更新日: 2018.02.16 00:26
ポルシェ、ハイブリッド採用の「918 RSR」を初公開
さらに高パフォーマンスを発揮するためのハイブリッドシステムを採用
スタディモデル、ポルシェ918 RSRをデトロイトモーターショーにてワールドプレミア
ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:マティアス・ミューラー)は昨日、デトロイトモーターショーのプレスデイにて、スタディモデル「918 RSR」のワールドプレミアを行いました。
ハイブリッドテクノロジーの分野で集中的な開発作業を行うことで、パフォーマンスと効率を向上させ続けているプレミアム スポーツカーメーカー、ポルシェが今回披露した918 RSRは、2010年に成功を収めたポルシェのハイブリッドコンセプトの頂点を飾るモデルです。918 RSRはミッドシップ2シータークーペで、911 GT3 Rハイブリッドに採用されたテクノロジーと、918スパイダーのデザインとを融合させた、現代的で革新的なスーパースポーツカーです。
911 GT3 R ハイブリッドは、効率に優れたフライホイールジェネレーターを備えたレーシングマシンとして、ニュルブルクリンク24時間耐久レースのほか、アメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)が行われた米国ロードアトランタ、およびILMCが行われた中国珠海では、実際のレース環境において強力なライバルを相手に圧倒的なパフォーマンスを秘めていることを証明して大きな注目を集めました。関係者の間で「レースラボ」(レースの実験室)と呼ばれた911 GT3 Rハイブリッドは、ポルシェ モータースポーツ部門が寄せた大きな期待を上回る結果を出しました。競争力、高い信頼性、そして優れたパフォーマンスと組み合わさった理想的な燃費効率は、インテリジェントな方法でさらなるパワーを生み出すというポルシェの本来的なフィロソフィーを際立たせるものとなりました。911 GT3 Rハイブリッドは、ブレーキング時に生まれるエネルギーを、さらなるパワーへ変換します。ポルシェは今回、コンセプトカー918スパイダーのモータースポーツバージョンであるミッドシップクーペの918 RSRに、このテクノロジーを盛り込んだのです。
908ロングテールクーペ(1969)や917ショートテールクーペ(1971)などのクラシックなポルシェの長距離レーシングマシンが樹立した伝統を踏まえながら、ポルシェのデザイナーは「形態は機能に従う」というポストモダニズムの理念を具現化しました。918 RSRにおいては、力強いホイールアーチ、ダイナミックなエアインテーク、ポディウムのようなコックピットが、エレガントなラインを生み出しています。ラムエアインテークチューブとRSスパイダー並みの大きなリアスポイラーの間に見えるファンも、「レースラボ」としての役割を強調しています。918 RSR専用のボディーカラーである「リキッドメタルクロームブルー」が、その彫りの深い曲線を用いたフォルムをさらに際立たせており、ポルシェのハイブリッドモデルを象徴するオレンジのブレーキキャリパーやボディに走るストライプが大きな注目要素となっています。
ねじれ剛性に優れた、特に軽量なカーボンファイバー強化型プラスチック(CFRP)製モノコックボディの内部にも、ポルシェ モータースポーツのテクノロジーが詰め込まれています。V8エンジンは、すでに大きな成功を収めているプロトタイプレーシングマシン、RSスパイダーの直噴エンジンにさらに開発を加えたもので、918 RSRでは563 PS / 10,300 rpmの出力を発生します。また左右フロントホイールに設置されたモーターは、それぞれ75 kW(合わせて150 kW)を発生し、合計767 PSの最高出力に貢献しています。モーターから発生するパワーはブレーキング中に生み出され、最適化されたフライホイールジェネレーターに蓄えられます。
この918 RSRの2個のモーターは、フロントアクスルにおいて可変トルク配分を行うトルク・ベクトリング機能を備えています。このため俊敏性とステアリングレスポンスがさらに向上しています。リアアクスルの前方に配置されたミッドシップエンジンは、同じくRSスパイダーのものをベースとしたレーシングトランスミッションと組み合わされています。さらに開発が加えられたこのコンスタントメッシュの6速トランスミッションは、前後方向に配されたシャフトと直歯平歯車を採用しており、レーシングステアリングホイールの背後の2つのシフトパドルを使って操作します。
機能的な各種装備は、918 RSRの純粋なレーシングマシンとしての性格を強調しています。例えば斜め上方に開く特徴的なウイングドア間のルーフに設けられたエアインテーク、CFRP製リッドのフロントおよびリアフードを素早く操作するためのロック、ピットラジオとテレメトリー用の2本のルーフアンテナ、RSスパイダーに似た小型のサイドのフロントフリック、フロントリップの下のエアスプリッター、センターロックシステム採用の19インチホイールに装着されたスリックタイヤなどに、実験を行うための「レースラボ」としての性格をはっきりと見て取ることができます。
918 RSRのインテリアは、コンセプトカーの918スパイダーとは異なり、簡素なモータースポーツにふさわしい雰囲気が強く感じられます。体にフィットしたバケットシートのブラウンのレザーカバーはジェントルマンドライバーの歴史を連想させ、レーシングステアリングホイールではギアが点滅し、ディスプレイ画面の前のステアリングコラムに設けられた回生ディスプレイがドライバーに情報を与えます。918スパイダーで採用されていたエルゴノミクスの最先端を行くタッチ式ユーザーインターフェース付きの未来的なセンターコンソールの代わりに、918 RSRのコックピットにはロッカースイッチが付いた最小限のコンソールが装備されています。またナビシートの代わりに、コンソールの右側にフライホイールジェネレーターが配置されています。
フライホイールジェネレーターはモーターの一種で、最大で36,000 rpm回転するローターが回生エネルギーを蓄えます。フロントアクスルに組み込まれた2個のモーターは、ブレーキング中には機能を反転させてジェネレーターとして働き、充電を行います。ドライバーはフライホイールジェネレーターに蓄えられたエネルギーをスイッチ操作ひとつで、加速や追い越し時に利用することができます。この場合、フライホイールには電磁的にブレーキがかかり、その運動エネルギーからフロントアクスルの2個のモーターに最大75 kW x 2(合計150 kW)が供給されます。
システムがフル充電されている場合、この追加パワーは約8秒間得られます。成功を収めた911 GT3 Rハイブリッドの場合は、この追加パワーは燃料消費量削減のためにも利用され、レース状況に応じてピットストップを遅らせたり、燃料タンク容量を縮小して車両重量を軽減するために活用されました。
今回、ポルシェはニュー918 RSR「レースラボ」によって、このレーシングハイブリッドコンセプトを実験段階にまで高めています。918 RSRでは、「ポルシェ インテリジェントパフォーマンス」は、ラップタイム、ピットストップ、信頼性などのサーキットの過酷な条件下で持続可能な効率性をさらに高める方法という形で追求されます。これはポルシェが60年以上にわたって多くの耐久レースなどで成功を収めてきた手法にほかなりません。
918 RSRに付くスターティングナンバー22は、記念すべき勝利に捧げるオマージュとなっています。ポルシェ モータースポーツにとってル・マン24時間レースで初の総合優勝を飾った1971年、ヘルムート・マルコ/ジィズ・ヴァン・レネップ組のポルシェ917ショートテールクーペが樹立した総走行距離5335.313 km(平均速度222.304 km/h)という記録は、2010年まで39年間にわたり破られることはありませんでした。当時、マルティニカラーを纏った917も「レースラボ」として時代を大きく先取りしたもので、そのマグネシウム製スペースフレームは軽量構造の分野で新しいスタンダードを打ち立てるものでした。