仮称HTCRとして導入予定の共通ハイブリッド機構は2024年に延期。規格の“持続可能性”が課題に
ハイブリッドシステム自体は、すでにモータースポーツにとって目新しい技術ではないものの、この決定によりTCRは電動化の分野で遅れを取ることが避けられない情勢となった。
最初のTCR共通ハイブリッド機構のテストは2021年後半に開始されていたものの、同年にはWTCRの電動姉妹シリーズであるピュアETCRが誕生し、翌年には FIAステータスが付与され、新たにFIA ETCRことeツーリングカー・ワールドカップと改名され、クプラ、ヒョンデ、アルファロメオが参戦した。
純粋な内燃機関を搭載するTCR規定車両で争われたWTCRでは、マニュファクチャラーが直接的なワークス体制参加することを許可されていなかったが、参戦チームの予算の多くは各ブランドのカスタマーレーシング部門、つまりマニュファクチャラー本体の意向を汲んだ活動が実態となっていた。
電気自動車やハイブリッドに限らず、水素など代替燃料の技術開発に莫大な資金を投資することが至上命題となっている現在の自動車市場において、持続可能性こそがモータースポーツの資金源を握るメーカーにとって重要な部分を占めている。
WTCRのプロモーターだったディスカバリー・スポーツ・イベントで責任者を務めるフランソワ・リベイロは、シリーズの発展的終了をアナウンスした際にも、いわゆるカーボンニュートラル・フューエル(CNF)の導入を示唆するコメントを残しているが、技術的には「TCRカテゴリーで使用される量産エンジンとは、まだ互換性がなく機械部品に対する要求が高すぎる」との見解も示していた。
イギリスでは、従来よりB10燃料を採用するBTCCイギリス・ツーリングカー選手権が2022年から共通ハイブリッド機構を搭載するなど、独自の“サステナビリティ”構想で生き残りへ本腰を入れ、北米や日本でもハイブリッド機構やCNF燃料の本格採用に動き出しているなか、世界的に展開されるTCR規定ツーリングカーも、持続可能性の一刻も早い対策に向け「待ったなし」の状況となっている。