シーズンここまで『99戦73勝』の戦績だ。
参考として挙げると、70年代前後(17シーズン)に155勝をおさめたフォード・コスワースDFVエンジン・シリーズの、ほぼ半数に匹敵する。まさに現代史F1最強パワーユニットを目撃中だ。
レース展開に戻ると、フェルスタッペン事件後の44周目にリーダーとなったハミルトンに、終盤“オーバーヒート症状”が深刻化。タイヤ・マネージメントとこの問題を抱え、パワーユニットのケアを強いられる危機的な状況が20周もあった。
しかしハミルトンは落ち着いていた。ときどきオンエアされるピットとの無線交信では切羽詰まった様子も、焦る心理なども感じとれなかった。五冠王の冷静な対応能力、以前の叫びまくる彼とは全くちがった。
ゴール後にマシンのそばにひざまずいたハミルトン、まるで愛犬ロスコ―を愛撫しているかのように。オーバーなアクションに思えたが最後まで耐えてくれた愛機に、感謝の意を捧げたのか。
タイトルを重ねれば重ねるほど『レース人生』に磨きがかる、そうおっしゃっていたファン・マヌエル・ファンジオさんにメキシコで並んだ。メルセデス大目標のコンストラクターズ5連覇もここで叶えた。いま、我々はハミルトンのピーク・ゾーンを目撃している――。