更新日: 2019.10.29 16:16
予選の黄旗無視で流れ変わったフェルスタッペンと“引く勇気”のハミルトン【今宮純のF1メキシコGP分析】
暫定PPタイムだった1分14秒910をさらに1分14秒758に縮め彼はアタックを成功させた。このセクター3タイム19秒441を19秒440まで1000分の1秒短縮、つまり全く黄旗振動の警告を従わなかったことになる。現場にあたるミニ・セクター(コース細部化した箇所)では最速通過タイムではなかったが、「黄旗で減速なんかしていない」と本人は公式会見で口にした。
覚えていないのだろうか。昨年ロシアGP予選中にウイリアムズのセルゲイ・シロトキンがストップ、黄旗振動の現場を通過した違反行為に『3グリッド降格』を科されている。あのときはPP争いではなかったが、この日レッドブル・ホンダは素晴らしく速く、この前の1分14秒758でPPはもう決定的であった。
複雑で細かなF1規定の違反ではなく、この競技における憲法の『国際スポーツ法典』に定められた基本事項に係る違反は重大案件だ。しかも彼は“再犯”であるが、3グリッド降格で済んだのはスチュワードが判例主義に則ったからなのだろう。

いまさらのことになってしまうがあのアタックを自制していれば(ベッテルのように)、フェルスタッペンはPPスタートから全く違うレースを切り開けた。1コーナーでのコースオフやその後のボッタスとの接触やパンクも“仮想レース”となっていただろう……。
ハミルトンに話しを戻す。フェラーリ勢の圧倒的なセクター1直線の速さにかなわず、予選4番手が自力で得たポジションだった。しかしフェルスタッペン降格により3位グリッドに繰り上がった。少しだけチャンスがふくらんだ。
スタートは悪くなかった。ベッテルと1コーナーまで並走も行き場がなく、芝に出て逃れる。タイトル目前の覇者は絶対に事故に巻き込まれてはならないからだ。ムキになって挑んだらベッテルの思うつぼ、だから身を引いた。