【中野信治のF1分析/第9戦】フェルスタッペンの丁寧さと、予選で垣間見えた超一流と一流ドライバーの違い
さて、今季もすでに8戦を終えました。今年も能力の高いドライバーが揃っていると感じますが、今後を期待させる私が思う次世代若手注目ドライバーという意味では、当然(角田)裕毅のF1参戦3年目を迎えた今年の仕事の進め方、走りを見るに、将来さらに活躍できるチャンスは来ると思います。
F1参戦1年目のドライバーに絞ると、今回のカナダGP決勝でチームメイトのランド・ノリス(マクラーレン)と同等の走りを見せていたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)というドライバーは、かなり面白いものを持っているなと感じました。私はスピードに関してノリスはフェルスタッペンやルクレールと変わらない、高いポテンシャルを持ったドライバーだと考えています。そのノリスに対して、新人チームメイトのピアストリのデータも見ていくと、実はノリスと近いスピード感覚で走ることができていました。
F1は最低3年は参戦していないと、本当の意味でドライバーが秘める最大限のパフォーマンスを発揮できない世界だと思っています。ピアストリが今年の残るレースでパフォーマンスを上げ、2024年、2025年とF1という大舞台に残ることができれば、ピアストリというドライバーは大きく化けると私は思っています。
![2023年F1第9戦カナダGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)](https://cdn-image.as-web.jp/2023/06/23163340/asimg_XPB_1215201_HiRes_5364954ad42d8a6-660x440.jpg)
そして、4年目を迎えてもう新人ではないのですが、今回のカナダGPで予選Q2トップ、決勝も7位に入ったアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、大変メンタルが強いドライバーです。アルボンの心の強さが、タイヤのマネジメントも含めたトータルのマネジメント能力の高さに繋がっていると思います。また、コントロールが非常に上手い。それでいてアクションの大きなドライビングができるドライバーですから、チーム側の目線に立つと『何があってもなんとかしてくれる』と安心感を抱かせるドライバーですね。
タイヤも持たせることができ、フェルスタッペンまでとはいかないものの繊細なドライビングもできる。そして、ときに暴れるクルマを抑えて走ることもできる。オールマイティに高い次元で走れるドライバーです。もともとアルボンはそういうドライバーだったと思いますが、F1に居続けることで、F1でいかに戦うか、いかに自分のパフォーマンスを100%引き出すかというところを掴みつつある。そういうというところでは強いドライバーです。
![2023年F1第9戦カナダGP アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)](https://cdn-image.as-web.jp/2023/06/23163338/asimg_XPB_1214215_HiRes_3464954ad23e560-660x440.jpg)
それだけに、ふたたびレッドブルのマシンをドライブするとどうなるのかは気になりますね。以前在籍した際(2019年途中から2020年)よりも今の方がぜんぜん戦えると思います。それに、当時のマシンRB15やRB16はフェルスタッペンにしかドライビングできないというほど、フェルスタッペン向きのマシンでした。これは先述のとおり、フェルスタッペンが繊細なセンサーを持ち、丁寧なドライビングができるからこそピーキーなクルマでも操れていたわけです。
2019年はアルボンにとってF1初年度。そのシーズン途中のベルギーGPからレッドブルに乗ることになりましたが、あのグランプリは私も現場に見に行っていました。FPからレッドブルの無線も聞いていたのですけど、1年目かつ移籍初戦といえどアルボンは落ち着いており「すごいドライバーが乗ることになった」と感じたことを覚えています。
うまくマシンに自分の走らせ方を合わせることができたら結構面白くなりそうだと思っていましたが、やはり、当時のレッドブルのマシンを操ることは今のマシンより難しかったはずです。今のクルマは当時ほどピーキーではありませんから、もし今のアルボンが今年のレッドブルのマシンに乗ると、ペレスと同等、もしくはそれ以上のパフォーマンスを出すことができるかも、そう考えると少し興味深いですね。
![2020年F1第12戦ポルトガルGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)](https://cdn-image.as-web.jp/2020/10/25115423/asimg_SI202010240184_news_225f94e8deeb0dd-660x440.jpg)