ル・マン/WECニュース

投稿日: 2012.06.04 00:00
更新日: 2018.02.16 09:26

トヨタTS030、無事ル・マンデビューを果たす


トヨタ・レーシング、無事ル・マンデビューを果たす
2012年6月3日(日)

 トヨタ・レーシングの2台のTS030 HYBRIDは、6月16日と17日の2日間にわたり行われるル・マン24時間レースに備える伝統的なテストデーに参加し、新たなステージを迎えた。

 これまで#7の車両1台のみであらゆるテストをこなしてきたトヨタ・レーシングにとっては、今回が2台の車両を走らせる初めての機会であった。このテストデーに間に合わせるべく、TMG(トヨタ・モータースポーツGmbH)は大変な努力をしたが、直前の1日(金)に#8の簡単なシェイクダウンも実施し、ようやくここに漕ぎ着けた。

 2台のTS030 HYBRIDは、これまでとは一新したトヨタ・ハイブリッド ブルーを身にまとい、走行開始時間の午前9時と同時に、チームの新しい局面となる初の2台体制でのテストデーに臨んだ。
#7は既に確定しているアレックス・ブルツ、ニコラス・ラピエ-ル、中嶋一貴の3人がテストを進める一方で、#8はアンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブエミが担当。2回に分けて行われたセッションのどちらも、最高速度ランキングではトップ2をTS030 HYBRIDが記録する快走を見せた。

セッション1:\t1\t#7 330.1km/h(中嶋一貴:TS030 HYBRID)
2\t#8 328.1km/h(セバスチャン・ブエミTS030 HYBRID)
3\t#3 326.1km/h(ロイック・デュバル:Audi R18 Ultra)
セッション2:\t1\t#7 331.1km/h(ニコラス・ラピエール:TS030 HYBRID)
2\t#8 330.1km/h(セバスチャン・ブエミTS030 HYBRID)
3\t#2 327.1km/h(アラン・マクニッシュ:Audi R18 Ultra)

 また、先日、自転車事故に遭い、擦過傷を負った#8のステファン・サラザンは、回復のためにもう少し時間をかけることとして、今回のテストデーの参加は見送ることが決定された。しかし、ステファン・サラザンはル・マン24時間のレースウイークにはトヨタ・レーシングのドライバーとして参加が予定されている。

 今回のテストデーでチームに課せられた優先事項は、ル・マン24時間レース初参戦となる中嶋一貴、セバスチャン・ブエミの2人には24時間レースへの参戦条件として義務付けられている10周(1周13.650km)をこなすことであったが、午前中には滞りなく達成された。

木下 美明 トヨタ・レーシング チーム代表:
今日は我々にとって重要な節目となった。ル・マン24時間レースのライバル達と共に、TS030 HYBRIDがコースを走るのを見る、初の機会だからだ。ラップタイムで全てを判断するのは難しいが、トップスピードの記録をはじめ、我々の士気を高揚させるものであった。2台の車両に特に大きな問題は無く、ほぼ1日の走行を終えられて、総じて満足のいくものとなった。些細な出来事としてはボディへの小規模なダメージくらいだ。残念ながらステファン・サラザンの自転車事故により、今回は5名のドライバーしか揃わなかったが、ステファン・サラザンは経験豊富なドライバーであり、何も心配していない。彼がレースには完全な状態で戻って来てくれると信じている。

村田久武 トヨタ・レーシング WECプロジェクト・リーダー:
ル・マンのサーキットをTHS-R(トヨタ・ハイブリッドシステム-レーシング)で走るのを、我々は長い間夢見て来た。我々は継続的にシステムを調整・改良しており、日々前進してきたが、今日もまたそれが間違い無かったことが確認出来た。ギアのダウンシフトと減速時の回生の組合せが、実に上手く協調して機能している。まるで緻密なダンスのようだ。これを準備するために懸命に努力してくれたケルンと東富士の仲間全員に感謝をしている。個人的な話になるが、今日、私は、かつてトヨタチームの一員としてここで働いていた時のことを、はっきりと思い出した。我々が2位でフィニッシュした1992年当時、私はTS010のエンジン担当であった。あれから20年が経ち、こうして戻ってきたことが非常に感慨深い。

アレックス・ブルツ(カーナンバー#7):
とても良いテストデーだった。我々が組んだプログラムの詳細を確認できたのは良かったし、期待していたよりも多くの周回も出来た。忘れてならないのは、我々はチームとしては全く新しく、学ぶことが山ほどあるということだ。分析すべき情報はたくさんあるが、それは私の楽しみとするところであり、チームもそうでなければいけない。2012年のル・マン24時間レースのストーリーは始まったばかりだが、今のところ非常に良い感触だ。

ニコラス・ラピエール(カーナンバー#7):
今日はTS030 HYBRIDをル・マンで走らせられ、特にミュルサンヌストレートでハイブリッドシステムを試すことが出来て良かった。特に大きな問題はなく、タイヤ、空力、メカニカルセットアップやハイブリッドシステムに関して、たくさんの異なるセッティングを試すことが出来た。
この走行距離をこなせたことは、我々にとって非常に重要だ。というのも、レースウイーク前にここで走る機会は今日しかないからだ。これまでチームはとても良い仕事をしてくれたし、期待値まで成し遂げられた。
ラップタイムを比較することは難しいが、ほとんど我々が望んだところまでは来ているということが大切だ。今は面白いレースとなることを楽しみにしている。

中嶋一貴(カーナンバー#7):
今日は、ル・マン24時間レースに向けて、満足の行くスタートが切れた。午前中はコースが混んでいたが、これは誰にも共通の問題だ。しかし、最も大事な課題は、この混雑をどうさばくかだ。その点についてはまだまだ勉強中だが、うまく出来たと自分では思っている。新しく舗装されたコースは運転していて楽だし、車速も出るので良かった。ここル・マンは初めてだが、非常に感銘を受けた。私はTMGのシミュレーターでコースレイアウトは既に知っていたが、実際に初めてここを走るのは凄い経験になった。今日は各ドライバーの走行時間はやや限られたが、毎周毎周、とても楽しめた。

アンソニー・デビッドソン(カーナンバー#8):
我々のプログラムはうまく進められ、やりたかったことが遂行出来た。個人的にはまたル・マンに戻って来ることができ、それもこの新しいハイブリッドカーで戻ってこられたことが、とても嬉しい。
TS030 HYBRIDは非常に扱い易く、ラップタイムでは戦いに臨むに十分なスピードを確認できたのもとても心強い。どのチームも、2台が走り続けてル・マンのゴールにたどり着ければ最高であり、注ぎ込んできた努力は全て報われることになる。TS030 HYBRIDは既に大変バランス良く仕上がっており、レースウイークに向けたスタートとしての今日の走行で、さらに戦う自信が持てた。なによりも今日の印象は非常に勇気付けられるものとなった。

セバスチャン・ブエミ(カーナンバー#8):
TMGのシミュレーターで、このコースは何10周と走っていたことが、非常に役立った。ある所はウェット、別の場所はドライ、という条件で簡単ではなかったが、このサーキットでは、特にポルシェコーナーが好みとなった。しかし、混み合ったコースでうまく他車をさばくのは簡単なことではなく、GTクラスとの速度差も非常に大きい。総じて今日はうまく行ったし、午前中に3番手タイムを出すことができて嬉しい。TS030 HYBRIDはとても良いペースで走ることができたと思う。レースウイークへの準備の助けとなるよう、多くの情報を集め、走行距離を重ねることができた。


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