更新日: 2019.10.02 20:57
【F1ロシアGP無線レビュー】フェラーリ、チームオーダーの“見解”で思わぬ誤算。ベッテルは「完全にスリップから外れていた」と主張

メルセデス:ターゲット+15、デグラデーションが想定していたよりも小さい。
ハミルトン:僕は少しデグを感じているよ?
フェラーリは22周目にルクレールをピットインさせ、ベッテルをアンダーカットさせる準備に出る。ルクレールの左リヤタイヤがタレてきていたのもその理由のひとつだ。
メルセデス:ルクレールがピットインした。落ち着いて行け。我々はスティントを引き延ばす。リヤタイヤが鍵だ。
ハミルトン:あぁ、僕は落ち着いているよ。
23周目には同じタイヤを履くベッテルもリヤタイヤがタレ始めるが、フェラーリはすぐにはピットに呼び入れず26周目にようやく動く。
ベッテル:リヤがタレてきているよ。
フェラーリ:ペースはルクレールと同等だ、38秒8だ。
フェラーリ~ルクレール:プッシュしてくれ、この周でプッシュだ。
フェラーリ自身はアンダーカットさせたことを否定するが、結果的にここで2台の順位が入れ替わり、ルクレールが実質的なトップに立った……かに思われたが、その直後の27周目にベッテル車をトラブルが襲った。ERS(エネルギー回生システム)の不具合で120kW(約160馬力)のディプロイメントが切れてしまったのだ。
ベッテル:ノーK! (MGU-)Kを失った!
フェラーリ:ボックス……ストップしてくれ、今すぐ止めてくれ。
ベッテル:本気で言っているのか?
フェラーリ:止めてくれ。
ベッテル:はぁ……V12エンジンに戻してくれよ!
メルセデスAMGが“セーフティカー待ち”の状態にあることは分かっていたため、当初はピットまで戻ってくるよう指示をしたものの、ERSのトラブルだけに最悪の場合は漏電の可能性も考えられるため、フェラーリはドライバーの安全を考慮してすぐにマシンを止めるよう指示を出した。
ベッテルは比較的スペースが広く、マシンを排除するためのウォールの切れ目も近いターン15のランオフエリアにマシンを止めたものの、バーチャルセーフティカー(VSC)が導入されて各車はスロー走行となる。この間にメルセデスAMG勢はピットに飛び込み、ハミルトンはルクレールの前でコースに復帰し首位を奪い取った。
フェラーリとしては、自ら招いたVSCでリードを失ってしまったことになる。元々メルセデスAMGが採ろうとしていた第1スティント引き延ばしによるオーバーカットやレース終盤のソフトタイヤによる猛攻がどういう結果になったかは分からないが、それを待つまでもなく勝敗がついてしまった。
その後、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)のマシンにトラブルが発生しウォールにクラッシュ、VSCからセーフティカーが導入された。フェラーリはソフトタイヤのメルセデスAMG勢に対してミディアムタイヤでは勝負にならないと判断し、セーフティカー先導中にルクレールをもう一度ピットインさせてソフトタイヤを履かせ、バルテリ・ボッタス(メルセデス)の後ろ3番手から挽回を目指すことになった。ルクレールにとってセーフティカー導入はある意味で幸運だった。
最高速は速いフェラーリだが、レースペースの中で純粋なペースではメルセデスAMGを凌駕するほどの速さはない。それでもルクレールはボッタスに猛攻を仕掛け、プレッシャーを掛け続ける。