ホンダF1密着 前半戦総括(1):躍進の原動力となったホンダPUの高い信頼性。開発のカギは横の連携と航空エンジン部門の知見
デビッド・ジョージは、インディカー・プロジェクトで田辺TDと長い間、共にレースしてきた経験があるベテランで、本橋CEもホンダの第3期F1活動時代に田辺TDと二人三脚でレースを戦った経験の持ち主だった。
豊富な経験を持つチーフエンジニアの下、2チーム・4台体制でスタートしたホンダは、2年目のトロロッソだけでなく、今年からパートナーを組んだレッドブルともスムーズに仕事を進め、開幕戦オーストラリアGPからいきなり結果を出した。レッドブル・ホンダはマックス・フェルスタッペンが3位表彰台を獲得。トロロッソ・ホンダは2017年以来のF1復帰戦となったダニール・クビアトが2シーズンぶりのポイント獲得を果たした。
その原動力となったのは、ホンダPUの高い信頼性だった。マクラーレン・ホンダ時代(2015~2017年)の反省を元に、2018年に向けて、ホンダは「これからのF1は、HRD Sakura(栃木県の本田技術研究所)の数百人のメンバーだけでなく、ホンダのすべての研究所から、必要な人材と知見を持ち寄って戦おう」(松本宣之/当時、本田技術研究所社長)という目標が掲げられ、F1のPU開発を行うHRD Sakuraがほかの部署と連携して仕事を開始していた。
そのひとつが埼玉県和光市にある航空エンジン研究開発部門だった。というのも、2017年のホンダはコンプレッサーとタービンのレイアウトを変更し、長くなったシャフトのトラブルに悩まされていたのだが、ジェットエンジンにもターボがあり、シャフト、軸受があり、技術的にF1と非常に近かったからだ。
この航空エンジン研究開発部門の知見の導入により、ホンダのMGU-H(熱エネルギー回生システム)とターボの信頼性は大きく向上。さらに2018年中にそれ以外の信頼性も徐々に改善され、2019年に向けてホンダPUの信頼性はこれまでにないほど向上していた。
それを物語るのはプレシーズンテストでの走行距離だ。レッドブルは8日間のうちピエール・ガスリーが2日間でクラッシュしたことが大きく影響して3937kmにとどまったが、トロロッソは4420kmもの距離を走破。これはメルセデス、フェラーリ、ルノーのワークスチームに次ぐ4番目に長いマイレージだった。