今宮純のF1決勝インプレッション:戴冠したメルセデスの栄光とマクラーレン・ホンダの大敗
ステアリングワークのうまいアロンソが反応できないほど乱れるとは、ペダルワークのうまいジェンソン・バトンがブレーキングで何度もロックアップするとは。結果論ではなく不吉な前兆が忍び寄っていた。
原因をたどればダイナミック・ダウンフォースを欠いていたことに尽きる。鈴鹿に適応するシミュレーションになにか“入力違い”でもあったのだろうか。カーバランスは強アンダーステアではなく、二人とも他に比べて修正操作は少ない。
ただセクター1定点観測中に驚いたのは、S字連続コーナーでアクセル・オフのタイムラグが長いことだ。「踏みたくても踏めない(!)」――二人とも訴えているように感じ取れた。私見だがルノーやザウバーと同じレベルに映り、それを感想として長谷川さんとの雑談で申し上げると「そうですか」と押し黙った。
シャシーだけでパワーユニットだけで、ドライバーだけで戦っているわけではない。なんとか対策し対応するのが総合チーム能力、ミーティングは毎晩長く紛糾した(ようだ)。いまこの危機にやるべきことは全部やる。その一つが土曜フリー走行3回目からパワーユニットを予選モードに近いレベルにする手段、それでもアロンソ11位がやっとだった。これは苦しい……。
レースは結果がすべて、という真理がある。マクラーレン・ホンダ決勝16位と18位、今季ワーストの大敗だ。戦い終えて日が暮れた5時半、ホンダ記者会見場はお通夜みたいな空気に包まれ、その数十人の輪の中に長谷川さんはうなだれていた。自分たち(ホンダ)のサーキットでメルセデスが栄光を極めたのに、恥ずべき結果を負った責任者の無念さがいっそう部屋の空気を重たくした。
この大敗を皆でかみしめマクラーレン・ホンダがあと4戦をどう戦うか、一喜一憂せずに見届けたい――。