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2016.03.29

超有名&知られざる「二世ドライバー」たちを、まとめて紹介/ドイツ特派員レポート


モタスポブログ | 超有名&知られざる「二世ドライバー」たちを、まとめて紹介/ドイツ特派員レポート

各国の特派員による現地情報も、こちらのブログへお引越し。今回はドイツ在住、ジュニア・カテゴリーの時代から「ジュニア」たちをチェックしてきた、池ノ内みどり氏がレポートします。すでに有名な息子たちのほか、もうひとりのシューマッハーJr.や「ガショーJr.」まで。

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ここ数年、かつてF1で活躍したドライバーの二世たちが、お父さんの背中を追って次々と現れています。運良く全員がF1へステップアップできたとしたら、数年後には二世ドライバーだらけになっているかも……なんて想像するのも楽しいです。

ドイツ特派員レポート
Photo : Midori Ikenouchi

昨年、若干17歳でセンセーショナルなデビューを果たしたマックス・フェルスタッペン。父ヨスは1994年にベネトンからデビュー、2003年にミナルディでキャリアを終えるまでF1ドライバーとして活躍していました。2014年、マックスがヨーロッパF3に参戦していたときは、まだ自動車の運転免許を持っていなかった息子の足となり、レースではスタート直前までグリッドで寄り添い、サポートしていました。ヨス自身も同じファン・アメルスフールト・チームに所属していた先輩でもあります。

ドイツ特派員レポートPhoto : Midori Ikenouchi
現在、誰よりも注目されているのはミハエル・シューマッハーの長男、ミックでしょう。昨年ドイツF4でデビュー。今季はイタリアに拠点を置く名門チーム、プレマ・パワーへと移籍して、引き続きF4で経験を積みます。お父さんが在籍したフェラーリとの関係は深く、昨年末に行われたメルセデス・モータースポーツの祭典『Stars&Cars』にも参加していました。今後ステップアップするとともに、どのF1チーム/メーカーが触手を伸ばしてくるのか、そちらも注目です。

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Photo : LAT

こちらは2015年ドイツF4でミックのチームメイトだった、ハリソン・ニューウェイ。お父さんはドライバーではありませんが、数々のチャンピオンマシンを生み出し、現在はレッドブルのチーフテクニカルオフィサーを務めるF1界の大重鎮。昨年の秋には、なんとエイドリアン・ニューウェイがレッドブルのジュニアチームとしてヨーロッパF3を戦っているファン・アメルスフールト・チームに加入することで騒がれました。F1の仕事をやめるわけではなく、あくまで“副業”というかたちですが、今季は息子ハリソンが同チームに加入。お父さんが息子を直接的にサポートする体制となりそうです。

ただハリソンの成績は昨年ドイツF4で30人中の16位。お世辞にもトップレベルとは言えない戦績だけに、今後が気になるところです。お父さんは「うちの息子は才能がある」とコメントしているのですが、やはり自分の息子には甘いようで。マックスを輩出したファン・アメルスフールトは昨年までのVWからメルセデスへエンジンをスイッチ。本家レッドブルは今季メルセデスのパワーユニットを得ることは、できませんでしたが……。

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Photo : Auto Sport Academy

ベルトラン・ガショーと言えば、「スプレー事件」でミハエル・シューマッハーがF1にデビューするきっかけを作ったことでも知られています。日本のファンには1991年にマツダ787Bを駆りル・マン24時間で優勝したことでも、おなじみ。そのガショーの息子ルイスもドライバーとなり、2015年はフランスF4に参戦していました。結果はシーズンを通して19人中、14位。今季はラルフ・シューマッハーが代表を務めるHTPジュニアチームへ移籍してドイツF4へ挑みます。ちなみに父ベルトランは現在エナジードリンク「HYPE」のオーナーで、ルイスのレーシングスーツにはデカデカとロゴが入っています。

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Photo : KSP / Auto Sport Academy

昨年のフランスF4にはジャン・アレジと後藤久美子さんの長男、ジュリアーノも参戦。アレジのステージパパぶりは有名で、メルセデス関係のレースやイベントにもジュリアーノの学校の予定に合わせつつ、連れて回っています。メルセデスからのサポートを望んでいるのは一目瞭然。

実はアレジパパ、昨年の夏にジュリアーノをニュルブルクリンクで行われたフォーミュラ・ルノーのテストに参加させるため、ドイツへ自動車を飛ばしていました。トリア付近の国道で80km/h規制のところを140km/h出していたため、1000ユーロ以上の罰金とドイツ国内では3カ月の免許停止に……。地元の新聞では「1989年〜2001年まで活躍した元F1ドライバー」と報道されていたのですが、すぐにアレジだと判明しました(笑)。

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Photo : ADAC

ミック・シューマッハの従兄弟にあたるダービット、お父さんはミハエルの弟ラルフ・シューマッハーです。昨年ラルフが離婚したので、現在14歳のダービットは母の旧姓ブリンクマンでカートレースに参戦中。そのせいかミックのように騒ぎ立てられることなく、静かな環境でレースに集中できているようです。F4には15歳の誕生日を過ぎてからではないと乗れませんので、フォーミュラへのステップアップは、もう少し辛抱。父ラルフはF4のチーム代表だけではなく、メルセデスと非常に密接な関係にあり、DTMにも参戦するドイツの名門ミュッケ・モータースポーツにも関わっています。F4は父親のチーム、ヨーロッパF3はミュッケという流れで、これからもメルセデスに近いポジションで走れることは間違いないでしょう。

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Photo : F3 Brasil

3度のワールドチャンピオンを獲得したネルソン・ピケの息子ペドロは、今季ヨーロッパへ遠征してF3にチャレンジします。17歳のペドロはブラジルF3で2014年、2015年と連続シリーズチャンピオンを獲得と、期待できそうですね。なお、兄にあたるネルソン・ピケJr.のF1キャリアは残念ながら2年で終わり、現在はフォーミュラEに出場中です。

ドイツ特派員レポートPhoto : ADAC

イレギュラーなパターンでは、世界中のサーキットを設計したヘルマン・ティルケさんの息子も“二世”ドライバーです。お父さんはニュルブルクリンクのノルドシュライフェが大好きで、自らステアリングを握り、ニュルブルクリンク24時間や耐久シリーズに参戦。やはりサーキットを設計するには建築家も自分で走らないと……ということでしょうか。息子のカーステンも大学生のときにレースデビュー。博士論文を執筆しながらドイツGT選手権にアウディR8で参戦していました。

ドイツ特派員レポートPhoto : NASCAR Whelen Euro Series

今季のNASCARユーロシリーズにはジェームス・ハントの息子フレディとニキ・ラウダの息子マティアスがタッグを組んで、DF1 Racingから参戦します。ふたりの父親は1970年代のF1では最強のライバル関係。息子たちがチームメイトになるなんて、天国のジェームスも、びっくりしていることでしょう。

お父さんの知名度やバックアップのおかげで、レース活動には有利な点も多い二世ドライバー。ただ、父の存在が偉大であればあるほど、息子たちには大きなプレッシャーがのしかかります。そんな重圧を、はねのける活躍に期待します!

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池ノ内みどり(Midori Ikenouchi)
ドイツ・ミュンヘン在住。ヨーロッパでの生活は現在19年目。ドイツのレーシングチームで研修を受けたあと、ニュルブルクリンク24時間プロジェクトチームのコーディネーターなどを経て、モータースポーツ関連ライターとコーディネート業を行う。


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