更新日: 2020.06.30 12:58
F1 Topic:タイトル獲得を目指すホンダF1、開幕戦投入のパワーユニット“スペック1.1”の命名に驚かされた理由
ただし、2017年と今シーズンでは状況は大きく異なる。それは新型コロナウイルス感染症だ。2017年は自由に開発していたが、今年は新型コロナウイルスの感染爆発がヨーロッパで起きたたため、F1も急きょ夏休みに予定していたファクトリーのシャットダウンを3月下旬から前倒しで開始していた。
しかも今年はチームだけでなく、新型コロナウイルス感染拡大の影響による不平等を是正するため、パワーユニットマニュファクチャラーもシャットダウン行い、イギリス・ミルトンキーンズにあるHRD UKは3月30日から49日間閉鎖していた。
さらにパワーユニットマニュファクチャラーのシャットダウンはヨーロッパ以外にある研究所にも適用され、ホンダはHRD Sakuraも49日間閉鎖しなければならなかった。ただし労働環境を考慮して、ヨーロッパ以外にある研究所は分散することが可能だったため、HRD Sakuraはゴールデンウイーク前後にまず第一弾のシャットダウンを行い、残りの日数は夏休み中に消化することになっている。
もちろん、これはホンダだけに適用されたルールではなく、ヨーロッパに居を構えるほかの3つのパワーユニットマニュファクチャラーも3月下旬から5月中旬までファクトリーをシャットダウンさせていた。つまり、パワーユニットの開発は正味1カ月程度しかなかったこととなる。
現時点でほかのパワーユニットマニュファクチャラーがオーストリアGPに投入するスペックの詳細は明らかになっていないが、今シーズンはオーストリアGPに持ち込んだスペックで1年を戦うことになっているため、信頼性を確実に担保したうえで性能を追求したスペックを持ち込むはずだ。
その点、ホンダの「スペック1.1」は、少し訳が違うようだ。浅木は「本来はスペック1、スペック2、スペック3という3つのエンジンで1年間を戦う計画で、オーストラリアに持って行ったのはスペック1、順調にいっていればオーストリアGPでスペック2を投入する予定だった。ただ、シャットダウンの影響で、スペック2に予定していた開発が間に合わず、スペック1.1で戦うことになった」と明かした。しかし、その性能については「1年で伸びると想定していたパワーの3分の1くらいは向上しているんじゃないか」とも語った。
これが本当であれば、この「スペック1.1」は、限りなく「スペック2」に近い「スペック1.1」とも言える。
6月23日のオンライン会見で、オーストリアGPに投入するパワーユニットのスペックについて尋ねられた浅木が「スペック2」と言っても、だれも驚かなかっただろう。そこを敢えて「スペック1.1」と口にしたのは、なぜか。