ウェーレインDTMに凱旋、そこには新たなスターの卵が……/ドイツ特派員レポート
各国で各カテゴリーが続々とシーズンイン。今回は、ドイツ在住の池ノ内みどり氏によるDTM開幕戦こぼれ話をお送りします。メルセデス恒例のゲストF1ドライバーとして、今年はDTMが生んだスーパールーキーがホッケンハイムに登場。
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日本のゴールデンウィークと同じ週末は、ドイツでも連休。絶好のお天気に恵まれて家族連れで賑わうDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)開幕戦のため、ホッケンハイムリンクへ向かいました。
毎年、開幕戦とフィナーレにはメルセデスからF1ドライバーのゲストが登場するのですが、今回は昨年DTMチャンピオンを獲得してF1デビューを決めたパスカル・ウェーレインが凱旋しました。
念願のF1ドライバーになり、いきなりルイス・ハミルトンのような派手なギラギラのアクセサリーを身につけてきたらどうしようかと思っていましたが、そのへんにいそうな感じの、ごく普通の姿で、ひと安心。しかし、さすがはルーキーながらトップカテゴリーのドライバーならではの強烈なオーラがあり、顔つきも凛々しく変化したように思いました。
行く先々で多くのファンやテレビの取材に囲まれ、ドイツの入門フォーミュラADACフォーミュラマスターズを経て、ユーロF3へステップアップしたことから見ている身としては、少し遠い所へ行ってしまった感も否めませんが、みんな彼の活躍をうれしく見守っています。
こちらはDTM時代のウェーレイン。ユーロF3参戦後にメルセデス史上最年少DTMドライバーとして2013〜15年の3シーズンに参戦。今年はゲストとして、観客の立場でDTMのピットへ戻ってきたものの、ドライバーとしての血が騒ぐのか「観るだけではつまらない、すぐにでも身支度して自分でドライブしたくて仕方がない!!」と(笑)。今季は大幅にデザインが変わって、さらに格好良くなったメルセデスのDTMマシン、乗りたくなるのもわかります。
「F1はモータースポーツ界の頂点で、ツーリングカーとはカテゴリーもマシンも別物だ」と前置きしつつも、「DTMのドライバーやレースのレベルはとても高く、トップドライバーたちと激しいレースを競った3年間で自分が大きく成長できた」とウェーレインは語っていました。しかし、メルセデスは甘くはありません。ポール・ディ・レスタ(下写真)のようにF1へステップアップしたものの、またDTMへと「送り返された」実績もありますので、ぜひともF1で輝かしく活躍してほしいものです。
古巣HWAチームでは昨年までウェーレインを担当していたエンジニアやメカニックたちと談笑する姿や、ピットでレースを真剣に観戦する様子を見かけました。ウェーレイン一家と家族ぐるみで長年のつきあいがあるカメラマンによると、ウェーレインは税金対策でスイスやモナコに移り住むことなく、まだドイツの実家の近所にそのまま住んでいるようです。まだルーキーなので、税金対策に頭を悩ますほどの収入はないと言われていますが(笑)。
ウェーレインがF1へ昇格したあとにDTMのシートを獲得したのは、ルノーF1リザーブドライバーも兼任するフランス人のエステバン・オコン。現在19歳の彼も、もちろんパスカルの後を追ってF1シートを狙っています。早ければ今季中にF1デビューという噂もあり、おちおちしていられませんね。
7月29日〜31日には、ホッケンハイムへF1ドイツGPがカムバック。サーキット周辺には大きなポスターが貼られています。メディアセンターのお菓子コーナーにも、F1を盛り上げるための(?)ハリボーの特製グミが置かれていましたよ。
オフィシャルの方に聞いたところ、残念ながらチケットの前売り状況は、あまりよくないらしいです……。7月末は夏のバカンスシーズン真っただなか。多くのドイツ人は近隣諸国へ出かけてしまう時期なので厳しい状況かもしれません。せっかく昨年ニュルブルクリンクが休止となってしまったドイツへF1が戻ってくるのですから、大勢の観客で賑わってほしいと切に願うばかりです。
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池ノ内みどり(Midori Ikenouchi)
ドイツ・ミュンヘン在住。ヨーロッパでの生活は現在19年目。ドイツのレーシングチームで研修を受けたあと、ニュルブルクリンク24時間プロジェクトチームのコーディネーターなどを経て、モータースポーツ関連ライターとコーディネート業を行う。